月別アーカイブ: 2017年9月

中国で100年間生き続ける秘訣

 セイコーウオッチ中国の董事長・吉村等氏の対談記事を読んだ。グループウェアのサイボウズが開催した上海のセミナーでサイボウズ代表・青野慶久氏との対談だ。

「大事なのは、明日の売上よりも“信用”」中国で100年間生き続けるセイコーブランドの秘密」

セイコーは100年前から中国に進出しているという。清朝が終わり中華民国が樹立してすぐの頃だ。改革開放時に安い労働力を求めて、中国に進出したのとはわけが違う。市場としての中国に進出したのだろう。

以前愛用していた時計のステンレスバンドの接続ピンがなくなり、近所の時計店に駆け込んだことがある。中国人店主は「おお成功」だ、と感嘆の声をあげ、良い時計だと褒めてくれた。セイコーは「成功」ではなく「精工」ではなかろうかと思ったが、私の中国語では通じないだろうと思い黙っていた(笑)

私の感想では、セイコーは中国でブランドを築いていたと思っていた。
しかし満足のゆく業績ではなかったのだろう。外部から吉村等氏がトップとして招聘された。
記事を要約すると、吉村氏の改革は次のようになる。

組織のコミュニケーション量を上げる。

 毎朝上司から挨拶をする、程度の改革ではない。部門の数を減らし部門間のコミュニケーションを少なくした。蛸壺型組織が多い中国では部門の壁が部門間のコミュニケーションの障害となる。逆説的な方法に見えるが、現実的な対策かもしれない。

強いプロダクトを持ち、フォーカスする。

 技術的に真似できない強さ。これは多くの日系企業が持っていると思う。そして市場で売れる強さ。吉村氏はデザイン、機能、価格帯でオンリーワンのポジションを見つけ、そこにフォーカスしている。

利害関係者を巻き込む。

 中国ではECマーケットが急速に成長している。ECマーケットで成功するのはプラットホームを提供している企業を喜ばせること。そのようなコンテンツをどんどん上げてゆけば、プラットホーム企業は集客のためにより目立つようにしてくれるという。いわゆる「Win-Win」の関係を作る。具体的には時計職人を紹介する動画コンテンツをあげると、アクセスが増える。アクセスが増えるとプラットホーム企業は喜び、よりアクセスが集まるところにコンテンツを置いてもらえる。

過去の成功事例は成功事例ではない。

 一般的に言えば過去の失敗事例を防ぎ、過去の成功事例を再生することが、成長への道のように思える。確かに失敗事例は、方程式化することにより再発を防止することができる。しかし過去の成功事例は、足かせとなることの方が多い。それは成功事例が成り立つ要因が時間とともに変化してしまうためだと考えている。つまり昨日の成功事例を方程式化できても、今日は適用できなくなってしまうということだ。

スピード

 前項の事例で説明したのと同様に、昨日の戦略は明日も使えるかどうか不明だ。むしろ昨日の戦略は明日には使えないと考え、今日中に行動する、その方がうまくゆく確率が上がるだろう。
吉村氏は11月11日(光棍節。本来独身者の日であったが、なぜかネット特売の日になっている)ならば今(8月)の戦略が通用するだろうが、春節には別のことを考えなくてはならない、と言っている。

いかがだろうか?
100年とは言わずとも、あなたの会社が10年20年後も中国で戦えるように、信頼される企業になるヒントとなっただろうか?


このコラムは、2017年9月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第557号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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整理の定義

 先週のコラムでは、定義をすることが重要であると書いた。
そしてあなたの会社では5Sの「整理」が定義出来ているだろうか、と問題提起した。

5Sは元々日本で考え出された工場管理の方法であるが、いまや中国でも日系企業ばかりではなく、中華系企業も盛んに5Sの標語を掲示してある。

しかし何か違和感を感じている。日系の工場も含めて「見せ掛けの5S」になっているように思える。

本来5Sとは生産性改善、品質改善の基本であって、モノ造りだけではなく全ての会社に適用可能である。5Sの目的は「儲かること」でなければならないと考えている。

「明日お客様がいらっしゃるから5Sを徹底するように」と発破をかけること自体が5Sの本当の意味を理解していないことだといえる。

5Sにおける整理の定義は、
「要るモノと要らないモノを区別して、要らないモノを捨てる」
と言う事になっている。

そして、先週のコラムに書いた様に定義には目的と方法論が入っているべきだ。
しかし5Sの定義は方法論だけになっている。
Howはあるが、Whyがない。まだ片手落ちだ。

何のために(目的)整理をするのだろうか?

