違いを認識する


 先週の「ニュースから」の記事に,中国にお住まいのN様からメッセージをいただいた.

メルマガ171号ニュースから:「北京で18日、大規模反日デモか 公安当局、異例の警戒」

※N様のメッセージ

私も中国に住んでいます。漁船の衝突事件はCCTVの1チャンネルだけの放映で他のチャンネルでは放送されていません。インターネットでは北京、上海、広州の反日デモは香港系及び台湾系の反日活動家の雇われデモ隊と言われています。ただ気になるのは日本政府が中国の間違った圧力に応じることです。法治国家の手本を中国に示してください。現在、私の勤務する会社の従業員も中国政府と同じ事をします。要求が通らないと、直ぐに職場放棄をします。中国の常識は日本や世界の非常識。困ったものです。

18日には大々的にデモが予定されていたようだが,新聞,TVでは全く報道されなかった.マスコミ関係の情報通に聞いてみたところ,この件に関しては報道管制がしかれているようだ.

ここ最近の漁船事故の報道を見ていると,中国政府の路線変更があった様だ.

今回の事件を契機に,日本の外交について考えてみた.

以前日本の政府筋から「相手に問題を突きつけても,どうにもならない問題は,あえて指摘しない」という趣旨の発言があった.記憶が定かではないが,対中国の問題で,麻生首相の発言だったと思う.

こういう外交術は非常に日本的だと感じる.
つまり相手の事情を汲み取って,相手が困るようなことは要求しない,面と向かって指摘することも避ける.これは相手の気持ちを思いやる日本人の美点だと思っている.しかしこれが通用するのは,「均一性」が保証されている日本の社会内だけでの話しだろう.

多様性が前提の国際社会では,このような論理は通用しない.
お互いが違っていることをまず認識しあう必要がある.そう考えると前述の日本人の美点は,国際社会の中では,コミュニケーション上の大いなる欠陥になる恐れがある.

あなたの工場でも,同じような事例はないだろうか.
中国人に言っても理解してもらえないからと,諦めている事はないだろうか.
相手を変えることは,非常に困難だ.しかし自分を変えることは出来る.
日本人と違うのだから理解できない,駄目だ,と考えるのではなく,その違いをまず認めてみてはどうだろうか.「駄目だ」と考えれば,その時点でThe ENDだ.違うという事実を認識した上で,どうするかを考える.

相手が困ることは言わないようにしている日本人に対して,解決不可能な要求をしてくる中国人の認識を理解する.
例えば,受注が減って経営が困難なときに,残業代の目減り分を補償して欲しいという要求が平気で出てくる.日本人にしてみれば,理解しがたい要求だろう.しかし給与アップは,彼らの真の要求ではない.真の要求は,自分や家族が幸せになることだ.真の要求を満たしてやるため,給与アップで応えるのは一つの方法でしかない.
能力を育成し,もっと高い給与を払っても見合うようにしてやる.
もっと高い給与が払える会社に転職させる.
給与アップ以外にも従業員を幸せにしてやる方法はある.

民族性が違うのだから,と諦めればその先はない.
違いを認め,共通点を見出す.その先に解決策があるはずだ.


このコラムは、2010年9月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第172号に掲載した記事です。

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