キャッシュフロー


 資金繰りに窮している中国企業を、投資会社が資金注入し資本の過半数をとった。投資会社の依頼を受け、この中国企業の指導をしている。

最初の工場診断で、中間在庫が大量にあるのを発見。その量は多すぎて、工場敷地内,作業現場のあちこちに置いてある。そのため物の運搬(ムダな作業)が頻繁に発生しており,正常な生産が出来ていない。
まず正常な生産をするために、前工程への投入を制限する様指導した。

しかし二回目の指導訪問時に、在庫が前回より在庫が増えていた。
経営者(資本の注入を受けた前経営者がまだ経営をしている)には「工場診断の結果は奥さんに伝えたい」と言ってみた。この工場は、既に末期症状なのでご家族に覚悟を決める様話をする、と言う比喩だ(笑)

そして三回目の訪問指導に来ているが、明らかに又前回より在庫が増えている。
経営者に指摘すると、在庫が増えている事は認めるが、ちゃんと消化できる見込みが有る、と主張している。実は前二回には知らなかったが、外部に工場を借りており、そこにとんでもない量の中間在庫を発見した(苦笑)

どうも私の見立てが間違っていたようだ。
彼は末期癌ではなく、慢性自殺だ。私が呼ぶべきは彼の家族ではなく、和尚さんだった(笑)

彼は資金繰りの失敗により、資本注入を受けた事から何も学ばなかった様だ。
手に入れた資金により、倉庫を借り更に在庫を積み上げている。理解に苦しむ。
投資会社は資本金の51%を手中にしているのに、前経営者にそのまま経営を任せているのも謎だ。

この企業は完全受注生産のはずだが、顧客の納期要求に応えるために見込み生産をしている。そのためキャンセルされた製品や、顧客の要求仕様が変わり出荷出来なくなった製品を多く抱え、キャッシュフローが悪化し、受注が有るのに、資金が足りないと言う状況に落ちいている。

根本の原因は、ロットまとめ生産に有ると私は見ている。
まとめ生産のために、受注に対して柔軟な納期対応が出来ない。そのため見込み生産をする。そしてまとめ生産の量が更に増える。と言う負のスパイラルに陥っている。

これを何度も説明しているが、経営者は7月に在庫は一掃出来るの一点張り。
在庫が無くなったら指導に来ると言う事で辞去した。クライアントである投資会社には、傷の浅いうちに資金を引き上げる様進言する事にした。


このコラムは、2016年3月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第469号に掲載した記事に加筆修正しました。

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