要らないモノを捨てて、有効スペースを増やす。
有効スペースが増えれば、単位面積当たりの生産性があがる。

要らないモノを捨てて、作業スペースを増やす。
作業スペースが増えれば、不良リスクが減る、作業性が改善できる。

今必要ない製品在庫や、中間在庫を捨てて、キャッシュフローを改善する。
外部に倉庫を借りていれば、倉庫の賃料を節約できる。

整理の目的は、一言で言ってしまえば「業績改善・貢献」だ。
しかしこれでは、定義が不明確となり解釈にバラツキが出る可能性がある。一つずつ丁寧に「有効スペースを増やすため」「作業スペースを増やすため」「キャッシュフローを改善するため」と目的を定義に入れた方が良いだろう。

このように定義すれば「整理」と言った時に何をどんな風にすべきか明確になるだろう。


このコラムは、2012年2月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第243号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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改善の定義

 定義をすると言うことは重要であるが、意外と疎かにされているのではないだろうか。

例えば5Sの定義は出来ているだろうか?
整理・整頓・清掃・清潔・躾け、全て言葉として理解できる。
しかし5Sで整理と言った時に、何のために何をどうすればよいのかは、言葉の理解とは別ものだ。
全員が、整理とは何のために何をどうしなければならないのか、理解できるようにするのが定義だ。

空間の2点を決定すれば、直線は唯一つに定義できる。
同様に目的(何のために)と方法論(何をどうする)の2点を決定しておけば、モノゴトは定義が出来るはずだ。

では「改善」はどのように定義をしたら良いか?

改善の目的と方法論は、
目的:仕事の期待成果を効率的に達成する。
方法論:仕事のやり方を選択または変更する。
となるだろう。

つまり改善を定義すると、以下の様になる。
「仕事の期待成果を効率的に達成するために、仕事のやり方を選択または変更すること」

従って改善とは仕事そのものである。

「日々の生産・出荷に終われて、改善の時間が無い」と言うのは言い訳に聞こえる。時間がないから仕事をしないと言う理屈はありえない。

しかし、優先順位があるのも事実だ。まずは出荷をしなければ、改善をしても意味はない。

問題は、改善と言う課題に対して、時間と言うリソースが不足している。
このような問題を解決することが「経営」だ。

必ずしもこういう問題を放置しているわけではないと思う。
しかし有効な解決策を見出していない状態は、ただ悩んでいるだけと同じだ。
このような状態が続けば、近い将来出荷さえままならなくなるだろう。

時間リソースは一人ひとり有限だ。しかし借りてくることは出来る。借りてきた時間で改善をする。改善できた時間で更に改善する。
このようにして、組織の中に改善文化を築けば、強い競争力を手に入れることが出来る。
このような決断をすることが「経営」と言うことだろう。


このコラムは、2012年1月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第242号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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QCC活動

 私は幾分ヘソが曲がっている様で(大いにヘソが曲がっていると言う知人は多いが)大学院を卒業後、従業員30人程度の会社に就職した。コンサル会社ではない。製造業だ。開発型のファブレス企業でもない。製造部門の作業員も入れて30人の立派な零細企業だ(笑)

そこから突然1部上場企業に転職した。最初に配属された製品開発部署の課員が30人以上いた。

零細企業では、今日の飯の種を設計する(設計期間1週間なんて当たり前)。しかし転職先では1年後、2年後に商品化する製品の設計をしている。大いに規模の格差を実感した。更にカルチャーショックを受けたのは「QCC活動」だ。実際の開発業務とは別のテーマをサークルごとに自由に取り組むことが出来るのに大いに感激した。長期にわたる開発プロジェクトの合間に、短期間で完結出来るテーマに取り組むことが、気分転換にもなっていた。

自分自身の意志とは逆に、社内のQCC活動が徐々に形骸化して行った。
そんな折に、品質部門を担当することになり、活動する側から指導する側に立場が変わり、どうすれば再び活発になるかを考えた。そのお陰で、事業部の代表サークルが社内の成果発表会で好成績を取れる様になった。

独立後、中国工場の指導でも顧客の現場リーダ、管理者でチームを作りQCC的に改善をするスタイルでやっている。

QCCスタイルで活動することにより、自主性や協調性を養う、改善手法や取り組み方を実体験を通して教えることができる。この方法により、契約期間が終了した後も、顧客社内で改善が継続する様になる。

日本のQCC活動と少し違っているのは、テーマを経営幹部とサークルメンバーが一緒に選定するところだ。ボトムアップでも、トップダウンでもなく、トップ・ボトム協調型と言えば良いだろうか。活動テーマ選定に関しては、サークルの自主性を損なわない様にトップが関与するスタイルだ。その後の活動はメンバーの自主活動となる。

これにより、経営層が狙いたい成果と、メンバーの自主性、改善能力向上を目指すことができる。


このコラムは、2015年6月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第430号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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