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モノは売らない,コトを売る

 先週土曜日に東莞和僑会を開催した.「ソーシャル型モノ造り」に関して,パネラー,参加者全員でディスカッションした.懇親会でも大いに盛り上がった.

有志で「ソーシャル型モノ造り分科会」も結成した.
これから,メンバーで夢を語り合い,オリジナルブランド商品を開発してゆく.
東大阪の「まいど一号」に倣い,東莞和僑会の「没問題一号」が世に出るのも近い(笑)「没問題一号」は広東語で「モウマンタイヤッホー」と発音する.(モウマンタイヤッホーは,今の所,私の妄想であり,メンバーの承認を得ている訳ではない・笑)

こういう活動で,自分自身の活性化がはかれる,開発エンジニアだった事の熱意を思い出す,などなど副次的な効果もメンバーから出て来た.

既に,自社の通常生産品目以外に何か造ろうと活動された経験のある方もおられた.当然1社でやるより,多くの人とコラボすれば,アイディアがより多く出てくるであろう.

これからが楽しみだ.

タイトルの「モノは売らない.コトを売る」は,参加者がおっしゃった言葉だ.彼は玩具メーカに勤務しておられる.
彼は,玩具と言う「モノ」をお客様に購入していただくのではなく,玩具を媒介として得られる「コト」をお客様に提供するのだと,説明してくれた.つまり,玩具というモノによって発生する,親子の会話だったり,家族の団欒と言うコトを提供するのが仕事だと言う訳だ.

非常に含蓄のある言葉なので,このメルマガ読者様とも共有したい.

例えば,完成品メーカに部品を生産供給しているメーカも,部品と言うモノをお客様に買ってただいている訳ではなく,お客様の生産を支えるサービスをしている訳だ.

今回ご参加いただいた金属加工メーカの方は,一社あたり数千個ある部品を短納期で生産納入する事で競争力を得ている,とおっしゃっていた.これも金属加工部品と言うモノだけを売っているのではなく,お客様の生産を支えるためのサービスを提供している訳だ.お客様には生産計画通りに部品が納入されると言うサービスに価値を感じていただける.

お客様から原稿をいただいて,商品パンフレットや名刺を作っている印刷屋はどうだろうか.名刺,商品パンフを売っていると考えれば,他の印刷屋との差別化は難しい.常にコスト競争のプレッシャーに晒されることになる.名刺や商品パンフの制作から関わることができれば,販売促進のパートナーとなることができる.業者さんからパートナーに昇格すれば,お客様との関係は深まり,リピートオーダーが増えるはずだ.


このコラムは、2013年3月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第300号に掲載した記事です。

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中国的モノ造り現場

 先週のコラムで,中国的モノ造りは図面や作業指示書がなくても製品を造ってしまうという事例をご紹介した.勿論「これはすごい」とポジティブに言っている訳ではない.一つ一つ違うモノが出来てしまう.
そのような製造方法だから,プロジェクタースクリーンの縁取りはフェードアウトしている.

しかしこのくらいの事で驚いていては,まだまだ中国初心者だ(笑)

ある工場の仕入れ先を見に行って驚いたことがある.
工場団地から少し外れた民家の中にその仕入れ先はあった.グラスファイバーの積層をする工場こうば(「こうじょう」というのはおこがましい気がする)だ.

家庭菜園の様な小さな畑の間の坂道を上ってゆくとその工場こうばがある.
工場こうばの中に入って,まず床が水平になっていない事に驚いた.グラスファバー布に樹脂を塗布含侵し積層する作業なので,床が水平になっていなければ,樹脂は片寄りしてしまうはずだ.工場の人間も,仕入れ先の人間も,そんなの問題にはなりませんと言う.

グラスファイバーを積層するための型が乱雑に積み上げられている事など,些細な事に思えてしまう(笑)

表を見ると道を挟んだ向かいの畑の真ん中にも,積層型が見える.そばまで行って見ると,製品が型の中で乾燥中であった.雨が降って来たらどうするの?と質問しても,今雨降ってないでしょ?という顔をしている(笑)

振り返って「こうば」を見ると,外壁にも沢山積層型が立てかけてある.これなどは,もはや雨で濡れる事を前提とした確信犯としか言い様がない.しかもその脇には「鉄くず回収」の看板まである.これはジョークのつもりなのだろうか(笑)

日本にも下請け加工をする零細企業が沢山ある.
商店街の中に「こうば」がある。がらりと引き戸を開けると旋盤が置いてあり,社長一家は二階で寝起きしている.なんて光景はよく見る.しかし,床の水平が出ていない,製品や金型が外に放置されている,などと言う事はあり得ないだろう.


このコラムは、2013年1月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第291号に掲載した記事に加筆しました。

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2018年の抱負

 2018年最初のメールマガジン配信にあたり、今年の抱負について考えてみた。
2018年の折り返し点を迎え振り返ってみたい。

独立して丸12年、今年から13年目となる。改めて自分の使命を整理すると、
What(何を):経営幹部、現場リーダの能力・行動力を
How(どうやって):現場活動の実践により育成・強化することにより
Why(目的):顧客の経営改善に寄与する。

この使命を果たすために製造業の経営環境の変化は
・作れば売れた時代:同一規格大量生産
・売れるものを作る時代:多品種少量生産
・価値を創造する時代:多品種変量生産
・モノ造りからコト造りの時代:製造業から創造業へ

それぞれの時代に要求される能力
・作れば売れた時代:モノマネ・手段の活用・応用
・売れるものを作る時代:商品企画・手段の開発
・価値を創造する時代:商品創造・手段の革新
・モノ造りからコト造りの時代:コト創造・目的の発見創造

それぞれの時代に要求される組織・人財
・作れば売れた時代:命令服従型組織・忍耐力
・売れるものを作る時代:説得納得型組織・問題解決力
・価値を創造する時代:参加型組織・問題発見力
・モノ造りからコト造りの時代:異業種参加型組織・統合力

現在は、売れるものを作る時代から価値を創造する時代になっていると認識している。

そして近いうちにモノの消費からコトの消費の時代がやってくるだろう。
モノ造りからコト造りの時代には、もはや製造業という概念だけでは生き残れないかもしれない。製造業は創造業になると考えている。製造業はモノを造ることにより「体験」というコトを創造する創造業になるだろう。
「創造業」という概念については、今の所具体的なアイディアはない。
例えばバルミューダという家電メーカの寺尾玄社長は「商品そのものではなく、商品を使った時の楽しさを提供する」と言っている。私の考える創造業に一番近いところにいるのがバルミューダだと思う。

以上の経営環境の変化を踏まえ、2018年は中国の工場も「設計の品質保証」を確実にすることがテーマと考えている。


このコラムは、2018年1月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第609号に掲載した記事に加筆しました。

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