閾値


 仕事関数という言葉をご存知だろうか?
学生の時,物理学の授業で習ったが,なぜかこの言葉はよく覚えている.

仕事関数というのは,物質表面において,表面から1個の電子を無限遠まで取り出すのに必要な最小エネルギーのことである.

物質にエネルギーを与えても,ある一定のエネルギーを越えないと何も変化がないということだ.熱,光,原子の衝突などのエネルギーが仕事関数を超えると,物質の表面から電子が飛び出してくる.その仕事関数は物質のフェルミ順位に依存している.

物理学の法則というのは,人間や組織,社会にも当てはまるというのが私の持論だ.

部下に対する上司の働きかけは,仕事関数の閾値を越えなければなんら変化は起こらない.上司の働きかけが閾値を越えたとたんに,部下の行動が変わる.そして部下の変化を引き出すためのエネルギーは,部下ごとに違っている.

昨夜,中国江蘇省で工場を経営している友人からメールが久々にあった.

さて、台風9号が真っ直ぐこちらへ向かって来ます。
97年の11号台風以来経験が無いそうです。
月曜日納品の品物は、お客さんへ連絡して今日明日のうちに収めさせて頂くぐらいの先見的な危機意識を持つべき、と朝礼で話しました。

すばらしい訓話だと感心した.
友人は,従業員が気を利かせて率先して仕事をするよう仕向けているが,なかなかうまくゆかないと,時々こぼしている.

しかしこのような訓話の積み重ねが,ある一定の閾値を越えた時に,雪崩のごとく,変化が起こるのではないかと思っている.


このコラムは、2011年8月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第217号に掲載した記事です。

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