日経新聞の記事で、アストロスケールの岡田光信氏を知った。彼は、地球の周りに周回している宇宙ゴミ(デブリ)を除去する為の衛星を打ち上げようとしている。
日経新聞記事『NASAも注目、「門外漢」が挑む宇宙の大掃除』
用途済みとなった衛星やその破片をデブリと言う。ソフトボール以上の大きさのデブリは2万個強有ると言われている。それらが秒速8kmで地球の周回軌道を飛び回っている。現役の静止衛星に激突すれば、太陽電池パネルを損傷する位の被害は簡単に与えてしまう。誰も言わないが実は深刻な問題なのだ。
デブリを放置すれば、世界の通信インフラは早晩壊滅する。
衛星TVが見れなくなるくらいならば、我慢出来るだろうが、GPSが機能しなくなる、気象衛星が機能しなくなる、など当たり前になっている社会インフラがなくなるのだ。
地球を周回しているデブリの9割は、ロシア、米国、中国の物だそうだ。寿命の来た衛星を放棄するたびにデブリは増える。そして新たに上げた衛星にデブリが激突する確率は指数関数的に増加する。当然米露中の三国が責任を持って宇宙空間の清掃をすべきだ。しかし今の所宇宙空間を清掃する効果的な方法が開発されていない。
この課題を解決する為に、宇宙産業と全く関係がなかった岡田氏が乗り出した。デブリに抱きついて、大気圏に落ち燃え尽きる、と言う無理心中方式でデブリを片付けて行こうと言う作戦だ。デブリに抱きつく子機を衛星に仕込んで、ゴミだらけの宇宙空間に衛星を打ち上げる為に、日本の中小企業の力を結集しようとしている。
一回衛星を打ち上げれば10億円程の費用がかかる。これらの費用を回収して利益を出す収益モデルは新聞記事からは読み取れなかった。この様な事業をボランティアでやる訳には行かない。ゴミ大国米露中からきちんと費用を回収出来るビジネスモデルが構築出来ることを切に願う。
きちんと収益を上げられる様になったら、責任の所在が不明確な破片デブリを回収する為に、折りたたみ式の粘着版を展開し、小型デブリを一網打尽で処理する「デブリホイホイ」の開発もしてもらいたい。
岡田氏のすごい所は、門外漢でありながらその業界の課題を見つけ、その課題を解決する情熱を持っていることだ。
例えば原子力業界の人達は、使用済み核燃料の処理を諦め、未来に先送りしている(まだ注目されていないが、研究が進んでいると、個人的には信じたいが)そういう業界に向って、いきなり使用済み核燃料処理に取り組む様なモノだ。豆腐業界のオカラ処理とは桁違いの難易度だ。
門外漢の岡田氏には技術力は無い。しかし彼の志しに意義を感じる仲間は、手弁当で集まって来るだろう。このブロジェクトが、ビジネス的にも地球環境整備的にも成功することを切に願っている。
このコラムは、2015年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第427号に掲載した記事です。
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