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問題解決

 先週のコラムで「物有本末」と言う話をした.

問題解決にも「物有本末」がある.
問題解決の結果,改善効果が発生する,これが「末」だとすれば,「本」は何だろう?

問題発見,解決課題の設定,ここいら辺に「本」がありそうだ.
真の問題を見つける,本質的解決課題を設定する,ここいらで間違いがあると,「末」としての改善効果は期待出来ない.

例えば,ある工程の作業にムダがあることに気が付いた(問題の発見).
作業方法の改善によりサイクルタイムが短く出来そうだ(解決課題の設定).

こう言う形で改善活動を進めると,改善効果は期待出来ない.
問題が真の問題かどうか?解決しなければならない課題は何か?
こう言う考察が抜けている.

本質的課題は,ある工程のサイクルタイム短縮ではなく,全工程の生産性向上のはずだ.従ってある工程のサイクルタイムが,全工程のタクトタイム以下であれば,この問題は真の問題ではない.
従って,この工程のサイクルタイムを短くすることが解決課題ではなく,この工程をなくせないか,と言うのが本質的課題となる.作業自体はなくせなくても,工程はなくすことができるはずだ.

他の例を挙げよう.
顧客に不良品を流出させてしまい,全数再出荷検査をすることにした.
こう言う考え方が「本末」を間違えていると言いたい.

真の問題は,顧客に不良品が流出したことではなく,工程内に不良がある事,その不良が工程内検査で100%捕捉出来ない事だ.
この2点に真の問題があり,ここに解決課題を設定しなければ,不良流出は必ず再現する.工程内で不良が発生し続けていれば,不良流出の可能性は残る.
そして工程内検査で不良捕捉が100%出来ていない,と言う問題にフォーカスしなければ,全数再出荷検査をしても,不良流出の可能性はゼロにはなっていない.

不良流出で,お客様からきつくお叱りをいただく.ここで焦って「全数再検査」などと言う再発防止対策を出してはならない.検査は何も付加価値を生まない.ムダな作業を一生続けなけることになる.

ここで,全体を俯瞰し真の問題は何処にあるのか?本質的解決課題は何か?冷静に考えなければならない.

問題に直面したら,焦って対応を考えるのではなく,一歩引いて高い場所から俯瞰する習慣を持っていただきたい.その際に「物有本末」と呪文を唱えていただいたら良かろう(笑)


このコラムは、2013年6月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第314号に掲載した記事に加筆しました。

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常識?非常識?

 先週は、電子製品の組み立て工場を「無料工場診断」で訪問した。
この工場は、ベルトコンベアに作業員が並んで作業をする従来型の生産方式だ。

組み立てラインで全数検査した製品を、全数出荷検査をしておられた。工程内検査と同じ検査をする検査専用ラインに完成品を再投入し、コンベアに着席した検査員が再検査をする。

私は以前、お客様から「抜き取り出荷検査」を要求され断った事がある。
その時の私の常識は、工程内で100%検査している製品をAQLで抜き取り再検査しても無意味と考えていた。しかしお客様の常識は、AQL抜き取りで出荷検査をする、だった。
例えば、生産ラインの検査プログラムが間違っていたり、検査装置が故障しているなどの問題があれば、抜き取り検査で発見出来る。しかし我々の工程は、そのような潜在問題は考慮済みであり、生産開始時と生産終了時に検査設備の始業点検・終業点検をすることにより、問題回避を計っている。
最終的には「目視検査」を別の検査員が別の場所で実施する事の意義を問われ、その代替を説明出来なかったので、抜き取り出荷検査を引き受けた。実は官能検査の確からしさを追求されると答えに窮するので、議論を終わりにした(笑)

ある通信機器メーカは、全数24時間のエージングテストを要求して来た。
電子回路製品で、まともな部品を使っていればエージングでスクリーニング出来る故障モードはほとんどない。エージングによるスクリーニングが有効なのは「電解コンデンサの極性違い」不良だけだ。1時間以内で発見可能なので、24時間のエージングは無意味だ、と説明した。
しかし24時間稼働の彼らの製品の信頼性を保証する一手段として、24時間のエージングは彼らの常識だった。
この時は、エージングで一定ユニットアワーを無不良でクリアしたら、段階的にエージング時間を削減する、と言うプログラムを提案し、最終的には2時間のエージングで了承いただいた。
ちなみにこの製品は、製産開始後エージング中の不良は1件もないばかりか、顧客工程内不良、市場不良も1件も発生せず、我々の工場は伝説の工場になった(笑)

お客様の常識は自分たちの常識と異なっているのが、当たり前だと考えた方が良い。
しかしお客様の常識に合わせる必要はない。
自分たちが生産している製品に関しては、お客様より知識も経験も深いはずだ。
重要な事は、お客様要求の背後にある真の要求を理解する事だ。

前述の100%出荷検査を要求しているお客様も同じだ。

アパレルなどの業界では、検品会社による100%再検査が常識となっている。しかし本来お客様の要求は100%再検査ではないはずだ。真の要求は100%良品納入だ。
要求の背景には、国内での受け入れ検査コストを押さえたい、受け入れロットアウトによる販売機会ロスのリスクをなくしたい、などがあるだろう。
これらの真の要求を満たすことができれば、100%再検査がマストではない。

工場としては100%良品出荷を保証出来ないのであれば、100%再検査もやむを得ない。しかし唯々諾々と100%再検査を続けるのではなく、100%再検査をしなくてよくなる様に努力するのが本来の姿だろう。


このコラムは、2014年5月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第362号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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