「お変わりなく」という挨拶言葉に違和感をいつも感じている.
ただの挨拶なのだから深く考えなくてもと思いつつ,なぜ違和感があるのかを考えてみた.
「お変わりなく」というのは,健康状態,生活状態や商売の状態に変化がないと言う意味と理解してよいだろう.従って文脈から判断すれば,健康な状態や,商売繁盛の状態から変化がないということだ.
しかし変化がないことが良いとは限らない.
例えば,少年に久しぶりに会ったとする.
ここで「お変わりなく」では困ってしまう.成長期である少年が前回会った時と同じでは困る.
病人の見舞いに行って「お変わりなく」と挨拶して帰って来る人もあるまい.
または進歩の激しい業界で変化がないということは,その業界内では相対的に退歩しているということになる.
生産現場では「お変わりなく」は,間違いなくだめだ.
何も変わっていないということは,何も改善していないということだ.
指導をしているお客様で,成果が出る会社は訪問指導に行くたびに現場の様子が変わっている.同じお客様の中でも,成果の出ている職場ほど変化が多い.
材料の置き方,作業台の向き,設備の位置などチョコチョコと変えてみようというリーダがいる職場は,どんどん改善が進む.設備の向きを変更すると,作業性が良くなるとアドバイスしても,設備の移動には業者を呼ばなければならないから○○万元必要です,というリーダがいる職場はなかなか改善が進まない.
出来る方法を考える前に,出来ない理由を考えてしまっている.
もっとも,変化があればすべて良しというわけではない.
お客様に訪問指導に行った時に,人が集まっている一角が新たに出来ている.私の経験では,こういう場合は良い変化ではない.
聞けば不良が流出してしまい,流出防止のためにダブルチェックすることを、お客様に約束してしまったという.
こういう変化はよろしくない.
この場合は,変化をさせる場所が間違っている.不良流出を止めようとするからダブルチェックとなる.不良発生を止めようとすれば,別の場所に変化があるはずだ.
いずれにせよ,どのような変化でもそれは進歩のチャンスだ.
変わりがないことを喜ぶよりは,変わりがあることを喜ぼうではないか.
このコラムは、2011年7月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第214号に掲載した記事に加筆修正しました。
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