抜き取り検査の限界


 抜き取り検査と言うと、購入部材の受け入れ検査(IQC)工程内検査(IPQC)出荷検査(FQC)を思い浮かべるだろう。一定の比率や、定期間隔でサンプルを抜き取り検査をする方法だ。AQL検査と呼ばれているのが、生産ロットの大きさに従って決められた数量のサンプルを抜き取り検査をする方法だ。IQC、FQCでAQL検査をする事が多い。

このAQLとはAcceptable Quality Levelの略称だ。「許容出来る品質レベル」と言う意味になる。例えばAQL0.1と言えば、0.1%の不良を許容すると言う意味になる。つまり1000個買ったら1個不良でもかまわない、と言う水準で購入部品の判定をしているわけだ。

本当にこの水準で良いのだろうか?
電子部品100個を実装して製品を作る場合を考えてみよう。
一つ一つの部品の不良を0.1%許容する。つまり99.9%良品の部品を100個組み合わせて製品を作る。この場合の製品の良品率は0.999の100乗=0.905となる。製品の良品率は90.5%、不良率は約10%となってしまう。

このレベルで量産は困難だろう。

20年ほど前は電子部品の出荷不良が20ppm以下ならば、合格点を貰えた。自動車用部品であれば、出荷不良は0ppmが当たり前だと言われる。

ではAQL0.002とかAQL0で抜き取り検査をすれば良いか?
実は20ppmや0ppmを保証する抜き取り検査は不可能だ。全数検査となる。

従ってIQCやFQCの抜き取り検査は「気休め」レベルでしかない。IQC、FQC抜き取り検査の意義は、誤部品の受け入れ・出荷防止だ。(誤部品の「混入」も抜き取り検査で防ぐのは困難だ)

IPQCでも、抜き取り検査で発見出来るのは「偶然発生する不良」ではない。設定の間違いや、加工中の条件変化によって発生する不良しか発見出来ない。

抜き取り検査の意義は、大量に発生する不良の予防であり、偶然発生する不良の予防には無力だと心得て、他の手段で品質保証をする事を考えるべきだ。


このコラムは、2016年7月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第486号に掲載した記事に加筆しました。

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