野鴨


 IBMには創業以来「Think」というスローガンがあるそうだ。人から指示されるのではなく自ら考えて行動せよ、という意味だ。
IBMからPC事業を買い取った聯想(レノボ)の社名は「Think」から来ていると思っていた。調べて見ると、IBMの創業者・トーマス・J・ワトソンはIBMの前身CTRを創業(1914年)以来「Think」をモットーとしていたそうだ。聯想創業時(1984年)に創業者柳伝志がIBM創業者の伝記を読んでいた可能性はある(笑)

IBMには創業以来のモットーがもう一つある。「ジーランドの野鴨」だ。
これは、デンマークの哲学者キュルケゴールが残した逸話である。
毎年やって来る渡り鳥に老人が餌を与えた。何年も継続するうち鴨たちは定住するようになってしまった。野鴨は家鴨(アヒル)のように太り、羽ばたく事もできなくなる。老人の死後、餌を与える者がいなくなり、飼い慣らされた鴨は絶滅してしまう。

野鴨を飼いならしてはいけない、というのが「ジーランドの野鴨」の意味だ。

金平糖のように尖った人が、尖った発想をする。そこから新しい製品や革新が発生する。金平糖の棘がなくなれば、丸い飴玉となる。飴玉同士の摩擦は減る。安定はするが革新は遠くなる。

調和を重視する日本の伝統的組織経営は「野鴨型」ではなく「家鴨型」ではなかろうか。家鴨型組織は改善には向いているが革新には向かない。革新と調和、野鴨と家鴨、それぞれ異なるものを止揚したところに目指すべき組織文化があるのだろうか。


このコラムは、2020年7月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1001号に掲載した記事です。

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