中国人経営者の苦悩


 昨年知人の紹介で中国人経営者と知り合った。人事制度をきちんと作りたいという事だったので、人事コンサルの仲間と訪問した。
話を聞いてみると、自分が会社を立ち上げた頃は、自分で営業し業績を上げて来た。数社の会社を買収し、事業が大きくなっているのに、業績のパフォーマンスは下がっている。営業職員達のやる気を上げるために、賞罰制度を導入したいと言う話しだった。
賞罰制度で人のモチベーションを上げられる、と考えている経営者の指導をしたいとは思えない。私には関係ない話しと判断し(笑)仲間の人事コンサルと話をしてもらった。

しかし仲間の人事コンサルも半分匙を投げ始めた(笑)
買収の結果企業規模が3倍になったのに、売り上げは2倍にしかなっていない。これは部下の営業職員がさぼっているからであり、賞罰制度により、彼らのやる気を引き出したいと一点張りだ。
このまま友人にこの経営者を押し付けておくのも何だと思い(笑)どんな営業をしているのか尋ねてみた。

この経営者は洗浄材料を販売している。エンドユーザは工場だが、仲介業者に卸売りをしている形になっている。元売りから仕入れた材料を、小口の容器に移し替え転売するだけだ。揮発性が高い材料であり、消防・安全上地方政府の許認可が必要。これが参入障壁となっている。認可を得ている会社を次々と買収し、地域市場を独占しようと言うのがこの経営者の戦略の様だ。

しかし市場が飽和状態なのに、事業規模を拡大しても業績は上がらない。
エンドユーザの需要動向が変わっていれば、拡大どころか衰退産業なのかもしれない。
この辺の動向を営業職員にどう把握させていますか?と質問しても要領を得た答えが返って来ない。質問を変えて営業職員はエンドユーザの工場をどの位の頻度で訪問していますか?と質問しても、経営者の頭の後ろには「?」マークしか出ていない(笑)彼らにとってのお客様は、仲介業者であり、工場を訪問した事はないそうだ。
これでは、業績が落ちているのかどうか(営業職員がさぼっているのかどうか)判断することができない。市場調査して見なさい、と言って帰って来た。

その後半年余り連絡がなかったが、年が明けてまた連絡が有った。
訪問し、マーケティングの理論を少しだけ教えたあとに、若い頃どういう思いで事業を立ち上げたのか、今後事業をどうしたいと考えているのか、経営者の思いを聞いてみた。

彼は広東省の田舎から東莞に出て来て、同郷の人がやっている仕事についた。
その後、独立し必死に働いて会社を今の規模にしたそうだ。この業界で仕事を始め、独立したのは「儲かる」と思ったからだそうだ。将来の夢も「上場したい」と言う漠然とした希望しかない。

察する所、彼が解決したい課題は、ここまで頑張って事業を大きくして来たがこの後どうしていいか分からない、と言う事の様だ。まずは今の事業の経営目的と経営理念を考えてみてください。と宿題を出しておいたが、全然思い浮かばないそうだ。日曜日に一緒に考えることになった。

そんな訳で、日曜日も仕事となった(苦笑)


このコラムは、2015年第2月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】409号の編集後記に掲載した記事です。

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