個人の使命


 個人の使命の一番深い部分には、「信仰」が有るのではないだろうか。
信仰とは宗教だけではない。日本には、無宗教の人が多い。仏教でも多くの宗派がある。キリスト教など、多くの異なる宗教が混在している。これらの人々が争いごとも無く平和に共存しているのは、宗教だけではなく、道徳とか武士道というものが信仰の対象としてあるからではないかと考えている。

生きてゆく上で、拠り所となるものが信仰だと考えている。

中国で缶ビールを積載したトラックが横転する事故が有った。新聞の記事には、道路に散乱した缶ビールを失敬して飲んでいる男性の写真が掲載されていた。同じような事故が日本で発生した時に、散乱した缶ビールを飲んでしまう人がいるだろうか?

地震で被害を受けた商店から、商品を略奪する群集を海外からの報道で見る。
日本でも同じような略奪が発生することがあるだろうか?

日本人にとって、道徳とか武士道が拠り所となっているので、こういうことは日本では発生しないというというのが私の希望的観測だ。

仕事でも同じだ。
仕事のための拠り所となる使命が明確であれば、どんな仕事でも意義がある。
NASAのオフィスで働く黒人の清掃夫に、あなたの仕事は何ですか?と尋ねたら、「ロケットに人を乗せて、月に送り込むことさ。そのために俺はここで掃除をしている」と答えたそうだ。

レンガを積み上げている作業者に、あなたの仕事は何かと尋ねた時に
「見りゃ分かるだろう。こうしてレンガを運んで積み上げるのが仕事だ」
「レンガを積み上げて、教会を作っている」
「人々の安寧のために、教会を作っている」

と答える3人の作業者がいた時に、誰が一番モチベーションが高いか、一番仕事のパフォーマンスが高いか、明確だろう。

目前の作業ではなく、仕事を見つめる。仕事によって達成される自分の使命、自分の夢を考える。こういうことが考えられる人にとって、あらゆる仕事は苦役ではなく、夢を実現するチャンスだ。

作業を教えるのではなく、仕事を教える。更に使命を持つ、夢を持つことを教えられれば、あなたの従業員のパフォーマンスは上がるはずだ。


このコラムは、2010年7月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第162号に掲載した記事です。

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