八木澤商店


 TV東京の番組「カンブリア宮殿」で、八木澤商店を知った。陸前高田にある創業100年を越える味噌・醤油を造る老舗だ。東日本大震災で、壊滅的な被害を受けている。

震災時に河野通洋社長(当時は専務)は、従業員と共に裏山の神社に非難した。
目の前に津波の濁流により社屋が流されるのを見ながら、今ある現預金で、従業員に何ヶ月給与を払い続けられるか考えたそうだ。被災時のパニック状態の中で、良く冷静にそこまで考えられたと感心する。非現実的な状況を目の前にしても、心をフロー状態に保つことができたのだろう。

震災後先代から社長を引継ぎ、パートを含む全従業員の雇用を継続すると宣言し、その場で給与を支払っている。工場も商品も皆流されている。売り上げの目処もない。ナミの経営者では出来ない事だ。
そういう志しの高さが有るから、被災を免れた経営者から、当分の生産場所を提供してもらえたのだろう。

番組中で河野社長が語った事を紹介しよう。

  • 強い者が生き残る世の中を作るよりは、皆が安心して暮らせる世の中を作る方がよほど難しい。それをやる人達は「青臭い」と言われ指をさされて笑われるだろう。でもそれが出来るのが日本の中小企業だ。
  • 日本の中小企業は、地域の中で思いの長い持続可能な社会を作り続けて来た。
  • 10年間同じことをやっていたら、皆消えてなくなる。だから皆が集まって学んで、磨き合って、新しい価値を作る。
  • 普通は衣食足りて礼節を知ると言う。震災時には衣食が足りていなくても、日本人は義で活きて行ける。
  • 人のためになんとかするから、自分自身が活きられる。
    人のために役立っていると言う自覚が有るから活きられた。自分が食えなくても、自分の服が無くても、そういう話しが一杯あった。人のために動くから自分が強くなれる。
  • 人を助けようと思った人が亡くなってしまった。
    水門を閉めに行くと言う社員を止められなかった河野社長がそう語ったとき、彼の目に涙があふれているのが、私のかすむ目にも見えた。
  • 震災と言う困難を乗り越えた河野社長の奮闘は、称賛に値する。しかしこの番組の本当の価値はそこではない。同じ様に被災した中小企業同士が、お互いに励まし合い、工夫をして新しい価値を作り出している事に注目したい。

一つ一つの中小企業は、力が無いかもしれない。しかし皆で協力すれば強くなれる。常に心に留めておくべき教訓を得た。


このコラムは、2015年3月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第415号に掲載した記事です。

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