信頼性技術」カテゴリーアーカイブ

リチウム電池の評価

 先週のメルマガでリチウムイオン電池の研究でノーベル賞を受賞された吉野教授の言葉「失敗しないとダメ」をご紹介した。

「失敗しないとダメ」

実は40年近く前にリチウム電池の評価をしたことがある。リチウムイオン電池ではなく、充電ができない一次電池・リチウム電池だ。当時私が所属していた設計チームは新規に開発する電子計装装置のバックアップ電源としてリチウム電池を使うことを検討していた。

当時の電子回路は消費電力が大きく、小さなボタン電池では短時間しかバックアップできない。工場のオートメーションに使う製品なので、長期休暇や保守点検期間などを考えると、最低でも一週間はバップアップする必要がある。

そこでリチウム電池を採用することを設計チームのリーダが検討していた。単三サイズのリチウム電池ならば、バックアップ時間は問題ない。しかしまだリチウム電池は日本での市場実績がない。イスラエルのタディラン社くらいしか扱っていなかった。

重厚長大・信頼性第一主義のプロセスオートメーション業界にはなじまない部品だった。当時20代だった私にリチウム電池を評価をするよう指示された。電池の評価などしたことがなかった。会社の図書室や近隣の公共図書館でリチウム電池に関する論文を探し回るところからスタートした。

いくつも文献を見つけた。その全てが英文で読解に時間を要した(苦笑)
その中に、そのものズバリ、リチウム電池の評価に関する論文を発見。英和辞典片手に読解した。「ショットガンテスト」という項目があった。初めは意味がわからなかったが、評価手順を読んで驚いた。

ショットガンにリチウム電池を装填し、厚さ○インチの樫の板に向かって射つという試験だった。当然電池は壊れてしまうが、試験によって爆発・炎上などの危険な状態にならないことが評価条件だ。

耐衝撃性を勘案するならば、70cm(机からの落下)かせいぜい2m位からの自然落下を考えれば良かろう。爆薬の力で樫の板に打ち付けるという評価が何を想定しているのか理解できなかった。しかしそのくらいの厳しい条件で評価をしなければならない部品だということと理解した。

さすがにショットガンテストは自分ではやらなかった(笑)
評価試験は全項目合格し、私たちの製品に採用することになった。幸いな事に40年近く経った今でも、このリチウム電池に起因する事故は聞いたことがない。

しかしリチウムイオン電池の事故は度々市場を騒がせている。

このメルマガでも幾度となく取り上げた。
リチウムイオン電池の事故

リチウムイオン電池では、「ショットガンテスト」のような気迫の評価は実施されなかったのだろうか。

■□ 閑話休題 □■
上述のリチウム電池評価報告書は発行後、規定に従って回覧ののち戻って来た。表紙に赤ボールペンで「よく書けてる」と開発担当専務のコメントがあった。
当時ものすごく嬉しかったのを今でも鮮明に覚えている。


このコラムは、2019年11月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第901号に掲載した記事に加筆しました。

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続・B737MAX機墜落事故

 ボーイング737max8機の墜落事故に関して、メールマガジンで検討してみた。

WEBサイトengadgetの記事によるとボーイング社はMCAS(失速回避システム)を大幅に変更。変更の検証評価・妥当性評価が不十分であったとNew York Timesが報じている。その変更はパイロットにも周知されていなかったという。

engadgetの記事

ボーイング社の自動操縦システムの基本設計思想は、システムと操縦士の操作に食い違いがあった場合、人の操作を優先するようになっている。

1994年名古屋空港で発生したエアバスの着陸失敗事故は、システムと人の操作の矛盾をシステムを優先させて失速・墜落した。当時既にボーイングの基本設計は、人の判断を優先していた。

航空機事故から

B737max8のMCASの修正はバグ修正にとどまらず、基本設計の変更に関わるモノとなってしまった。当然制御システム全体と整合性が取れない場合が発生するはずだ。それにもかかわらず検証・妥当性評価が不十分であった。

