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続々・モチベーション向上

 このところモチベーション向上に関するテーマが続いているが、ご容赦いただきたい。
「モチベション向上」
「続・モチベーション向上」

モチベーションと聞いてすぐに思い出すのが、ダニエル・ピンクの著作だ。

「モチベーション3.0」ダニエル・ピンク著

モチベーション3.0と言う言い方と、ダニエル・ピンクと言う著者名に興味をそそられた(笑)

モチベーション1.0:生存本能に基づく動機付け
モチベーション2.0:報酬と罰による動機付け
モチベーション3.0:創造性を引き出す動機付け

モチベーション1.0が一番強い動機付けだろう。例えば火災などの災害時に、年寄りが家財道具を運び出す力を発揮する、いわゆる「火事場の馬鹿力」を発揮する動機付けだ。残念ながら、モチベーション1.0で仕事に対する動機付けを高めるのは難しいだろう。

モチベーション2.0が今中国工場の使われている動機付け手法の本流だろう。
生産高に合わせて報酬を出す。不良を出したり、規律を乱す行為には罰金を課す。
つまり
「好ましい行動」に対し褒賞を与え、その行動を強化する。
「好ましくない行動「に対して罰を与え、その行動を抑制する。
と言う考え方だ。

経済成長期はこの手法が生産のモチベーション向上に有効だった。
需要に対し供給能力が小さいので、生産すればいくらでも売れる。日系企業でもいまだに多くがモチベーション2.0スタイルの管理をしている。

しかし経済成長が飽和している環境でのモノ造りでモチベーション2.0が有効とは考えにくい。受注量が減少すれば、生産高でモチベーションを与え続けることは出来なくなる。本来受注生産だったのを、計画生産に切り替え従業員の収入を確保する。こんな馬鹿な経営はないだろう。早晩工場の中には在庫品が堆積し、資金繰りに苦しむことになる。企業が倒産してしまえば、従業員の雇用を守ることすら出来なくなる。

生産改善も、量の改善から質の改善に変わって行かねば生き残れない。
しかしモチベーション2.0で動機付けられている作業員は、収入減につながる可能性がある改善に協力するはずもない。

自己成長に対する喜び、達成感。同僚、会社、顧客、社会に対する貢献による自己充実感。こういう要素によるモチベーション3.0による動機付けが重要だと考えている。


このコラムは、2016年3月21に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第468号に掲載した記事に加筆しました。

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続・モチベーション向上

 先週のメールマガジンでご報告した様に、先週末の東莞和僑会で講演をした。
「モチベーション向上」

東莞和僑会の公演でモチベーションの向上について話をさせていただいた。
正直に言うと、前職時代は技術、品質保証の仕事をしており、人事に関する事にはほとんど興味がなかった。自分で考えなくても、人事部門が色々な施策を下ろしてくれる。私は自分の部署で、その施策をどう運用すれば良いかを考えるだけで良かった。

しかし独立以来、経営の師匠として尊敬している原田師から「全てのことは人の心から始まる」と教えを受け、自分の不明を恥じた。その後中国で実際に組織経営されている経営者の方々との勉強会を開催させていただき、モチベーションをいかに向上させるかと言うテーマで多くの学びを得た。そんな内容を参加者の皆さんに提示し、では私たちは何をなすべきかと言うテーマで話し合った。

そして月曜日からどんなことを実際にするか、皆さんから決意表明を聞く事が出来た。皆さんの話を聞いて、私は自分自身のモチベーションが上がった(笑)

実はこの講演のやり方そのものが、会議を通してメンバーのモチベーションを高める方法の提案だった。初めて試した方法だったので、うまく出来なかった所も有るが、自分なりにそこそこ納得がいく結果だった。

翌日曜日は、深セン和僑会に参加し香港日本料理協会の吉田会長の講演会に参加した。飲食業会については全く見識がないが、製造業との共通の問題がある事に気がついた。香港の飲食業会では、ホールスタッフの仕事は立ち仕事、長時間の拘束、低賃金などの理由により若者の人気がなく離職率が高いそうだ。
製造業でも作業員の定着率が低いと悩んでいる方も多い。そのような職員にどのような方法で、モチベーションを上げているのか質問してみた。

