中国では、稲盛和夫氏の経営哲学を学ぶ者が多い様だ。書店に行くと、稲盛氏の著書が平積みされている。中国の盛和塾活動も盛んであり、勉強会や、セミナーの案内が良く来る。
去年成都で、稲盛氏をお呼びして大々的な盛和塾塾生の大会があった。
この様子はテレビ東京の「未来世紀ジパング」で紹介されたので、ご存知の方も多かろう。会場に到着した稲盛氏はまるでアイドルスターのようだった(笑)
その番組では、稲盛経営哲学を実践する中国人経営者として、不動産業経営者と深センで美容院経営者の二人が紹介されていた。
以前東莞にある京セラ中国工場に勤める若い中国人から、社内文化につい話を聞いて感服したことがある。
番組で紹介された2人の中国人経営者は直接稲盛氏とつながりがなく、しかも製造業ではない組織で、稲盛経営哲学がどのように企業文化に取り入れられているのかものすごく興味を持った。
そこで番組で紹介された、経営者の名前と深センの美容院の名前を手がかりに、連絡先を突き止め、訪問のアポをいただき先週末に会って来た。
2時間の予定で、社長室に経営幹部二人が同席していただき、色々話を伺った。
時間が足りなくなり、そのまま社長室で昼食をしながら話を聞き、午後はテレビ東京が取材に来たと言う店舗に案内してもらい、現場も拝見した。
美容院と言うと、我々日本人は「髪結い」を想像するが、いわゆるSPAと言うエステサロンの様なモノだ。(SPAもエステも行った事がないので正しいかどうかは分からないが)
彼らのビジネスでもっとも重要な資源は、人でありその能力をどう高めるかが課題と理解している様だ。本社には、研修用の学校も併設してある。その他にも施術能力を高めるための制度を設けている。
その施術の流れも、技術も標準化してあるが、そのレベルをもっと高めたい、と言うのが経営者・経営幹部が考えている課題だ。
製造業は、工程フローや作業手順の標準化や教育訓練方式に関して長い経験と実績を持っている。
しかし私が彼らに伝えたのは、標準化の方法ではなく、如何に標準を越えるかと言う話をした。
標準化の目的は、下側のレベルを合わせる事だ。つまり誰がやっても、最低限のレベルを保証するに過ぎない。
モノ造りの現場に居る作業者であれば、それで問題はない。一人ひとりが作業標準を守れば、QCDを保証出来る様にシステム化する事が可能だ。それにより、顧客満足を達成することができる。
ここで言う顧客満足は、「顧客要求を理解しそれに過不足なく答える」と言う意味だ。しかしサービス業が目指すゴールは「顧客満足」ではない。
サービス業が目指すべきゴールは「顧客感動」だ。
顧客感動によってお客様は「信者」になり儲かるのだ。「儲」の字を良く見ていただければ理解出来るだろう(笑)信者になればリーピート顧客になる。
従って彼らに必要なのは、標準化の上に作るべき「感動共有のしかけ」とでも呼ぶモノだ。つまり最低限のレベルは保証しなければならないが、その上で現場の従業員がお客様に感動を与える事を競い合う様な環境を作る事だ。
サービス業は、人の質が直接サービスの質を決定する。
私自身も製造業の質を上げるためにサービス業の仕組みを勉強した。
特にディズニーランドの手法は、アルバイト職員が90%であり年間離職率が50%に達する条件で素晴らしい業績を上げている。出稼ぎ労働者を採用し工場経営している経営者に大変参考になるはずだ。
「9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方」
そして、稲盛経営哲学を実践しようとしている中国人の若手経営者に製造業のノウハウを伝えることは異業種間の大きな交流の流れになるだろう。
このコラムは、2014年3月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第355号に掲載した記事に加筆しました。
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