中国人青年経営者


 先週末は、第四回東莞和僑会で中国ローカル企業を訪問した。

訪問した会社は、9年前にプラスチック金型エンジニアの若者が、3人の仲間と一緒に起業した会社だ。たった9年の間に、金型設計・生産からプラスチック成型、光ファイバー、衛星通信機器、超小型プロジェクターの開発にまで手を広げている。更にこの年末には、故郷の四川省に工業団地が完成する。

もっと驚くのは、この創業者は今年まだ32歳だと言うことだ。

3人の創業者は皆エンジニアであり、営業は苦手だと言っていたが、顧客の紹介でどんどん仕事が増えた。また政府の研究機関や、大学との協業で新規分野の製品開発も進めている。

人と人とのつながりで、急激に事業を大きくしてゆくチャイナ・ドリームを目の当たりにした思いだ。

一般的に、中国私営企業のオーナー経営者は、事業は自分に富をもたらす道具、従業員は自分に富をもたらすために働く使用人、と考えている人が多いように思う。

しかし彼は、言葉の端々に「会社は自分個人のものではない」「会社の成長は仲間のおかげ」という。上述の中国的経営者と一線を画す、新世代経営者と言って良いだろう。

彼の人柄により、独立前に働いていた日系企業が独立後も仕事をくれた。創業時から、この会社を育てようとずっと付き合っている日系メーカもある。

彼の成功は、仲間を信じ、仲間と夢を共有することにより実現したものだと思う。
更に彼が、従業員全員に夢を与え、従業員の成長を願えば、全従業員が仲間になる。幹部だけではなく、従業員全員に彼の夢が浸透すれば、彼の会社は志を持った集団になるはずだ。

彼がその境地に至った時、彼の会社は利益を追求する道具ではなく、従業員の夢を実現する道具となるはずだ。
出来ることならば、彼のそばで彼の成長を見届けたいと思っている。


このコラムは、2011年11月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第230号に掲載した記事です。

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