航空機の航行システムがどの程度の規模のソフトウェアなのか想像もつかないが、相当な規模であろう。そのような制御プログラムで基本設計に反する改造をして簡単な検証で済むはずがない。

物事には、変えていいところと変えてはいけないところがある。


このコラムは、2019年7月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第844号に掲載した記事に加筆しました。

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プリント基板の白化不良

 先日オフィスでプリント基板の品質問題に関するご相談を受けた.
プリント基板に電子部品を実装し半田付けをした後に,プリント基板のところどころが白化してしまうという不具合が発生し,どう対策すればよいかと言うご相談だった.

このような不具合現象は,一般に「ミーズリング」「クレイジング」「ボイド」「デラミネーション」と呼ばれている.積層プリント基板の内部に剥離や気泡が発生するために,外観上白化した様に見える.

積層プリント基板は,回路パターンを形成する配線板の間に.プリプレーグと呼ばれる絶縁樹脂をサンドイッチして熱硬化させて作る.プリプレーグはガラス繊維に半硬化樹脂を浸み込ませたシート状になっている.

例えるならば,プリプレーグは生八橋のようなものだ.硬い八橋で生八橋を挟んでもう一度焼くと言うイメージだ.

ミーズリング,クレイジング,ボイド,デラミネーションはプリプレーグ部分に剥離,気泡,空洞が出来てしまう現象だ.

その原因は

  1. プリント基板積層後にプリント基板が吸湿し,その水分が半田槽による加熱で膨張する.
  2. 積層時のプリプレーグ硬化が不十分のため,半田槽の過熱により後硬化する.
  3. プリプレーグの保管状態が悪いため,吸湿しその水分が加熱により膨張する.

などが考えられる.

最後の3.が原因の場合,メーカで積層プリント基板が出来上がった時点で白化不良が発生しているはずだ.

メーカにおける材料・完成品管理,積層工程以降で吸湿しないかなどを確認する.自社での保管条件を確認する.などにより原因を特定し対策を立てなければならない.

納入直後のもの,自社で保管後のものを同一条件で半田槽に流して比較する.
白化不良する場所に偏りがないか調べる.
など現場・現物で確認をすればよいだろう.

プリント基板をベーキング(高温放置)すれば,改善するかもしれない.
しかしベーキングは銅パターン酸化のリスクがある.銅パターンが酸化すれば、半田付け不良が多発する.
ベーキングは真の原因をつぶさずに対処療法をするだけだ.一時的に改善しても,根本原因に対策ができていないので再発の可能性が高い.


このコラムは、2011年3月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第196号に掲載した記事に加筆しました。

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信頼性不良問題

 工程内の検査では不良が見つからず,市場で使用中に不良が発生するものを信頼性不良と呼んでいる.

寿命モードの不良,例えば
金属疲労,プラスチックの油脂クレージング割れ,金属のマイグレーション,半田クリープなどさまざまな信頼性不良がある。

本サイトのコラムで「信頼性不良」の事例を紹介している。

工程内検査では不良が見つからず.エンドユーザが使用中に1,2年経って不良が発生する.厄介な不良モードである.
信頼性不良が発生した場合原因の解析・対策をするのは当然だが,更に厄介なのはすでに市場に出荷してしまったものに対してどのような処置をするかということだ.

処置の仕方によっては,莫大な損失金額が発生する.

当然事業として生産活動をしているので,損失金額を最小限にするよう検討することは必要だ.しかし基本はエンドユーザを第一に考えることである.

直接顧客がセットメーカであっても,エンドユーザの立場で検討しなければならない.製品を供給した顧客は,エンドユーザに対して品質責任を持っているので,エンドユーザの立場に立っていない処置は受け入れてもらえない.

例えば銀行ATMのトランザクリョンを処理するノンストップコンピュータで信頼性不良が発生すると,エンドユーザである銀行に迷惑をかける.場合によっては新聞沙汰になり銀行の信頼が低下する.
しかしこのような製品の場合,一般的には保守体制が確立されており予防保全で不良が発生する前に部品を順次交換してしまうことができる.

