南宫适(1)问于孔子曰:“羿(2)善射,奡(3)荡舟(4),俱不得其死然。禹稷(5)躬稼而有天下。” 夫子不答。南宫适出。
子曰:”君子哉!若人。 尚德哉!若人。”《论语》宪问第十四-5
(1)南宫适:南宫适,又の名を南宫子。西周の賢者。孔子七十二賢の一人と言う説もあり。
(2)羿:中国神話に登場する弓の名手
(3)奡:古代の伝説の力持ち。
(4)荡舟:手で船を揺りうごかす。奡の百人力を形容する言葉。
(5)禹稷:禹は夏朝開国の君子。治水により農業の振興を図った。稷は周朝の始祖。穀物の生産を振興した。
素読文:
南宮适、孔子に問いて曰く:“羿は射を善くし、奡は舟を盪かす。倶に其の死の然るを得ず。禹・稷は躬から稼して天下を有つと。”
夫子答えず。南宮适出ず。子曰く:“君子なるかな若き人、徳を尚ぶかな若き人。”
解釈:
南宮适が孔子に問うて曰く:“羿は弓の名手であり、奡は大船をゆり動かすほどの大力だが、いずれも非業の最期をとげました。しかるに、禹と稷とはみずから耕作に従事して、ついに天子の位にのぼりました。これについての先生のご感想を承りたいと存じます”
孔子はは答えなかった。南宮适がその場を去ったのち曰く:“あのような人こそ、まことの君子だ。あのような人こそ、まことに徳を尊ぶ人だ”
孔子は直接本人を褒めず、身辺の弟子に「あいつはすごい」と影で褒めて当人に間接的に伝わることを期待していたのでしょうか。