【儲かる工場の作り方】第七話「リードタイム短縮」


一気通貫生産
才気より調和

『才气过人』とは秦末期楚の武将項羽のことを指して言う.史記によると項羽は身の丈八尺,重い鼎を楽々持ち上げる.才気がぬきんでていた人物だった.
戦闘では非情な強さを示し,『破釜沈舟』の戦いも有名だ.しかし才気だけでは国は治められない.調和を持って人心をつかめなかった項羽は四面楚歌の元自殺するという最期を遂げている.
国の統治には,人と人,国と人,国と国の調和がなければならない.

工場の調和

工場も同様に,人と人,会社と人,会社と社会の調和の元に経営されなければならないだろう.
その上でQCDのパフォーマンス調和が必要だ.品質(Q)コスト(C)納期(D)を顧客の期待を越えた高いレベルで調和させることが必要だ.
例えば納期,顧客の指定納期どおりに出荷するというのではまだ足りない.業界の常識を超えた生産リードタイムを実現して,フレキシブルな納期対応を顧客に提案する.これが実現できればコスト的に不利な状況でも,競合に勝つことが可能となる.
あるネジメーカは,寿司バーコンセプトを実現させ,ねじ1本から受注生産し即納する体制を構築した.つまり握り寿司のカウンターと同様にお客様が必要なときに,必要なだけ生産して供給することができる.
このネジメーカが生産するのは汎用ネジではない.しかし特殊ネジだから実現可能,汎用ネジでは実現は不可能と考えたら絶対に実現することはできない.考えようによっては,汎用ネジを本当に1本発注する人はいないわけだから,汎用ネジのほうが実現が容易ともいえるだろう.

一気通貫でリードタイム短縮

非常識な生産リードタイムを実現するためには,まずは工程ごとのまとめ生産をやめることだ.部材投入から出荷梱包までの工程を一気通貫で生産する.
一気通貫生産をすることで,工程ごとの滞留がなくなる,工程間での取り置きの無駄がなくなる,問題発生時の後戻りを最小に抑えられる,というメリットがある.
プラスチック部品を生産しているある工場で,工程ごとのまとめ造りをやめて一気通貫生産に切り替えた.切り替えの初日から十数日かかっていたリードタイムが,一日半になった.
一気通貫生産にする.そして問題が発生したらすぐにラインを止める仕組みを作る.
ラインの停止が改善のチャンスになる.まとめ造りをしていたときには気がつかなかった問題点が見えてくる.これを次々に改善してゆくことで非常識なリードタイムを実現できる.

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2009年12月号に寄稿したコラムです.