急速充電器リコール


 行政法人・製品評価技術基盤機構(nite)によると、アンカー・ジャパン社のUSB急速充電器が市場にて電解コンデンサーの液漏れ発煙事故が発生し、対象製品の回収をしている。

メーカのホームページに回収告知が掲載されている。

2019年4月23日より販売を開始したUSB急速充電器「Anker PowerPort Atom PD4」(以下 本製品)につきまして、製造工程において発生した不良品(初期ロット内40個) が正常品と混在した状態で出荷されていたことが判明致しました。
事故等の発生防止を第一に考え、この度、本製品の回収を実施させていただきますのでご案内申し上げます。(以下略)

メーカは事故原因を以下の様に説明している。
2019年6月7日:顧客から電解コンデンサーの液漏れと発煙が生じたと報告。
2019年6月30日:本不具合の原因を特定。回収を決定。

多分海外の生産委託先との間で、原因特定の作業が進められたのだろう。
何人かは本件で生産委託先に出張しただろう。発煙という最もシビアな故障モードであり、3週間は長いと感じるが、全力で調査をしたのだと思う。

原因を以下の様に発表している。
製造時のリフロー(はんだの接合)工程において、通常よりも長い時間加熱された製品が40個発生。当該製品は出荷不可として廃棄処理がなされる予定でしたが、委託先の製造工場の管理体制に不備があり、正常品と混在した状態で出荷がなされました。

「40個だけリフロー炉で長時間加熱された」というところを突き止めるには、生産委託先の報告を聞いているだけでは見つけられないだろう。

リフロー炉の故障でコンベアが止まり、製品PCBがリフロー炉内で停滞。
停電でPCBがリフロー炉内に取り残された。
などの原因により電解コンデンサが過剰に加熱され「半殺し状態」となり出荷後2ヶ月ほどで寿命モードの故障となったのだろう。こういう事実は現場の記録・記憶をたぐらねば出てこない。生産委託先に原因調査を任せてしまえば、見つからない真実だ。責任の所在が自身にあると判明すれば、リコール費用などを請求される。真実は隠される。

リフロー炉でもディップ槽でも同じことは発生する。現場の班長さんレベルで判断し、不良品処理ができる様にしなければならない。

昔会社員だった頃生産委託先工場に出張している折に停電があった。

「現場力」

リコールとは関係ない話だが、現場力を鍛えられるのは現場だと思う。


このコラムは、2019年7月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第853号に掲載した記事です。

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