機械油漏れ


 中国の工場を見て驚く事がたびたびある。プラスチック成型工場で床に油のしみ込んだウェスが敷き詰めてある。聞くと金型の温度コントロールに使っている油が、温調機から漏れているので広がらない様にウェスで防波堤を作ったと言う。
シリコンラバーの成形工場では、おがくずで漏洩油の防波堤が作ってあった。
日系工場でも温調機の下にオイルパンをしいて漏洩油が床に広がるのを防いでいるのを見た事がある。

こういう応急処置をそのまま放置するのは大変危険だ。
油が漏れているのだから、油漏れを止めるのが修理だ。
そして油漏れの原因を突き止め、油漏れの再発を止めて初めて改善と言える。
油が広がるのを防ぐ(ウェスやおがくずを防波堤にする、オイルパンをしく)のは応急処置でしかない。放置すればウェスやおがくずの交換、オイルパンの油を捨てる、等のムダな作業が発生する。

最悪の場合おがくずやウェスに火の粉が入れば工場が火事となる。

そんな事はないだろうと言う油断が、災害を招く事になる。
全く同様の事例もある。
「失敗百選」の著者である中尾教授は、ご自身の研究室でのボヤ事件を書籍の中で紹介されている。上記の事例と全く同様におがくずで漏洩油の堤防を作り、そのおがくずに溶接の火花が入ってぼやが発生。消化器で消し止めた。その後研究室の学生はそのまま帰宅した。しかしおがくずの中でまだ火種が残っていれば、翌日研究室に出勤した時は全て消失と言う事もあり得る。

「失敗百選」中尾政之著

おがくずは、油がなくても爆発する事があり得る。
おがくずが舞っている室内で、静電気放電や、電動機、スイッチから発生する火花により爆発する事がある。「粉塵爆発」だ。
粉塵爆発は2014年7月28日配信のメルマガ第373号でご紹介した。アルミニウム、小麦粉、綿、紙粉でも粉塵爆発は発生する。

5Sの基本は、汚れをきれいにする事ではない。汚れない様にする事だ。


このコラムは、2017年8月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第547号に掲載した記事に加筆しました。

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