火災」タグアーカイブ

Oリングの劣化

 石油給湯機を使用中に異音がし、確認すると、当該製品から発煙・発火していた。

(NITE事故情報より)

 NITE(製品評価技術基盤機構)の事故情報によると、2008年から12件の同様な事故が発生している。

事故調査によると、灯油を燃焼室に供給制御する電磁弁のゴム製Oリングが、経年変化により劣化し灯油が燃焼室近辺に漏れたことによる引火が原因だ。

ゴムは経年変化により、硬化したりひび割れたりする。そのためOリングとしての機能を果たさなくなる。設計者はゴムが劣化することを知っていたはずだ。
更に真因を探れば、Oリング寿命の見積もりを誤った、または材料不良により設計どおりの寿命がなかった、と言うことだろう。

ゴムの寿命は、添加剤により大きくばらつく。しかも事前に評価確認することが困難だ。原料ゴムをロットごとに、寿命評価をしてから製品組み立てに使用することは可能だが、経済的に困難だろう。

安全性と経済性をトレードオフすることは出来ない。ロットごとに寿命評価をするという対策を取れば、安全性と経済性はトレードオフ関係になる。

Oリングが劣化しても火災にならないフェールセイフ設計が必要だ。
制御電磁弁を燃焼室から離し、灯油が漏れても発火しないようにする。または漏れた灯油は密閉容器に溜まるようにしておき、漏れを検出したら燃焼をシャットダウンするように設計しておけば、事故は発生しないだろう。

製品の安全性だけではない。あなたの工場では設備からの油漏れをきちんと管理できているだろうか?
床に油だまりが出来ている。設備の下にウェスがたくさん突っ込んである。
こんな状況はイエローサインだ。もちろん機械油は、灯油より引火温度が高い。
簡単に火災が発生することはないかもしれない。しかし火災に準じる深刻な不具合が発生する可能性はあるはずだ。


このコラムは、2011年3月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第196号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

粉じん引火か、幹部ら拘束 中国工場爆発、死者69人に

 中国江蘇省昆山市の経済開発区にある「中栄金属製品」の工場で2日朝に起きた爆発による死者は69人にのぼり、約190人が負傷した。工場で、これだけ大規模な惨事が起きることは中国でも珍しく、事態を重くみた習近平(シーチンピン)指導部は陣頭指揮のため、王勇・国務委員を現地に派遣した。

 国営新華社通信などによると、爆発は自動車のホイールの研磨をする作業場で起きた。工場内の粉じんに引火したのが原因とみられる。当局は同社の幹部ら5人の身柄を拘束し、安全管理などに問題がなかったか事情を聴いている。

 爆発があった工場に通じる道路は2日、警察官らが封鎖した。出入りができなくなったものの、多くの人たちが集まっていた。

 隣の工場の男性工員(24)は「大砲のような、ものすごく大きな音がした。働いている工場のガラスが割れた」。近くの工場に勤務する趙東舟さん(28)は、けが人を運ぶなど救援活動に参加。「全身がやけどで真っ黒になった人たちが次々と出てきた。焼けてしまって、服も身につけていなかった」と興奮気味に話した。

 姉が爆発のあった工場で働いているという許雨朋さん(32)はネットで事故を知って駆けつけた。「何が起きたのか、まったくわからない。姉の携帯電話もつながらない。心配でたまらない」と顔をゆがめた。

 ホームページなどによると、同社は1998年に設立された台湾企業。従業員は約450人で、アルミニウムのめっき加工などを手がけている。中国メディアは、同社が米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)に部品を供給していると伝えた。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、同開発区には昨年7月時点で、200社以上の日本企業のほか、約2千社の台湾企業などが入居している。

 日本企業の駐在員らでつくる昆山市日本人同郷会は、日本企業への被害は確認していないという。

(朝日新聞電子版より)

 爆発と言うと、引火性の高い物質が原因と考えがちだが、引火性の無い物質が爆発を起こすことがある。それが「粉塵爆発」だ。

引火性が全くない綿や小麦粉でも爆発は発生する。粉塵爆発の条件は、

  1. 空気中に一定の割合で微粒子粉塵が存在する。
  2. 発火エネルギー
  3. 酸素

この3点が揃うと粉塵爆発を起こす。

アルミニウムは引火性も燃焼性も無い。しかしアルミニウムの微粒子が空気中に一定の割合で存在すると、爆発を起こすことがある。

爆発の引き金となる発火エネルギーは、開閉器や電動機からのスパーク、稼働部分の摩擦熱が原因となる。また静電気放電によるスパークですら原因となる。

小さな発火エネルギーでも、局所的に空気中の浮遊微粒子が加熱され、そのエネルギーが近隣の浮遊微粒子に一気に連鎖し、爆発が起きる。

アルミ粉は、水と激しく反応し水素を放出する。放水消化をすると、二次爆発が発生する可能性もある。作業現場に消化スプリンクラーが設置されていると更に被害を拡大することになる。

