本質を見抜く力


元プロ野球監督・野村克也氏の著書「凡人を達人に変える77の心得」からこんな言葉を紹介したい。

「その分野の本質を知らない人間は大成できない」

高校野球で「本格派」と言われた投手が、プロに入って活躍出来ない例がままある。「本格派投手」とは、相手打者が直球に的を絞って狙っている所に直球を投じて打ち取る投手の事だ。いわゆる手も足も出ないと言う力量で、相手をねじ伏せることができるのが「本格派」だ。

高校野球とプロ野球のレベルが違う。高校野球の本格派が、プロで通用するとは限らない。

そこで「投手の本質」に気が付いた者がプロでも大成する。
投手の本質とは、豪速球で相手打者をねじ伏せる事ではない。相手チームからアウトをとる事だ。
つまり相手チームからアウトをとるために、豪速球に磨きをかける事は、投手の仕事を達成する一つの方法に過ぎない。

野球とは9人でやるスポーツであり、投手と打者の対決ではない。
「打たせて取る」事を考えれば、投手にとってコントロールが重要である事が分かるはずだ。この本質に気が付いた者がプロでも通用する力を手に入れることができる。

イチローも大リーグに移籍し、パワーヒッターとしては通用しない事を知るとすぐに内安打を量産する。これはイチローが、「ボールの芯をバットで捉える」と言う打者の本質を既に体得していたから、レベルの違うステージでも活躍出来たと言えるだろう。

私たちも「改善の本質」を見抜かなければならない。
改善は業績の向上のためにやる。これが本質だ。

業績を上げるために、生産効率を上げる。そのために、同じ人数で沢山造れる様にする。
少ない人数で作れる様にする。
どちらの方法をとっても生産効率は上がる。
本質を見抜き、経営環境を理解すれば、どう改善すべきか違うはずだ。

以前にもご紹介したが、完成品倉庫が狭いと言う問題を抱えている工場の本質問題は、出荷量より沢山造ってしまう事だ。ここに焦点を当てない限り、改善は望めない。


このコラムは、2013年8月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第323号に掲載した記事に加筆しました。

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