本当に厄介なのは,民生品である.
例えば,一昔前はTVに使っている高圧トランス(フライバックトランス)の焼損事故がしばしば発生した.当事使用していたフライバックトランスは赤燐系の難燃材料を使用しており,赤燐が信頼性不良の原因となることがままあった.

民生品なのでエンドユーザでの使用環境は千差万別だ.前出のコンピュータの場合は空調の効いた電算室に設置される.したがって使用環境が一定しており,不良が発生する期間も読みやすい.

TVなどはラーメン屋の麺をゆでる釜の上に設置されている場合もあり,電気製品にとっては湿度・温度ともに劣悪な環境となる.

しかし民生品だからといって,許されない故障モードはある.
ただ画像が出なくなるだけならば大きなクレームにならない可能性が高いが,発煙事故となると話は違う.この場合は事故が1件2件発生しただけで,新聞告知で回収するなど莫大な費用がかかる.

他社の事例,異業種の事例などから自社製品への影響を読み取り事前に対策をしておくことが必要だ.このメールマガジンでもしばしば品質問題を取り上げているが,自社製品に当てはめて読んでいただきたいと考えている.


このコラムは、2009年10月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第119号に掲載した記事に加筆しました。

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トヨタ、中国で乗用車68万台をリコール 窓の開閉装置に不具合

 トヨタ自動車は24日、中国で乗用車約68万8000台をリコールしたことを明らかにした。窓の開閉スイッチに不具合があり、熱が発生して部品が損傷する可能性があるという。リコールは現地時間23日の11時に発表した。

 リコールの対象となったのはカムリ、ヤリス、カローラ、ビオスの一部。同社広報によると、窓ガラスの開閉スイッチ設定部にグリースが多く塗布されたことが原因。

(NIKKEI NETより)

 東莞市ローカルタブロイド紙の25日付記事でリコールを知った.68.8万台のリコールというのは中国でも最大規模の回収となった.

スイッチ部分にグリースを塗布するというのが理解できない.
グリース類はスイッチハウジング,ノブなどのプラスチックに悪影響を与え,比較的短期間でプラスチック部品がクレージング破壊を起こす.プラスチック部品やその近くに潤滑油などの油脂を塗布することはまれだ.どうしても必要な場合は,耐クレージング性の高いPOMなどの材料を使用する.
中国ではパワーウインドウの開閉ができなくなっているタクシーにしばしば乗り合わせる.窓の開閉不良など致命故障ではないという考え方だろうか.
後部座席の左側扉が内部から開閉できず,運転手に右から下りろと言われたこともある.

中国の国産車がこの程度の品質なので,故障に対しては比較的寛大な受け止め方をしているように感じる.

日本車は販売価格が高くても,故障が少ないので維持費を含めた総コストは日本車のほうが安くなる.と多くの人が信じているようだ.

今回のリコールに対する地元紙の論調は,「サービスセンターに持ち込めば15分もあればただで修理してくれる」と友好的な記事になっている.今のところ一時期の日本製品バッシングのような動きはなさそうだ.

下手に隠し立てなどするとこうは行かないだろう.
品質保証は「正直が一番」というのが私の信条だ.


このコラムは、2009年8月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第114号に掲載した記事に加筆したものです。

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「Galaxy Fold」発売延期

 米国時間4月22日、またしてもサムスンの折りたたみスマートフォン「Galaxy Fold」に関する悪い知らせが飛び込んできた。同製品をめぐっては先週、早期に生産されたレビュー用端末の画面が破損するという報告が複数寄せられていた。サムスンは、26日に予定していた同製品の発売を延期することを認め、「数週間のうちに」新しい発売日を発表すると述べた。

