不況の処方箋・高品質


 北京オリンピックが終わって一気に世の中の景気が冷え込んでしまった.
米国ビッグ3は経営難に陥り,政府の援助を要請している.
日本の自動車業界も押しなべて減産計画を打ち出している.
電子産業界も数千人単位の人員削減を発表した.

右を見ても左を見ても景気の悪い話ばかりである.
しかし景気が悪いと嘆いてはいられない.世界経済はいくら経営努力をしても自分達の力ではどうにも改善はできない.どの会社にも同じ条件だ.自分達でコントロールのできる条件で改善する事が出来れば,一気に競合の中で優位を占める事が出来る.

逆境はチャンスである.

こういう時期に体質改善を図り基礎体力を付けたい.
今までのような低コスト・大量生産から,高品質・高付加価値・高フレキシビリティ生産に切り替える事が重要だと考えている.

高品質:
今までのように不良率の低さを話題にするのではなく,不良がないのが当たり前にする.日本の企業の優れたところは,偏執狂ともいえるほどの不良低減活動を継続することである.
オペレーションリサーチ(OR)の教科書には品質とコストの曲線の最低地点(サドル点)が最適の品質だと書いてある.しかし世の中はそう単純ではない.品質とコストの2軸だけで世の中は説明できない.

顧客の安全・安心を徹底的に極めれば,コストと品質は相互にコンフリクトする要因にはならないはずだ.

以前指導をしていた工場でこんな事があった.
トランスを納入していた工場から,品質要求が厳しすぎるから値上げを認めなければ納入しないと申し入れがあった.トランスに付着している半田ボールの規格が厳しすぎるというのだ.

トランス工場に出かけて見入ると,コイル線をリード端子に半田付けする工程で発生した半田ボールを最終検査工程で拡大鏡を使って除去していた.女工さんを大勢投入しており,確かにコストがかかっている.

この工場には,半田付け工程で半田ボールが発生しないように工夫する事を教えた.
ちょっとした工夫で,半田ボール除去のための工数が大幅に削減できた.
こういう工夫をしなければ,この工場は永遠に顧客のクレームを受け,品質とコストのトレードオフに苦しんでいたはずである.

高品質にすることにより,顧客の信用が得られより良い条件で取引ができるようになる.コストをかけずに高品質にする事が出来た.高品質にすることにより,不良損失コストが抑えられる.

そんな事例があなたの工場にもないだろうか.
まだ成功事例がなくともアイディアを実行に移せば,必ず成果はあるはずだ.


このコラムは、2008年12月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第70号に掲載した記事です。

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