遠藤謙さん さまざまな義足の開発に取り組む


 骨肉腫で足を切断した高校のバスケット部の後輩に、自由に走れる足を取り戻したい――。そんな思いを抱き、慶応大学、大学院と続けてきたヒト型ロボットの研究から、義足の開発に転じた。

 「体に障害がある人はいない。技術に障害があるだけだ」。登山事故で両足を切断したのを機に、義足開発に取り組む米マサチューセッツ工科大教授の言葉に共感して留学。モーターとバネを足首に使うロボット義足に挑戦した。

 慣れない分野の勉強で突発性難聴になったが、病気と闘う後輩のブログを研究室に貼り、自らを奮い立たせた。3年前に帰国、ソニー系の研究所で開発を続ける。実用化にはしばらく時間がかかりそうだが、後輩に試作品を装着してもらいながら改良を重ねる。

 一方で、NGOと途上国向けの安価な義足も手がけ、年内にもインドで生産を始める。留学中に訪れ、「高価な義足を使える人は限られる」と強く思ったからだ。

 昨年5月、競技用義足を開発する会社も立ち上げた。元陸上選手の為末大さんとの出会いがきっかけだ。現在、五輪とパラリンピックの男子100メートル走の世界記録の差は約1秒。「義足の選手が記録を上回れば、障害者ではなくヒーローとして見てもらえるはず」

 障害者と健常者の境目をなくしたい。その思いは、2020年の東京でかなうかもしれない。

(朝日新聞電子版より)

 遠藤謙さん(36)自身は健常者だ。彼の後輩が、病気で脚を失う。後輩のために義足を作る事が、彼の夢となる。人型ロボットの研究から、義足の研究のためにMITに留学する。彼が師事したのは、凍傷で両足を失いながらも自分で研究開発した義足でロッククライミングをしているヒュー・ハー教授だ。
ヒュー・ハー教授は「「身体に障害をもつ人なんていない。テクノロジーに障害があるだけだ」といっている。つまり視力が弱ければ、眼鏡をかける。脚が悪ければ、義足を付けるだけ。不自由無く使える義足の技術がまだ足りていないだけだ、と言う考え方だ。失った脚は、新たな可能性を持った余白だ。その余白を何で埋めるか、と考えれば、健常者と障がい者の境界線は変わってしまうだろう。

彼の夢は、後輩に何不自由無く歩ける義足を作る事だが、そのためにロボット開発を諦めた訳ではない。ロボット技術を活かす事によって、より良い義足を作ることができるはずだ、と言う確信を持って進路を変えただけだ。

そして低開発国の人々に、安い義足を提供したいと事業を興している。
アジアの国々には、紛争時に仕掛けられた地雷が放置されており、今でも多くの人達が脚を失う事故に遭っている。そういう人々を救いたい、と言うのが動機だ。

彼が目指すのは、義足をつくるプロセスの中で派生する技術でより多くの人に役立つもの、より多くの人が楽しめるものを生み出すこだ。そしてそのプロセスそのものが、ワクワクする程楽しいと言っている。
例えば、短距離走用の義足の性能を上げれば健常者より早く走る事が出来るかも知れない。現にパラリンピックの100mの記録は、オリンピックの記録より1秒遅いだけだ。そんなアスリートが活躍出来る義足を作る事そのものが楽しいのだろう。

彼の夢は「利他」だが、他人を応援する事に喜びを見出し、自分の技術や事業を高めようとしている。こういう人はきっと成功するだろう。

彼はTEDにも出ている。(映像は既に削除されたようだ)
お金のある人は、彼に投資るといいだろう。10年後にはきっと大きなリターンがあるはずだ。

高齢者が、上着を羽織る様にひょいとモビルスーツを着て、散歩に出かける。
彼の技術の延長にはこんな光景が見える。
高齢者の医療費を減らしたい政府は、高齢者医療の研究に相当な資金を提供する計画が有る様だ。この分野は「買い」だと思うがいかがだろうか。


このコラムは、2015年2月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第410号に掲載した記事です。

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