吉田会長が経営する日本食レストランでは、休憩時間の延長、チップの個人受け取り、ボーナス、日本への研修旅行でモチベーションが上がる様に工夫しておられる。大変興味が有り、労働条件の改善、金銭的報酬、研修旅行のどれが一番効果が上がりますかと更に質問した。想像通り、研修旅行が一番効果が高かったそうだ。研修旅行は、年に一回店長の推薦が有ると、行く事ができる。研修旅行に参加出来た従業員は日本式サービスを学びモチベーションを上げるそうだ。参加出来なかった従業員も、次は自分が行こうと更に頑張る。

まさにハーズバーグの衛生理論だ。労働条件や金銭(衛生要因)よりは、上司の評価や自己成長機会(動機付け要因)の方が高いと言う事だ。


このコラムは、2016年3月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第467号に掲載した記事に加筆しました。

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モチベーション向上

 今週末の東莞和僑会で講演をすることになった。
東莞和僑会の会長になって以来、裏方として活動して来た。そのため自分自身で講演をしない様にしていた。ボランティアで東莞和僑会の活動を支えいるメンバーが講師を担当し、一巡した。順番で私にも講師の当番が回って来てしまった(笑)

モチベーションの向上について話してほしいと言うリクエストを貰っている。
独立以来、リーダや作業者のモチベーションをいかに上げるか?という課題を考え続けている。毎月定例で開催していた「人財育成勉強会」では、経営者・経営幹部の方々と従業員のモチベーション向上について語り合って来た。

そんな経緯も有り、モチベーション向上と言うお題をいただいたのだろう。

以前このメルマガでモチベーションが高い組織はチームであり、テンションが高い組織はグループだと言うコラムを書かせていただいた。

「チームとグループ」

ではモチベーションとテンションの違いはどこに有るのだろうか?

私は、次の様な例でモチベーションとテンションの違いを理解している。

明日の遠足が楽しくて眠れなくなっている小学生。
共通の趣味を持つ仲間が酒を飲みながら盛り上がっている。
朝礼で大きな声で社訓を唱和している。
こういう状態はテンションが高い状態。

このパットを沈めると優勝と言う状況で静かに集中力を高めているゴルファー。
課題達成のために、上司・同僚と激論している。
経営理念を達成するために貢献意欲を高めている。
こういう状態はモチベーションが高い状態。

テンション:今得られている喜び、もしくは近い将来確実に得られると期待出来る喜びに対して生まれる感情の盛り上がり。

モチベーション:努力すれば得られると期待出来る貢献や成果に対する意欲の盛り上がり。

こういう線引きでいかがだろうか?


このコラムは、2016年3月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第466号に掲載した記事に加筆しました。

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運用力

 先週はトヨタの中国合弁企業で働いた経験を持つ幹部がいる民営企業で現場指導をしていた。生産現場のレイアウト、生産設備、製品の流し方など随所にさすがと思わせるモノがあった。同業種の中国工場を4社指導した事があるが、4社の中ではダントツのよい工場だ。

しかし現実は、生産投入の仕方、部材の配置など改善の余地が多くある。
生産現場のレイアウト、生産設備、製品の流し方などハード的な改善は簡単に真似をする事が出来る。目で見えるからだ。

一方生産投入の仕方、部材の配置など運用のソフト面は、真似しにくいのかも知れない。
見かけの効率だけ追求し同一部品を大量加工をすれば、生産リードタイムが長くなる。万が一加工不良が混入していれば、後工程のロスや手戻りのロスが発生する。しかも当該工程の改善は間に合わない。
大量に加工した部材の置き場所を確保しなければならず、生産現場のスペースを圧迫する。そのため必要な部材を探すロスや運搬のロスが発生する。

見かけの生産性を追求する最大の要因は、作業員の給与制度にある。生産量に比例する出来高制となっている為に、作業員は改善に不安を感じる。直接作業者を指導している監督職も改善に消極的となる。

この工場の最重要課題は、経営者から作業員まで全ての人の心を変える事だ。
各工程が部分最適、もっと言えば自分の給料最大化と言う個人最適に陥っているのを、全体最適に変えなければならない。全体最適が出来れば、企業の利益が増え、結果的に従業員の収入増につながるはずだ。
経営者から現場作業者まで、このロジックを理解させ、改善に対する勇気を鼓舞する事が、私たちコンサルチームがまず取り組むべき解決課題だと考えている。


このコラムは、2016年5月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第478号に掲載した記事です。

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続・モノ造りの変遷

 先週は、日本の大手企業が設計・製造を外注化し設計・製造の現場力を下げているのではなかろうか、と言う問題提起をした。

先週のコラム「モノ造りの変遷」

経営効率を考えると、設計者の育成に時間がかかる設計部門、生産設備などの固定費を抱える製造部門は経営を重くする。それらを外注に出し、固定経費を変動費化する。そして経営資源を価値創造の商品企画に集中することになる。

