続・5Sの力


 先週のコラム「5Sの力」に読者さまからメッセージをいただいた.

※H様からのメッセージ

 5Sは総論賛成、各論反対・消極・煩わしいで、達成は容易でない。だから、5S推進担当者はご推薦の本が求めたい気持ちに、なる。
 拾っても拾ってもまだまだあるゴミ工場、長年慣れ親しんだ汚くても感じない適応能力を持つ従業員の意識改革をトップは費用をかけず、精神力だけで大幅改善できるなら、こんなに良い話はない。まして、給与を1/3にする気のないトップには。
 <気持ちの変革(給与水準との関連:民度の高さ)、知恵の出方、投資金額、>の実例、実績を知りたいところです。

難しいお題をいただいてしまった(笑)私なりに考えた事を,お伝えしたい.

5Sを定着させるには,やはり経営トップの真剣な思いが必要だ.

枚岡合金工具の古芝兄弟もはじめは疑心暗鬼たったそうだ.
本当に整理・整頓・清掃をやっていれば,業績が回復するのか?そんな気持ちで取り組んでいる時は,反対派がどんどん各論反対を言って来る.しかし他に何をすれば良いか分からない.藁にもすがる思いで,反対派を説得した.

まだ使える機械を捨てようとすると,どっと反対意見が上がって来る.説得により,本当は捨てる事がもったいないのではなく,ろくに使わない機械を買ってしまった事がもったいなかったと,理解してもらえる.その結果,本当に必要な設備しか買わなくなり,設備を使い倒す文化が出来上がって来る.

今指導している工場も同様だ.
完成品倉庫にある不動在庫を整理してもらった.捨てるのがもったいない.当然経営者はそう思う.しかし本当にもったいないのは,売れない物を作ってしまった事だ.整理してみれば,完成品倉庫にスペースができる.その結果先入先出が容易にできる様になった.それまでは,先入先出のために完成品をムダに移動させていた.このムダが無くなれば,業績が上がらないはずはない.

中間在庫も減らしてもらっている.
7日分あったのが,3日分となった.中間在庫を減らすために,今まで加工機ごとにまとめ造りをしていたが,加工機のレイアウトを変え,流れ生産にした.今使わない物を作らない.中間在庫を減らすために,モノ造りの方法も改善できた.
これで生産リードタイムと,キャッシュフローが改善できている.

別の工場では,加工ごとに職場を分けて,まとめ造りをしていた.
これを真っすぐに並べてもらった.15日かかっていたリードタイムが,並べただけで1.5日になった.

まとめ造りを止めると,機種変更の段取り替えが多くなり,効率が悪くなるとさんざん抵抗された.しかしまとめ造りを続けていれば,段取り替えを短縮する改善チャンスは無くなる.

段取り替え時間を短縮するために,工具や金型を整頓する.必要な物が10秒以内に手に取れる様にする.これが整頓だ.
ただモノをきれいに並べておく事が整頓ではない.

清掃がしやすい様に,ゴミが散らからない様にする.ゴミが出る所にゴミ箱をおく.ゴミが飛散しない様にカバーを付ける.
清掃は作業そのものが,各自の感性を磨くモノだ.一種の躾けと考えてよい.しかし掃除に時間をかけても,何ら付加価値を生まない.掃除時間が短くなる様に改善する事が,5S活動だ.

これらの改善にコストはかかっていない.
積み上がった完成品を捨てる事により,ムダな資産を処理し節税になる.工具の移動台車などは,自分たちで作る.ゴミが散らからない様に作ったゴミ箱は,廃棄品置き場にあった段ボール箱だ.

枚岡合金の古芝会長は,先週紹介した著書で「ゴミゼロ工場を達成すればツキが回って来る」と言っている.これは単なるツキではない.工場は最高の営業マンだ.6000人も見学者が来て,5Sがしっかりできているのを見れば,当然仕事の話も入ってくるはずだ.

失礼ながら,枚岡合金の従業員が高給取りとは思えない.
給与の額よりは,仕事の達成感,仲間との信頼関係などの方が,士気を高める.そういう企業文化を創るのが5S活動の最終目的だと考えている.

枚岡合金・古芝会長の著書↓
「儲けとツキを呼ぶ『ゴミゼロ化』工場の秘密」


このコラムは、2012年6月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第253号に掲載した記事に加筆、修正しました。

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