天才選手と指導者


 新聞のスポーツ欄に、マリナーズ・イチロー選手の動向が掲載されていた。
今季からまた選手復帰し、オープン戦に六番レフトで先発。2打席で無安打1四球の成績だったそうだ。

イチロー選手は記者の質問に答え、現在の調整状況をこう語った。
「直球待ちで変化球対応の段階ではなく。変化球待ちで直球対応に入っていく段階だ」

私自身軟式草野球の経験があるが、イチローの言葉の真意は理解できない。

オフが開けてまずは速球(直球)に目と体を慣らしていく。
この段階が完了した上で
「直球待ちで変化球対応」:直球のタイミングで待っている時に来た変化球に手を出せる(最悪ファウル)様にする。
「変化球待ちで直球対応」:変化球のタイミングで待っている時に来た直球をゴロで内安打を打てる(最悪ファウル)様にする。
と続いてゆくのだろうか?

天才の天才たる所以は、言葉を超えたところにあるのだろう。
しかし指導者は、言葉で伝えなければならない。
天才の所作を見て天才が育つわけではないだろう。
天才ホームランバッター・王貞治は監督としても力を発揮したが、天才ホームランバッターは育てていない。

鉄人・衣笠祥雄は新人の頃は外車を乗り回しろくに練習をしなかったという。
恩人のスカウト木庭教に「就職先を探してやろう」と言われ目が醒めたそうだ。もちろんスカウトは、衣笠の素質を見抜いており野球を続けさせるためにそう叱ったのだろう。そして打撃コーチ関根潤三の指導で一流選手となる。いくら体が頑丈でも選手としての能力がなければ、連続出場の記録は達成出来ないはずだ。バッティング能力を鍛えたのは関根コーチだが、その気にさせたのは木庭スカウトの言葉だったはずだ。

ところで、経営者にとって「直球待ちで変化球対応」「変化球待ちで直球対応」とはなんだろうか?
「速球に目と体を慣らす」というのは企業としての基礎体力をつけると解釈できる。

直球=既存顧客、変化球=新規顧客
直球=既存製品、変化球=新規開発製品
直球=既存事業、変化球=新規事業

この様に考えると、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの「花形」「問題児」、「負け犬」、「カネのなる木」に行き着いてしまう。

読者様は、イチローの言葉をどの様に解釈されるだろうか?
天才の言葉を理解できれば、天才の領域に近づけるかもしれない。


このコラムは、2019年3月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第795号に掲載した記事です。

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