しかし設計・製造を外注化したとしても、製品の品質保証は自社に有る。当然、外注化した設計・製造の品質保証をしなければならない。

製品の検査に関与するのは得策ではないだろう。せっかく付加価値の高い商品企画に集中しようと言うのに、付加価値を生まない検査を取り込んでは意味がない。

品質保証の鉄則は「源流管理」だ。最終検査に注力するより製造工程に遡る、製造より設計に遡って管理する。

具体的には、設計・製造のレビューや審査に遡って先に問題をつぶしておく事が必要となる。レビューや審査で成果を出すためには設計・製造の現場力がなければならない。と言う事で、問題は振り出しに戻ってしまった(笑)

中堅中小企業でも人財の不足などで、源流管理が難しくなっている事例を見る。

前職時代にファブレス事業部(製造は全て社外の生産委託先)の品質保証部門責任者として同様な問題を抱えていた。(当時は当たり前の事だったので問題と言う認識はしていなかった)

他の事業部を含め品質保証部門には生え抜きの品質保証マンは殆どいなかった。
研究開発、製品設計、生産技術、製造、商品企画、営業など様々な経験を持ち品質保証を担当しているメンバーばかりだった。

設計出身の者は、設計レビュー・審査で潜在的問題を嗅ぎ分ける事ができる。
しかし別の経歴を持った者はそれは出来ない。逆も然りだ。品質保証部門に色々な経歴を持った者を集めれば良い訳だが、簡単ではない。

私が実践して来た方法は、設計で発生した問題、製造で発生した問題を収集し事例集を作る事だ。

自社の問題だけではない。部品、材料の仕入れ先、生産委託先、同業者の問題も収集した。同業者の問題など知る事は不可能だと思ったら、不可能となる。可能になる方法を考えれば良いのだ。

例えば、コンピュータの電源ユニットの回収が新聞記事に出れば、秋葉原でジャンク屋を回り、回収対象品を探しまわる。手に入れた回収対象品を分解し問題を探る。それでも原因が分からない時は、顧客の品質担当者から聞き出す。
コンペチターの製品なので、当然顧客の品質担当者はコンペチターから報告を受け不具合内容を知っている。興味本位で聞いたのでは教えては貰えない。同様な問題で、顧客に迷惑をかけないためにコンペチターの電源ユニットを分解し原因を分析していると知れば、先方も教えてくれるモノだ。

そうやって、電気電子部品、半導体、プラスチック成型、機構部品、化学材料などの信頼性問題を沢山仕入れ、それが設計や製造のチェックリストになっている。それらの内、公開しても問題ないモノはホームページで公開している。参考にしていただければ光栄だ。

コラム:信頼性技術

自社に設計・製造部門がなくても、このような努力により、設計レビューや製造レビューで問題を未然に防ぐ現場力を持つ事が出来るだろう。


このコラムは、2017年11月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第585号に掲載した記事です。

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モノ造りの変遷

 日本の大手製造業のモノづくりが最近大きく変わってきているように感じる。

日本は伝統的にモノ造りの職人に対して尊敬の念を持つ心がある。(経済的に優遇されているかどうかはちょっと疑問に思うところもあるが、いかがお感じだろうか?)その伝統が日本の製造業の根っこの所を支えてきたように思う。
近年それが変わってきたように感じている。

明治以降近代化が進み、日本は先進国のモノマネを始める。当時日本製品は世界から「安かろう悪かろう」の代名詞として認識されていた。戦後の復活期にデミング博士から教えられた品質管理を愚直に徹底。小集団活動により改善を繰り返し、品質、コストダウンを追求した。そして「モノ造り日本」という称号を得て、経済大国に成長した。その背景には勤勉な日本人労働者がいる。

ここまでは、先頭ランナーの背中を追いかけていればよかった。
先頭に飛びたしてしまってから、ちょっと勝手が違ってきた。もうマネをする相手がいない。自ら価値を創造しなければならない。そんな時期にバブル崩壊がやってきた。

その時期に、日本的伝統を捨て欧米流の合理主義経営に飛びついた。
製造や設計の外部リソース化により、製造や設計を変動費化し経営を身軽にしようとした。アップルやグーグルなどの優良企業の様に、商品開発による顧客創造を目指したと言えるのではなかろうか?

