順天堂大学付属順天堂医院(東京都文京区)で昨年6月、心不全で入院中の岩手県の女性(74)に点滴されていた強心剤が数十分にわたって中断し、低血圧によるショックを起こして寝たきりになったと、女性の家族らが9日、都内で記者会見して明らかにした。家族らによると、看護師が点滴装置の電源を切ったままにしていたと、病院側から説明されたという。
女性の長女と弁護士によると、女性は手術を受けるために心臓血管外科に入院。強心剤によって血圧が保たれていて、容体が急変したため、点滴装置の電源が切れていることがわかった。強心剤の残量が少なくなり、新しいものを準備中にアラームが鳴るとうるさいので切った、と病院側は話しているという。
長女らは病院側に損害賠償を求めて提訴する方針。長女は会見で「病院は医療ミスを認めて、正式に謝罪してほしい」と語った。
病院側は9日、朝日新聞の取材申し込みに対し、「対応できない」としている。
(朝日新聞電子版より)
点滴中の強心剤の残量が少なくなり、点滴装置の電源を切り新しい強心剤の準備のため席を外した。その後数十分間、強心剤の補給は行われず、家族が容態の急変に気付いている。
「準備中にアラームが鳴るとうるさいので切った」と言う説明が理解出来ない。
この看護士はアラームを切ったのではなく、点滴の機能を止めている。そして数十分間交換には来なかった。
製造業の感覚で言えば、点滴の交換は極力短時間で完了するため工夫をする。
交換用の点滴を取りに行き、数十分経っても戻って来ないなどと言う事はあり得ない。交換用の点滴は「外段取り」で準備してあり、点滴装置の横に置いてある。こうする事で点滴交換時間は1秒以下になるだろう。
医療業界でもこれが常識だと思っていた。
毎日新聞の記事によれば、この患者は集中治療室に入院していた。
「アラームがうるさいので点滴装置をオフにする」
「交換用の点滴薬を探しに行って数十分戻って来ない」
集中治療室勤務の看護士が
なぜ点滴装置の電源をオフにすると言う判断をしたのか?
なぜ交換の事前準備をしなかったのか?
なぜ交換用の点滴薬をすぐに持って来れなかったのか?
こういう事を理解しなければ再発防止は出来ないだろう。
事故から1年経過して、ようやくこの医療事故が明るみに出ている。
これ以上事故の原因に迫る情報が出てくる事は期待出来ないだろう。
工場でも、冷却装置を停止し火災の危険を招く、と言うリスクが考えうる。
操業のオペレータが、誤認識をする、誤判断をする、正しい行動が出来ない、などのリスクを事前に理解し、未然に対策しておく事が必要だろう。
このコラムは、2016年7月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第484号に掲載した記事です。
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