列車の制御、新時代へ


 以前メルマガに2007年に発生した「福知山線脱線事故」について書いた。
この事故以来ATS(自動停止システム)の導入が加速した。

5月26日付の朝日新聞に新しい列車制御システム・ATACSの記事が出ていた。
列車の制御、新時代へ 位置情報発信、車間保つ 路線データ搭載、脱線防ぐ

従来のATSは750mの閉塞区間に車両が1編成しか入らないように制御していた。
線路は全てつながっているように見えるが、実際には短い線路が1本ごとに電気的に結ばれている。これを750mを単位として閉塞区間が設けられ、車輪で左右の線路を短絡している区間に列車が存在している、と判断する仕組みとなっている。

この仕組みでも問題はないのだろうが、自動車を改造した工事用車両は左右の車輪間に導通がないので、ATSではどこにいるか見えない。都心の通勤時間帯の過密ダイヤでは750mに1編成では乗客輸送が間に合わない。

新たに導入されるシステムは「無線式列車制御システム」といい、位置情報を列車自らが無線で発信する方式のようだ。

しかし「なんとまぁ時代遅れな」という感想を禁じ得ない(笑)

自動車はGPSを頼りに無軌道で自動運転を模索する時代だ。
軌道上しか走らない鉄道の方が、自動運転に近いはずだ。自動運転となれば、運転手がミスを咎められることを恐れて過速度運転することもないはずだ。
乗用車事故が発生すれば数人から十数人の死傷者が発生する。それに対し列車事故が発生すれば数百人規模の死傷者が出る。慎重にならざるを得ないのは理解できる。

しかし過去の不幸な出来事を克服するのが、進歩だ。
我々の生産現場でも「前例がない」「リスクがある」などの言い訳で新しい事への挑戦を避けていないだろうか?前例がないから、画期的な進歩が得られる。リスクがあるなら、事前にリスクを洗い出し未然防止をする。

「失敗から学ぶ」とは失敗を恐れて身を縮めることではない。


このコラムは、2019年5月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第829号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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