以前勤務していた会社の社長が良く「新幹線方式」という言葉を使っていた.
「新幹線方式」というのは過去の方法を捨てて,新しい発想で物事を始めることである.
新幹線は在来線との互換性を捨てて,軌道の幅を広くしている.
昔は車輪と軌道の間に適度なガタがないと列車は脱線すると思われていた.新幹線はこの通説も否定した.新たな発想で高速走行とゆれの少ない乗り心地を実現している.
こういう発想を「新幹線方式」と呼んでいる.
工場の運営も同様に,従来の常識を超えた高みに到達することにより,更に高い生産性・品質・フレキシビリティを確保できる.業界の常識にとらわれていると,業界レベルのそれしか得られないであろう.
例えば電子部品の業界では,出荷不良20ppm以下が要求される.
この電子部品を組み合わせた電子製品の出荷不良を20ppm以下にしたら,顧客の反応はどうなるであろうか.
もちろん100個も200個も電子部品を組み立ててできる電子製品の不良率を電子部品1個のレベルまで下げることはそうは簡単ではない.
一方自動車産業では出荷不良が20ppmなどと言うのはとんでもない,ということになる.常に不良ゼロである事を要求される.
デリバリィーについても同様である.
業界常識のリードタイム,最小発注量というのがあるが,それを越えてデリバリィーができれば,顧客の利便性は高まる.
例えば今まで1週間かかっていた納期を1日に短縮し,必要な数量だけを納入できたら顧客は部品倉庫がなくてもオペレーションできることになる.
このように業界の常識を超えて,異業種をベストプラクティスとして改善することにより同業者の中で圧倒的に強い競争力を得る事が出来るであろう.
そのためには異業種のベストプラクティスを知り,「新幹線方式」で自社を改善することである.
社長は「新幹線方式」をGEのジャック・ウェルチに話をした事がある.この時ジャック・ウェルチはその日の内にFAXでGEグループの全社長にこの話を伝えたそうだ.さすがはベストプラクティスの本家である.
このコラムは、2008年7月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第41号に掲載した記事を修正・加筆しました。
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