 「ディスプレイについて報告された問題を検査したところ、ヒンジの上下の露出部分における衝撃が関係している可能性があることがまずわかった。端末内部の物質がディスプレイの表示性能に影響していたケースもあった」と、サムスンは声明で述べた。「このフィードバックを十分に評価し、さらなる社内テストを実施するために、Galaxy Foldの発売を延期することにした」(サムスン)

 同社は、このデバイスを予約注文していたユーザーに電子メールを送り、「2週間以内に、より具体的な出荷情報」を通知すると述べた。出荷されるまでは端末代金がユーザーから徴収されることはなく、気が変わった場合は、出荷前ならば注文をキャンセルすることができる。

(CNET Japan より)

 「折りたためるディスプレイ」という驚きをもって迎えられたサムスンのGalaxy Foldの落胆ニュースだ。

発端はレビュー用にメディアに配布したサンプル機のディスプレイ故障だ。サムスンはサンプル機の故障に関して以下のように言っている。
“何人かのデバイスは可能な限り最高のユーザーエクスペリエンスを保証するために、Galaxy Foldがさらなる改善を必要としていることを我々に示してくれました。このフィードバックを十分に評価し、内部テストを実行するために、Galaxy Foldの発売を延期することにしました。”

プロトタイプを展示会などで発表することはありうるだろう。しかし発売日を決定して発表した商品で、このような事例はお粗末としか言いようがない。

当然4月26日発売の初ロット生産前に、製品の信頼性評価、妥当性評価は完了していたはずだ。

折りたたみ式ディスプレイという新技術を搭載したスマホであれば、折りたたみ耐久評価が完了していなければならない。例えば商品の耐用年数3年、1日の折りたたみ回数を10回と定義すれば、10,000回程度の開閉評価をすれば分かることだ。つまり1秒に1回開閉する検査機を作れば約3時間もあれば評価可能だ。

またユーザが保護フィルムを誤って剥がしてしまう事が,故障原因の一つであると言っているが、こういう問題を事前に洗い出す事が「妥当性評価」だ。

開発の立場で考えれば、いち早く市場に投入して業績に貢献したいと考える。
しかし品質保証の立場で考えると、顧客利益を守る(品質損失を最小限にする)ために必要な手続きを踏みたいと考える。どちらが良い、悪いということではないと思うが、どちらを優先するかが企業文化であり、それを評価するのは消費者だ。


このコラムは、2019年5月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第820号に掲載した記事に加筆したものです。

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三菱重工製エアコン6機種に発火などの恐れ

 経済産業省は21日、三菱重工業製のエアコン室外機が焼ける火災が6月に鳥取県と愛知県で起きたと発表した。同社は経年劣化による発煙・発火の恐れがあるとして、76~81年に製造された一部機種について使用を中止するよう呼び掛けている。

(asahi.comより)

 この記事だけでは,原因が何かまったく分からない.
一般の消費者に対しては,事故の可能性があることを知らせ注意を喚起すれば十分だろう.しかし「当事者」になってしまう可能性があるものづくりに関連している人たちには,不十分だ.事故の原因を知らせ,水平展開を図る情報提供があってもよいだろう.

ということで製品評価技術基盤機構(NITE)のホームページで類似の事故を調べてみた.以下の事故情報がヒットした.

  • 事故内容:エアコンを使用中、突然ブレーカーが落ちた。
  • 事故原因:室外機の内部配線が、冷媒配管と防音材に挟まれていたため、運転中の振動により配線の被覆が摩耗し、露出した芯線が配管に触れて漏電したものと推定される。

ここまで書いてあると,この情報から「未然防止対策」を考えることができる.
具体的には内部配線の経路や固定方法を検討する際の「べからず集」を作ることができる.

さらにこの事故を抽象化して適用範囲を広げる.

「出荷後の動作環境で発生する絶縁不良」という抽象化をすれば,ケーブルによる配線だけではなくプリント基板の配線パターンとプリント基板上に実装された金属部品間の接触も考慮の範囲になる.

また「出荷後の動作環境」は振動による機械的磨耗だけではなく,経年変化による絶縁材料の劣化も対象になる.

