長目飛耳


 幕末の教育者・吉田松陰は松下村塾で明治維新の志士、明治政府の政治家を育成している。松田松陰は「飛耳長目」と題したノートをいつも携えていたと言われている。

「飛耳長目」は春秋時代の思想家・管仲の言葉から出ていると知り調べてみた。管仲の言葉を弟子が編纂した「管子」の九守が原点のようだ。

『一曰長目,二曰飛耳,三曰樹明;明知千里之外,隠微之中,曰動姦,姦動則変更矣。』
中国では『長目飛耳』というようだ。

一に長目、二に飛耳、三に明察、千里の外に隠れたるわずかな邪悪を洞察し、動乱を阻止する。という意味になるだろう。

これは治世のみならず、我々製造業に携わる者にとっても示唆のある言葉のように思える。

僅かな変化に目を凝らし、微かな異音に耳を凝らす。そして異常の兆候を知る。
それにより不良の発生を事前に察知し、問題が起きる前に手を打つ。

千里眼の能力がなくても、変化に気付く感性があれば可能だ。

例えば組み立て工程で不良部品を入れる箱に、規格外のネジを見つけた時に作業者が規格外のネジに気がついて除去したと安心してはいけない。すでに組み立て終わった製品に規格外のネジが使用されていないか?と心配する。そしてなぜ規格外のネジが混入していたのか原因を調べる。このような感性が「長目飛耳」だと言えるだろう。


このコラムは、2019年5月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第822号に掲載した記事に加筆しました。

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