中堅中小企業がこの様な戦略を取っているとは思えないが、大企業がこの戦略で、製造や設計の現場力を落としている様に思えてならない。

一方中国のモノ造りの変遷は以下の様になるだろう。
先進国の生産委託を受け入れることにより、先進国のものづくり技術や設備を取り込んだ。そして安価な労働力を背景とし、同一規格製品の大量生産により経済成長を果たす。急速に経済発展した中国は労働コストの優位性を失ない、次の展開を目指さねばならなくなっている。

中国の新興民営企業は、独自製品の設計・生産を始めている。しかし残念ながら、中国企業は現場力を極める姿勢がまだ足りない。設計力をつけてきた企業は次の段階(設計品質保証)を目指すことになる。

日本の製造業が進んできた道を、経路は違っても中国企業がキャッチアップしてくる。日本企業も次のステップに向かわねば追いつかれる。


このコラムは、2017年10月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第582号に掲載した記事です。

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コモディティ化

 コモディティ(commodity)とは日用品と言う意味だ。「コモディティ化」と言う時は、市場に流通している商品がメーカーごとの差異が無くなり、消費者にとってはどこのメーカーの品を購入しても大差ない状態のことだ。例えるならば釘やネジがコモディティ化した商品だ。

前職時代電源ビジネスに関わっていた。計測・制御機器やシステムを製造販売している企業であり、電源の様な部品の製造販売には無縁だった。自社製品に使用する電源も、スイッチング電源は信頼性に難点が有るので採用しない、などと言う超保守的な所のある会社だった(笑)

それが協力関係に有った米国のワークステーションメーカから、信頼性の高い電源を作って欲しいと言うオファーが有り、少人数のエンジニアが集まり電源を設計、子会社工場で生産を開始したのが電源ビジネスの始まりだった。我々が生産する電源の品質が高い事を聞きつけた同社のプリンター事業部からも受注し、本格的な量産が始まった。

国内の工場で、異形部品実装ロボットを使った自働化ラインを作り、生産していた。その後、アダプター電源のプラスチックケース組み立てや、PC電源のワイヤーハーネス実装がロボット化できずに、中国の工場に生産委託をすることになる。台湾の電源メーカの中国工場で生産していた。

電源は安全規格部品であり、当初は、信頼性重視のため台湾メーカを採用する顧客は少なかった。台湾メーカの成長で、電源ユニットはコモディティ化し、価格競争が激しくなった。最初の顧客も、インターネットに仕様を公開して、公開入札でベンダーを選定する様になり、我々は受注を獲得する事ができなくなり、撤退することになった。

当初は自社の信頼性設計技術が参入障壁となっていたが、それを乗り越えたメーカが参入を始める。完全自動生産が実現出来なかったので、生産技術については参入障壁を作ることができなかった。

当然経営者としては、もっと儲るビジネスに人員を振り向けるべきだ。
前職の企業は、元々もっと利益率が高く、シェァを取っている市場向けの製品が主力だったので問題は無かった。

しかし自社製品がコモディティ化し、他社と差別化するための、商品開発技術、生産技術が間に合っていない場合どうしたら良いのか考えてみた。極論をすれば、自社のネジや釘をどうすれば売れるか、と言う事だ。

まず、顧客がメーカ指定で購入する場合を考えてみた。

(1)他の企業にはないモノ。
(2)他の企業より圧倒的に品質が高いモノ。
   ただしその品質が顧客にとっての価値でなければならない。
(3)他の企業より圧倒的に価格が安いモノ。

しかし1~3のポイントはコモディティ化したモノには当てはまらない。

では、人はどういう時に、高くてもモノを買うのかと考えてみた。

(4)必要な時に手に入れられる。

例えば、缶コーヒーはスーパーで買えば自動販売機より安く買える。
缶コーヒーよりスターバックスのコーヒーが好きだ。
しかし、今コーヒーを飲みたい時にスターバックスやスーパーが探さず、自動販売機を見つけてコーヒーを買うことになる。

つまり価格も品質も劣っている自動販売機の缶コーヒーが売れる。
当初の「メーカ指定で購入」と言う命題とずれてしまうが、自動販売機の機能を持つメーカと置き換えて考えれば、同じことだろう。

コモディティ化した製品を生産している工場は、お客様の自動販売機になれば良いのだ。
今日電話で注文を貰えば、今日中に出荷する。
これをどうしたら実現出来るのか必死に考える。
材料の調達に○○日かかる。
生産リードタイムに○○日かかる。
などとできない理由ばかり考えていては、絶対に答えは見つからないはずだ。


