売上減少対策


 先週は、化学製品の卸売業を営む中国人オーナー経営者の経営相談を受けた。

50代のオーナー経営者は、東莞で1社卸売業を立ち上げ、その後順調に支社を東莞市内に立ち上げて行った。準備中の会社を含めて現在8社を経営している。危険物を取り扱うので鎮ごとの許認可が必要であり、分社化して経営している。

全体の売り上げは上がっているのだが、最初に立ち上げた会社の売り上げが、1億元/年から半減してしまった。従業員がさぼらずに仕事をするように、賞罰制度を導入してみたが上手く行かない。どうすれば、従業員がさぼらずに、業績に貢献する様に仕事をしてくれるのか?と言うのが相談内容だ。

彼らのビジネスは、元売りのメーカから製品を仕入れ、エリアごとの代理店に卸売りをする。営業マンは、担当代理店を回り注文を取って来る。注文が目標未達の場合は罰金、超過達成の場合は報奨金が出る。

帯同した人事制度系の中国人コンサルは、人事制度の改善を説明していたが、答えはそこにはない。

このメルマガの読者様は、この悩める中国人経営者にどのようなアドバイスをするだろうか?ちょっと考えてみていただきたい。

(考えました?)

私は、オーナー経営者に簡単な質問をした。
「顧客(製品を使ってくれる人)の要求はどのように把握していますか?」

彼の会社の営業マンは、代理店にルート営業に回っているだけで、誰一人顧客を訪問していない。それは経営者が必要ないと思っているからだ。経営者は私の質問の意味が分からないようで「?」と言う顔をしている。

重ねて質問した。
「では、あなたは、なぜこの商売をしているのですか?」
経営者はますます訳が分からなくなり、鳩が豆鉄砲をくらった様な顔をして「銭儲けのために決まってるじゃないか」と答える。

こういう考えだから、商売がうまく行かない。
顧客の生産を支援するためにその原料・材料を販売している。言ってみれば、顧客の業績向上のために商売をしている。その結果お金をもらうことができ、従業員の生活を守り、地域社会に貢献が出来る。そして自分も潤う。
この様に考えずに、ただ「顧客の銭」にしか焦点を当てていない。如何に相手側の銭を、こちら側により多く持って来るか、と言う視点しかない。

こういう考え方をしていると、顧客の要望は理解出来ない。顧客を取り巻く経営環境の変化も分からない。
従って、以下の様な経営上、最も大切な情報が入って来ない。
・今取り扱っている製品が、今後も売れるのか?
・新しい製品を投入しなくてよいのか?
・顧客セグメントは今のままでよいのか?
・新しいマーケットセグメントを開発しなくてもよいのか?

ここ10年ほどで、広東省の産業は電子産業から自動車産業に大きくシフトしている。こういうことが分からなければ、売り上げを伸ばすことは出来ない。

奨励金目当てに、代理店に無理矢理販売すれば、代理店の資金繰りが難しくなる。倒産しないまでも、営業担当者との信頼関係は悪くなり、長期の取引関係を維持出来なくなる。そうなれば、営業担当者は業績が下がるので、会社を辞めて行く。現場で起こっているこういうことが、この経営者には見えないのだろう。

当然代理店にルートセールスすることが仕事だと理解している営業マンは、代理店に無理矢理にでも買わせる事以外に、営業成績を上げる方法を知らない。

営業マンの仕事は、代理店に買わせる事ではなく、代理店が買ってくれる様にする事だ。つまり代理店のお客様に売りに行かなければならない。代理店の営業に同行し、真の顧客の要望を聞く。

これをやらずに、営業マンの収入を上げる事(会社の業績を上げる事)は出来ないと思うが、いかがだろうか?


このコラムは、2014年6月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第364号に掲載した記事を改題・修正・加筆しました。

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