安全事故対策


 工場の中での優先課題は、次の順位だ。1.安全、2.品質、3.効率。
安全を無視して品質を追求することはあり得ないし、品質を無視して効率を追求することもあり得ない。製造業以外でも同様の優先順位だと思う。

その第一優先の安全だが、企業のみならず社会全体でも安全を保証するための予防保全対策がとられている。

曲がりくねった道で事故が多発する。そのため道幅を広くとり見通しの良い直線道路に改修工事をする。
津波による災害を防ぐために防潮堤を高くする。
健康被害を防ぐために、低タール,低ニコチンタバコを販売する。

この様な様々な安全対策が、実は安全を阻害していると言う主旨の本を読んだ。

「事故がなくならない理由」芳賀繁著

著者の芳賀繁氏は、心理学を専攻された方で、ヒューマンエラー、作業安全等の研究をされている。

芳賀氏によると上記に上げた予防対策は以下のようにリスクを増加させる結果となる。
交通事故防止のために道路を拡幅し直線とすると、見通しがよくなりオーバースピードで走る運転手が増え、却って交通事故が増える。
防潮堤を高くすると、油断が生まれ避難行動が遅れる。これは先の3.11東日本震災時に体験したことだ。
タバコを低タール、低ニコチンタイプに換えると喫煙者は、喫煙本数が増える、より深く吸い込む、などの行動変化が起こり却って健康リスクが増える。

予防対策で、増加した「安全」を心の油断により減少させてしまう。むしろリスクを上昇させてしまうこともありうるという。

安全事故予防対策は無意味、もしくは逆効果であるかというと、そうではない。この書籍の主旨を、大雑把にまとめてしまうと次のようになるだろう。
技術的に安全事故予防措置を取っておくことは必要だ。しかしそれよりも重要なことは、全社員の安全意識の向上だ。特定の危険作業をしている作業員だけではない。経営者、幹部を含めた全社員が、安全意識を高めなければならない。

安全意識が低い状態はなぜ発生するのか、まずここを突き詰めて考える。
安全と危険の間に存在するリスクを知らない。
リスクは知っているが、リスクの危険度を正しく認識していない。
そしてそれらについて、どのように対策をすれば良いか全員で考える。
いわゆるKY(危険予知)活動とかKY訓練を呼ばれる活動だ。
朝礼でこのようなことを皆で議論してみてはいかがだろうか。


このコラムは、2017年3月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第520号に掲載した記事です。

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