現場型研修


 私は自分自身を「現場型コンサル」と定義している。
会議室で経営戦略を考えるのではなく、現場で知恵と汗を絞る。
研修室で知識を教えるのではなく、現場で能力を鍛える。
というのが自分の心情である。

あるお客様で、生産が止まってしまうので、その間に2000人の作業員に研修をしたい。というお話をいただいた事がある。こういう考え方で研修をしても、あまり効果は上がらないと思う。

研修をされるお客様の目的は、受講生の知識アップではなく、能力アップのはずだ。2000人の受講生相手に、大研修室で何かを教えたとしても、明日には半分以上忘れているだろう。この様な形式で研修をして、能力が身に付くと言うことはまずありえない。こういう形式の集合教育では、研修をきっかけとして各自が自分で、能力を鍛え始める様な工夫を盛り込んで置かねばならない。

マナー、ホウレンソウ、5Sなど新人教育は、毎年外部講師に頼んで実施してはいけない。こういう研修をリーダに受講させ、次の年から内部講師が自分達の工夫で教えるようにした方が効果が出るはずだ。

毎年研修の受注が出来れば、私の収入は安定するかもしれないが、お客様にとってハッピーな事ではないだろう。それよりは来年から自分たちで新人教育をするための、システムや教材を一緒に開発してあげたほうが、よほど効果は高くなるはずだ。

研修のリピートオーダをいただくよりは、お客様に満足していただき、新規顧客を紹介していただいた方が嬉しい。

現場型コンサルとして、お客様の工程に入る時も、自分だけで現場改善をしてしまってはだめだ。一緒に改善活動をするメンバーに、改善に対する情熱を持たせ、方法論を教え、改善力を鍛えておかねばならない。これをしておかねば、コンサル契約が切れた後、改善が継続しない。

言ってみれば、お客様に釣った魚を差し上げるのではなく、魚の釣り方を教え、うまく釣れる様になるまで練習してもらう。更に釣りの道具が作れるようになってもらう。というのが「現場型コンサル」の仕事だと思っている。


このコラムは、2011年5月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第206号に掲載したコラムです。

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