高い勉強代(不具合損失)を支払う前に,他山の石を徹底的に学習するのがよいだろう.


このコラムは、2009年8月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第113号に掲載した記事に加筆したものです。

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LG洗濯乾燥機から出火、さらに2件 リコール公表後

 LGエレクトロニクス社製のドラム式洗濯乾燥機から出火する火災が、7月に東京都内で2件発生したことが、東京消防庁の調査でわかった。同型機は3件の火災が起きたとしてリコール(無償交換)されたが、今回の2件はいずれもその後に起きた。これまで回収できたのは販売台数の4分の1にとどまる。同庁は「重大な火災につながるおそれがあり、使用をやめて早く交換を」と呼びかけている。

 同庁によると、7月28日午前10時ごろ、豊島区のマンション1階の部屋で、同型機やブレーカーが焼け、周囲の壁も焦げた。29日午前11時ごろには、台東区のビル1階の診療所で、同型機が焼けた。いずれも接続不良から過大な電気抵抗が生じて発火したという。

(asahi.comより)

 事故写真を見ると洗濯機の操作パネルの部分が激しく焼損している.記事では「接続不良」としか書いていないが,コネクタ部分の接触不良,ケーブルとコネクタのカシメ部分の接触不良,半田クリープによる半田接合点の接触不良などが考えられる.

いずれも工場の製品検査では発見できない厄介な不良である.

接続部分に接触不良が発生すると,接触抵抗(r)が大きくなる.接触抵抗が大きくなるとそこに流れる電流(I)によってr×I^2の電力損失が発生する.この電力損失はほとんどが熱になる.

この場合動作電圧が低ければ接続部分に流れる電流は大きくなり,接続不良による電力損失=発熱も大きくなってしまう.したがって5Vとか3Vの低圧回路のほうが危険な場合が多い.回路電圧が低くても危険な場合もある。

難燃材料を使っていても安心はできない.
空気を遮断した状態で加熱が続くとプラスチックは徐々に炭化して行き,最終的には発煙・発火時を起こす.
火災につながる重大不良である.
製品検査で発見しにくくとも,製品保証をする必要がある.
設計による保証.製造方法による保証が必要だ.


このコラムは、2009年8月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第112号に掲載した記事に加筆したものです。

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購入部品の評価

 購入部品の評価が難易度を増している。
昔ながらの部品であれば、部品サンプルで機能や品質を技術的に評価する。
そしてその品質、納期、コストを保証出来る事をベンダー監査により確認する。
この手順で購入部品の評価が出来る。

しかしモジュール部品の場合、機能の大部分は組み込みソフトで実現している。従って、伝統的な購入部品の評価手法だけでは十分とは言えない。
製品の高機能化、小型化が進み、この様なモジュール部品を外部調達する比率が増加しているのが現実であろう。言って見れば自社にないソフトウェア技術を部品として購入している訳だ。

では、自社にないソフトウェア技術をどのように評価したら良いのだろうか?
「バグはもう一つある」というのがソフトウェア業界の常識の様だ(笑)
ベンダーが設計したソフトウェアの信頼性を評価する事は、ほとんど不可能だ。しかもベンダーが組み込みソフトのソースコードを公開するとは思えない。組み込みソフトのコーディング検証が出来るのならば、自社で作ることが出来るだろう。

モジュール部品の検証は「入力」と「出力」を漏れなく洗い出し、全ての入力の組み合わせに対して正しい出力が得られる事を検証することになる。組み合わせだけではなく、タイミングや状態の遷移も検証対象となる。

この様な設計検証がベンダーで正しく行われている事を確認する。
自社製品に組み込んだ場合の検証をユーザの立場で行う。これを妥当性評価という。妥当性評価は自社で実施しなければならない。

妥当性評価を実施する場合、評価計画を事前に作成する事が重要だ。
モジュール部品が完成品に与える影響の致命度により順位付けをし、評価項目、評価順序の計画をあらかじめ作成して評価する。計画を作っておかないと、評価漏れや、重要ではない項目の評価に時間が取られ、評価作業が泥沼状態となる。