綿や小麦粉の粉塵で爆発が起きた事例もある。粉塵が発生する現場は注意が必要だ。

対策は、
清掃、排気により空気中の粉塵を減らす。
粉塵環境の電設設備は、防爆対応品とする。
静電気の発生を抑える。(アイオナイザーはコロナ放電によりイオンを作っているので、逆に発火エネルギーを与えることになるかもしれない)

あなたの工場は大丈夫だろうか?
アルミニウムと言うキーワードではなく、粉塵と言うキーワドに着目すれば、金属加工だけではなく、木工、紙、粉体製品にも、適用範囲が広がる。


このコラムは、2014年8月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第373号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

天かす自然発火

うどん店全焼、天かす自然発火か 消防「保管に注意を

 福岡県嘉麻市のうどん店で7日未明、天かすの自然発火が原因とみられる火災が発生した。熱を持ったままの天かすは1カ所に集めて置いておくと、余熱で燃え出すことがある。消防や警察は、飲食店や家庭で天かすを扱う場合は十分注意するよう呼びかけている。

全文

朝日新聞より

この火災はは、天かすが自然発火した事が原因だ。
こういう記事を読んだ時に、ウチはうどん店ではないからと、安心すべきではない。

天かすが発火したメカニズムを考えると、天かす表面に残留した天ぷら油が酸化→酸化熱が発生→酸化熱がこもり温度上昇→天かすが発火、という事になる。ここでキーワードとなるのは「酸化による発熱」「熱がこもる」だ。これはうどん店でなくとも発生しうるメカニズムだ。

先週ご紹介した「粉塵爆発」は、アルミ材料の研磨工程でアルミの研磨粉が空気と一定の割合で混合され、火種があれば爆発する。
この場合のキーワードは「粉体と空気の混合比」「火種の存在」だ。
つまりアルミ粉がなくとも、木工の削り粉でも粉塵爆発が発生するし、静電気放電も火種になりうる。つまりアルミホイールの工場だけではなく、家具工場でも同様な事故は発生する。

失敗事例から未然防止対策を導くということは、上記の様に失敗の本質(キーワード)を抽出して対策を検討することだ。


このコラムは、2018年3月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第643号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

サムスンの工場で火災、バッテリ発火が原因か

 CNET Newsの報道によると、サムスンのバッテリ生産子会社Samsung SDIの天津市工場でリチウム電池の不良が原因とみられる火災が発生した。

記事全文

(CNET Japanより)

 記事には、バッテリの不良が原因とみられる小規模な火災が発生したとある。複数のバッテリィを含む廃棄品が発火したと地元消防当局の発表を伝えている。

最初のリコールの原因となったのは、電池の設計問題。交換の電池により発生した事故は製造問題。それに対するサムスンの対策は検査の強化。
本件に関して本メールマガジン第513号では、検査の強化(流出対策)では何も解決しない。発火の原因に対する対策が必要だと指摘した。

私の心配は的中してしまったようだ。
検査を強化すれば、付加価値を生まない検査コストが増加する。しかし少なくとも市場への流出は防ぐことができるかもしれない。現に検査で不良品を発見できている。しかし選別廃棄した不良品が発火事故を起こしている。

この記事を深読みをすると、もっと根の深い「闇」が見えて来る。
目視検査で発見できた不良品が、廃棄後に発火するだろうか?充電することにより、エネルギーを供給しなければ発火事故は発生しないはずだ。

なぜこのような事故が発生するのか考えてみた。

  • 目視検査で不良品を見逃し、充電中に発火。
  • 検査工程の設計が悪く、充電したのちにX線検査装置で内部短絡を発見、発熱している不良品を不用意にゴミ箱に廃棄。

これに対しさらに再発防止対策を検討すると

  • 目視検査の二重化
  • 爆発物処理用のゴミ箱を用意

など、ますますおかしな対策を施すことになる。

肝心なことは、発生原因に対する再発防止対策をすることである。
流出防止対策は「念のため」程度に考えた方が良いだろう。


このコラムは、2017年2月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第515号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】