このコラムは、2015年5月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第425号に掲載した記事です。

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2018年の抱負

 2018年最初のメールマガジン配信にあたり、今年の抱負について考えてみた。
2018年の折り返し点を迎え振り返ってみたい。

独立して丸12年、今年から13年目となる。改めて自分の使命を整理すると、
What(何を):経営幹部、現場リーダの能力・行動力を
How(どうやって):現場活動の実践により育成・強化することにより
Why(目的):顧客の経営改善に寄与する。

この使命を果たすために製造業の経営環境の変化は
・作れば売れた時代:同一規格大量生産
・売れるものを作る時代:多品種少量生産
・価値を創造する時代:多品種変量生産
・モノ造りからコト造りの時代:製造業から創造業へ

それぞれの時代に要求される能力
・作れば売れた時代:モノマネ・手段の活用・応用
・売れるものを作る時代:商品企画・手段の開発
・価値を創造する時代:商品創造・手段の革新
・モノ造りからコト造りの時代:コト創造・目的の発見創造

それぞれの時代に要求される組織・人財
・作れば売れた時代:命令服従型組織・忍耐力
・売れるものを作る時代:説得納得型組織・問題解決力
・価値を創造する時代:参加型組織・問題発見力
・モノ造りからコト造りの時代:異業種参加型組織・統合力

現在は、売れるものを作る時代から価値を創造する時代になっていると認識している。

そして近いうちにモノの消費からコトの消費の時代がやってくるだろう。
モノ造りからコト造りの時代には、もはや製造業という概念だけでは生き残れないかもしれない。製造業は創造業になると考えている。製造業はモノを造ることにより「体験」というコトを創造する創造業になるだろう。
「創造業」という概念については、今の所具体的なアイディアはない。
例えばバルミューダという家電メーカの寺尾玄社長は「商品そのものではなく、商品を使った時の楽しさを提供する」と言っている。私の考える創造業に一番近いところにいるのがバルミューダだと思う。

以上の経営環境の変化を踏まえ、2018年は中国の工場も「設計の品質保証」を確実にすることがテーマと考えている。


このコラムは、2018年1月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第609号に掲載した記事に加筆しました。

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鵜の夏、歩いてたぐり寄せる 和歌山・有田川

 和歌山県有田市の有田川で1日、室町時代から続く鵜飼(うか)いが始まった。鵜匠(うしょう)が川の中に入って鵜を操る、独特の「徒歩(かち)漁法」。鵜がアユをくわえて川面に現れるたびに、屋形船に乗った約300人の観光客から拍手と歓声が上がった。

 県無形民俗文化財に指定された伝統漁法だが、最盛期に90人いた鵜匠はいま4人。鵜を育て、訓練するのは1年がかりの重労働。生計を立てるのも難しく、後継者はなかなか現れないという。

(asahi.comより)

 私は子供の頃に,父親に連れられ長良川の鵜飼いを見に行ったことがある.長良川の鵜飼いは,鵜匠は船上にいて紐で縛られた鵜を何羽も川に放ち,鮎を鵜呑みにした鵜を船上に引き上げ,獲物を吐き出させる.
何羽もの鵜を紐でコントロールする手綱捌きをする鵜匠の腕は見事なモノだ.しかし鵜匠の本当の力量は,鵜が鮎を獲る様に訓練することだろう.

子供の頃は,単純に鵜の働きに感動したが,大学生なって働くということは,誰かにコントロールされることだと考える様になった.サラリーマンのネクタイが鵜の紐の象徴の様に見え,就職活動に全く興味を持てなかった(笑)多分,全共闘世代のただ中で成長した影響だろう.

人も鵜と同じ様に首に紐を付けられ,働かされている.その紐が目に見えないだけだ,と考えていた.

就職をし,人並みに部下を持つ様になって初めてその考え方が間違っていることに気が付いた.

見えない紐が「給料」であると考えると,会社に対する「忠誠心」と引き換えに給料をもらうことになる.こう考えていると,仕事は金銭を得るための「苦役」になる.

苦役であれば,当然楽しくはない.上司の命令に従って成果を出さなければ,給料がもらえない,給料が上がらないという,ネガティブな動機付けで働くことになる.指示されたとおり仕事をこなすのでは,パフォーマンスは上がらない.

見えない紐が「仕事に対する喜び」だとしたら,どうだろう.
鮎を獲るたびに観客から拍手喝采を得る.
二匹一度に飲み込み鵜匠から褒められる.
鮎を獲るたびに自己成長の喜びを感じる.
鵜がこう感じて喜んで働いていると考えるのはちょっと無理がある(笑)が,人には可能だ.

