正しい5Sの推進は,経営課題だ.
5Sは,日本語の整理・整頓・清掃・清潔・躾の五つがローマ字表記すると,Sで始まることに由来している.日本では製造業を中心に,サービス業でも取り組んでいる企業が多い.
中国の工業団地では,工場に5Sの標語を掲示してあるのをしばしば見かける.日系企業ばかりでなく,中華系企業も5Sを取り入れている.
5Sの他に,セーフティ,スピード,スマイル,サービス,サティスファイ(満足),作法,節約,習慣,始末,しっかり,しつこく,などを追加している企業もある.
近所の食堂に,Sが付くスローガンが10個も貼り出してあった.しかしSの数が多い方が良い,というわけではないようだ.この食堂は,今はない.残念ながらつぶれてしまった.Sの数より,経営者のホンキ度が重要だ.
5Sの間違い
あなたは部下に「明日お客様がいらっしゃるから5Sをしっかりするように」と指示していないだろうか?
お客様がいらっしゃるから,油だらけの床をきれいにし,ワックスをかける.工程内にある中間在庫は,倉庫に片付ける.倉庫内にある不動在庫は,外に借りた倉庫に隠しておく.そんなことをしていないだろうか?
5Sはお客様のためにやるものではない.5Sの目的は,品質,コスト,納期,安全.士気,環境を改善し,儲かるようにすることだ.
きちんと整理・整頓されたオフィス,ぴかぴかに清掃した生産現場.大変気持ちが良いが,5Sは見栄えを良くする活動ではない.その活動の一つ一つが,利益につながらなければならない.
5Sは経営判断
あなたは「ウチの連中は5Sを継続できない」と嘆いていないだろうか?
5Sを継続させるのは,部下の仕事ではない.継続のための仕組みと仕掛けを作り,部下に躾をする.これは経営者の仕事だ.
整理・整頓・清掃・清潔をまとめて4S運動ということがある.つまり従業員に職場の整理・整頓・清潔・清掃の重要さを認識させ,これらを徹底させる啓発活動を4S運動という.これにより職場をより快適かつより安全なものにする.従ってこの4S運動は従業員が主体となる活動だ.
5Sを4S運動+躾と理解することに,勘違いの根源があると考えている.5Sにも啓発効果,職場環境維持効果はある.しかしこれが目的ではない.5Sは経営効率を上げ,業績に貢献するための具体的手法である.経営者が自ら判断し,行動をしなければならない活動である.
例えば,整理は,要るモノと要らないモノを区別して,要らないモノを捨てること,と定義されている.完成品倉庫にある,売れるかどうか分からない製品を捨てるのも,たくさん買ってしまった部材の処分も,従業員が出来る仕事ではない.経営トップがすべき経営判断だ.
社長!5Sはあなたの仕事です!
こちらもご参考に。
5S実践研修
本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2011年7月号に寄稿したコラムです.