冷暖自知


 臨済宗の禅僧が書かれた本を読んだ。

「大事なことから忘れなさい」松山大耕著

禅宗の修行は、理論を勉強したり理解しようとするモノではない。作務、座禅などの行動を通して悟りに近づくモノのようだ。曹洞宗では「只管打坐」といい、ただ座禅をしていれば悟りは開けるという。知識を学び記憶し、実践するという教育を受けてきた者にとっては心もとない修行法だ。

「柔らかい」という感覚は、猫の肉球、美少女の髪を触ってみる、人の優しい心に触れてみる、という体験を通して初めて理解出来るモノだ。「冷暖自知」という禅語はそういう真理を伝えている。
手短に言えば風呂の湯加減を見るのに温度計など使わず、手を突っ込んでみよ、ということだ(笑)

書籍はもっと良い例を紹介していた。
剃髪をしているお坊さんには悩みがあるそうだ。剃髪をすると肌が荒れる。冬場は乾燥し尚更肌が荒れるだろう。
そこで肌荒れ防止、保湿効果のあるシャンプーが作れないかと考えた。
その話に石鹸屋の社長が乗ってくれた。なんと社長は自ら剃髪をしてお坊さん専用石鹸の開発に取り組んだそうだ。

顧客の立場に立って製品やサービスを考える時に、頭だけで考えないで自らの頭を使った体験を通して考える。つまり頭を使って「考える」のではなく、頭を使って「感じる」ということだ。


このコラムは、2019年2月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第779号に掲載した記事です。

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