会社や上司は,仕事に対する喜びや自己成長のチャンスを与えてくれる.「会社への忠誠心」ではなく「自己への忠誠心」が働くことの動機付けとなれば,自ら進んで仕事に取り組むことになる.当然仕事のパフォーマンスは上がる.

上司が持っている手綱は,部下をコントロールするためのモノではなく,部下に動機を与え続けるための,エネルギー補給パイプだ.


このコラムは、2012年6月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第260号に掲載した記事です。

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答えを教えない教え方

 「教えない教え方」とは矛盾をはらんだタイトルだ(笑)

以前「答えを教えない指導法」というコラムを配信した。

このコラムでは「教える→覚える」という伝統的な教育方法とは違う「自分で考える・調べる」という行動促進型の教育といっていいだろう。
今回のテーマは「答えを教えないで教える」という矛盾をいかに止揚するかに挑戦する。大風呂敷を広げたが大した話ではない、と先にお詫びしておく(笑)

今QCC活動を指導している企業で、生産管理部門のサークルが初めてQCC活動に参加することになった。経営者も、初めて事務部門(間接部門)をQCC活動に参加させることになり、大いに期待している。しかし彼女たちは、何をしたらいいのか見当もつかなかったようだ。

30年以上QCC活動に関わってきている。「こういうことをやるといいよ」というのは簡単だ。そこをぐっとこらえて、「お客様はどんなことに困っているか聞いて見たら?」と質問した。
生産管理部門が服務を提供する直接のお客様は社内の製造部門、検査部門、仕入先だ。お客様のお客様(製品を購入する顧客)の要求は「納期通りに製品を納入する」ことだろう。これは100%達成しているという。

しかし社内の下流工程は、仕入先や前工程の遅延により顧客納期を守るために残業で対応しなければならない。

ではこれを解決しよう!と彼女たちはQCC活動のテーマに選んだ。
大変志の高いサークルだ。直接部門をサポートするのが間接部門なので、理にかなったテーマの決め方だと感心した。

じゃ具体的に何をする?というところで迷路に入り込んだ。
彼女たちは「生産計画の精度を上げれば解決する」というイメージを持っていたようだ。しかし仕入先や、社内工程の遅延は生産計画の精度が悪くて発生しているわけではない。部材の手配遅れや、歩留まりの悪化などの不測の事態で遅延が発生している。

部材メーカの納期遅れや工程の生産歩留まりを、生産計画部門が改善するのは難しい。彼女たちはここでつまずいていた。

製造の生産歩留まりを改善するのは、生産技術や製造部門だ。
歩留まりを見越して余分に生産計画立てることは、生産計画部門にも可能だ。しかしこれは本質的改善ではなく邪道だ。部材の発注を前倒しにするのも経営的に考えれば邪道だ。

では彼女たちに出来ることは何か、答えは喉元まで出てきている。
そこを「寸止め」でこらえている(笑)

教えてしまえば、理解出来るだろうし改善もできるだろう。
しかし考える力は身につかない。自分で考える習慣を身につけ、考える力を鍛錬しなければ、同じ問題は解けても、応用問題は解けない。

これ重要なことだと考えてる。
しかしどうも世間では、答えのない問題を解くことで思考力を鍛錬しない様だ。
高学歴で高成績の優秀な役人たちが「財政赤字は悪だ。消費税を上げて財政の健全化を図らねばならない」と大合唱している。彼らは、試験勉強で「過去の正解」はたくさん記憶しているけど、これから起きることに対する洞察力に欠けているのではなかろうか?

政府は国債をたくさん発行し、日銀はどんどんお札を刷って国債を買えば良い。
これに対し役人は、
過去の事例では、お金をたくさん刷ればハイパーインフレになる。
ギリシャやイタリアの様に、国債をどんどん出せば償還できなくなる。
と考える。

しかし現実を見れば、2%のインフレターゲットすら達成できていない。
ギリシャやイタリアと違い日本の国債はほとんど全て国内で消費されている。
ということを考えれば「過去問」と同じ答えを出しても正解にはならない。

ちょっとこのメルマガのテーマから外れてしまった。
素人の浅知恵とご勘弁いただきたい。

しかし、部下の育成に関しては答えを教えずに思考力を鍛える、というのは間違いではないと信じている。


このコラムは、2018年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第677号に掲載した記事に加筆したものです。

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