以前のコラムで「支持待ち社員」に対する対処法について検討した。
「指示待ち社員」
今回は「孤高社員」について考えてみたい。
「孤高社員」というのは、自分の得意分野や、自分の仕事だと思っている仕事に対しては、情熱を持って率先して取り組み、力を発揮する社員だ。
こういう社員ならば理想的な社員に見えるが、困った事に興味が無い仕事には取り組まない。他人の仕事には、批判はするが協力はしない。従って組織の中では孤立してしまい「孤高社員」となる。
特に日本企業の様に「和」を重んじ、組織内、組織間の協調で仕事を進める組織には、困った社員となる。
中国人幹部に研修をする機会が多く、たまにこういう人にであう。
講師に向って「こういう研修は自分には不要だ」と平気で言うタイプだ。経営者は当人に不足している技量や、心構えを改善したくて研修に派遣しておられる。「職場に戻って仕事をしていろ」と叱り飛ばす事は出来ない(笑)
こういうタイプの人間は、日本人にもいる。若い頃に同僚にこういうタイプがいた。天才的なアイディアを閃き、仕事もできる。しかし仲間と協調するのは苦手だった。私も彼とは一緒に仕事をしたくないと思っていた。案の定、彼は組織の中で遊離してしまい、重要な仕事は回って来ない。
彼とは別の職場になってしまったが、ある時担当している仕事で行き詰まり、彼ならどんなアイディアを思いつくだろうかと、ふと思ったことがある。出来る事ならば、彼をプロジェクトに参加させたいとさえ思った。
「あいつとは仕事をしたくない」と言うのは私の利己的な感情であり、彼の能力を引き出す事がリーダシップなのだと気が付いた。
上記の孤高中国人社員の日本人上司も、どういう職位を与えたら彼が力を発揮するかと考えておられた。
人にはそれぞれ、ネガティブな側面とポジティブな側面がある。
普通の人はネガティブな側面を押し込み、ポジティブな側面を大きくしようとする。しかしネガティブな側面もポジティブな側面も自分自身であり、ムリにネガティブな側面を押し殺そうとすれば、自己否定に陥りがちだ。そうなれば人のパフォーマンスは十分に発揮されない。
天才肌の人にありがちだが、すごい能力があるのに、コミュニケーションが下手だったり、他人と協調することができなかったり、計画通りに仕事を進める事が苦手だったりすることがある。こういう人の苦手を無理やり克服させると、平凡な人になってしまう。
とんがった社員は、もっと尖らせれば良いのではないかと思っている。苦手な側面は、組織でカバー出来るだろう。
天才的な経営者には、女房役の経営幹部が参謀としてついている事例がよくある。苦手を意識するのではなく、天才性を磨く。そういう「孤高社員」の存在を認めることができる組織が成長することができると考えている。
このコラムは、2015年6月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第426号に掲載した記事に加筆しました。
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