CT写真の表裏見誤り、手術で頭に穴 名古屋の市立病院


CT写真の表裏見誤り、手術で頭に穴 名古屋の市立病院

 名古屋市立東部医療センター東市民病院(名古屋市千種区)で昨年10月、患者のコンピューター断層撮影(CT)写真の表裏を見誤って、本来とは反対の左側の頭部に穴を開ける手術をしていたことが18日、病院への取材で分かった。病院は患者に謝罪し、同市千種保健所に届け出た。

 病院の説明によると、患者は80代の男性。慢性硬膜下血腫のため、市内の他病院から紹介されて入院した。側頭部の左右両側に血腫があり、脳神経外科の主治医が緊急で手術が必要と判断。入院翌日に手術をした際、前の病院で撮影したCT写真の表裏を見誤り、右側頭部の血腫を取り除くはずが、左側頭部の骨に直径1センチの穴を開けた。左側の血腫が小さかったために誤りに気付き、すぐに穴を閉じ、右側を手術した。患者に手術による後遺症はないといい、すでに退院した。

 同病院管理部は「あってはならないミスで大変申し訳ない。緊急の場合でも、院内の電子カルテに写真を取り込んだ上で、手術室の全員で確認するなどの再発防止策を徹底した」と話している。

(asahi.comより)

 初歩的な医療ミスだと思う.左右非対称な部位ならば,間違うこともなかろう.脳などは左右対称なので,写真の裏表を間違えれば,このような事故につながる.

紙焼きではなくフィルムなので,裏表どちらからでも見えてしまう.医療関係には詳しくないが,当然間違いがないようにフィルムには裏表が分かるようなマークが入っていると推測する.

このような失敗を「ポカミス」と言う.

電子カルテに取り込んでディスプレイで見れば,CT写真を裏から見てしまうことはないだろう.しかし電子カルテに取り込む時に裏表を間違えてスキャンしてしまえば,同じミスが発生する.

従ってこの再発防止対策は,ミスが発生する場所を他に移しただけと言える.

手術には,執刀助手,麻酔医,看護師など複数のスタッフが参加するはずだ.これらの人達が,CT写真を見ながら,事前ミーティングをしていれば,クロスチェックが働き,この様なミスは発生しないだろう.

私の偏見かもしれないが,医療現場というのは主治医・執刀医の独断が通ってしまう様に思える.
高度な専門家ほどこのような状況に陥り,ごく初歩的なミスを犯してしまう事があるのではないだろうか.

リーダであればこそ,部下のミスを叱る前に,自分もミスを犯す可能性があることを認め,部下の意見に耳を傾ける必要がある.これは自分の権威を落とすことにはならない.意見を述べさせることは,部下育成には必要なことだ.

そのためには日頃から「ホウレンソウ」環境を整えておかねばならない.
部下からの意見が上がって来なくなれば,「裸の王様」と同じだ.
部下が上司の意見に異を唱えない環境では「ホウレンソウ」は育たない.

ホウレン草が「酸性土壌」では育たないのと同様に,
ホウレンソウも「賛成土壌」では育たない.


このコラムは、2011年1月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第189号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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