このコラムは、2016年9月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第495号に掲載した記事に加筆修正しました。

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カレー鍋スープ、6万パック自主回収

 調味料の〇〇(東京)は21日、「カレー鍋スープ」の約6万パックを自主回収すると発表した。工場での殺菌処理の工程でトラブルが見つかり、雑菌が混入している恐れがあるという。

 自主回収するのは関東工場で8月1日に生産し、賞味期限が2012年7月31日の6万540パック。カレーチェーンを運営する会社と共同開発した商品で、全国のスーパーなどで販売している。

 購入者から「すっぱい味がする」との指摘を受けて調べたところ、同日の生産分のうち1344パックの殺菌処理が不十分だった。同社によると、腹痛などをおこす恐れがあるという。

(asahi.conより)

※社名等を特定する必要がないので、伏字としました。

 この記事だけでは,どの工程でどんなトラブルが発生したのか具体的には分からない.全て仮定になるが,今回の回収事故から教訓を探してみたい.

殺菌処理の工程でトラブルが見つかったとある.
殺菌処理工程には,調理に使う設備の殺菌,食品そのものの殺菌,包装パックの殺菌が推定される.記事だけではどの殺菌工程かは分からない.

また殺菌工程のトラブルの波及範囲が,1344パックと特定できているということは,1バッチ分(または数バッチ分)の生産だったということであろう.そしてそのトラブルは,認知されており,記録にも残っているはずだ.

さすがに,食品そのものの殺菌工程にトラブルが発生していたのならば,出荷は止められたはずだ.

恐らくバッチごとの,設備洗浄殺菌とか,包装パック殺菌などの補助的な工程でのトラブルなのだろう.

消費者からのクレームに基づいて,生産記録を調べても異常が見つからない.しかし設備などのメンテナンス記録を調べることにより,異常が見つかったという経緯だろう.
例えば,殺菌温度が不足していることに気が付き,殺菌設備の調整・修理が行われたという記録が見つかったのではないだろうか.

その不具合が製品に与える影響を推定しきれなかった(認識ミス).
またはその後にも殺菌工程があるので問題ないと判断した(判断ミス).
のようなミスがあったのではないだろうか.

このような人為ミスを防ぐためには,製品の品質に影響がある工程で不具合が発生したら,強制的に主ラインが止まってしまう仕組みを作ればよいだろう.原因の追究と波及範囲の特定・処理を決めた後,ライン停止解除できる仕組みにしておく.このようにしておけば,一人の作業員の認識ミス・判断ミスで不具合が拡散する可能性を低くすることが出来る.

以前半導体部品のロット不良に遭遇したことがある.
トランジスタのVbe電圧(トランジスタがONになる電圧)が,仕様を外れていた.製造元の出荷検査では,一瞬で検査が終わってしまうため不良を発見できない.しかし通常の使用状態では,トランジスタが自己発熱する為に,Vbe電圧不良が顕在化する.

製造元の調査によると,トランジスタチップをリードフレームにボンディングする設備に異常があり,調整をしたという記録が見つかった.不良の原因はトランジスタチップとリードフレームが密着していなかったため,トランジスタの自己発熱がリードフレームを通して散熱出来ずに,Vbeの温度特性により,ON電圧が仕様を外れてしまった.

このロット不良も,ボンディング設備の調整メンテナンスをした時点でその影響と波及範囲を特定する仕組みがあれば,少なくとも不良ロットを出荷しなくても済んだはずだ.またはボンディング設備の品質をモニターできるようにしておけば,不良の発生もなかったはずだ.

まずは,各工程の潜在故障が製品品質に与える影響を特定する.
製品品質に影響を与える潜在故障の発生をモニターする仕組みを工夫する.
少なくとも,故障発生時に主ラインが止まるようにすれば,回収事故にはならないはずだ.


このコラムは、2011年9月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第224号に掲載した記事です。

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