月別アーカイブ: 2020年12月

続・現場改善

 先週のメルマガで「部品の組み付け作業が時間がかかる」という問題に対しQCサークル手法で改善に取り組み始めたと、コラムに書いた。

現場改善(先週のコラム)

作業は、パスの前後の車軸をフレームに組み込む作業だ。製造,設計、生産技術、品証のメンバーでチームを作り,現状把握をした。

現状把握結果
前部調整時間:68分
後部調整時間:62分
合計調整時間:130分

作業を観察した結果、調整後の前後左右のホイールアライメントの測定結果が基準ないに入らないと再調整が必要になる。現状把握時には6回再調整・測定を行った。従って調整を1回で済ませる事が出来れば、調整時間を減らす事が出来る。

改善目標を調整時間130分→55分とした。

彼らは現状把握に際し、エース級のベテラン工員を投入した。実は現状把握の130分は、過去の実績より半分近く短い時間だった。作業員の経験や能力に回数が決まるという事だ。改善方法は、人に依存しない方法としなければなない。

QCC活動指導者としては、従来の作業時間を基準に改善目標を設定したい所であった(笑)

時間がかかるという抽象的な問題を、調整を1回で済ませる、と言う課題に置き換えることにより、対策のアイディアが簡単に出る様になる。現状把握の翌日には即対策実施となった。

対策の効果確認結果:
前部調整時間:32分
後部調整時間:15分
合計調整時間:47分

目標超過達成、64%短縮。
一発調整は達成出来なかったが、調整時間は約1/3になった。
次の取り組みは、一発調整、更に無調整化が出来れば一段高いレベルとなる。

実はこの活動は、指導日程の都合で対策検討、対策実施はサークルメンバーだけで行った。自分たちだけでここまで出来たというのは、メンバーにとって大いに自信となっただろう。


このコラムは、2016年11月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第504号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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統計的思考

 私の世代は、高校3年の時に数学で統計と確率を勉強した。全員ではなく、理系クラスだけだった。大学に進学して電子工学を勉強したが統計確立理論とその応用は、夏期集中講座があっただけだ。それらの教育を受けて、統計確率理論を応用する統計的思考が身に付いたとは言い難い。工学部にいた時でさえ、どのように応用出来るかよく理解できず、単位取得が最重要目的だった(笑)

就職して、回路設計エンジニアとして仕事を始めた。製品の精度を決める回路部品の精度を決定する際に、部品の最大値・最小値を使って計算していた。最大値・最小値で設計すると、必要以上に高精度の部品を使うことになっているのでは?と言う疑問があり、当時普及し始めたPCでプログラムを組み、シミュレーションで証明しようとしたことがある。

それを見た先輩が見かねて、「バラツキ」について教えてくれた。
今思い出せば「大数の法則」を分かり易く教えてもらった。これが私にとって最初の実践的統計思考との出会いだった。

その後、品質保証の仕事をすることになり、40代にして統計確率理論を再勉強した。この時に身につけた統計的思考が今でも役に立っている。

統計数字は、身近な所にもある。
例えばTV番組の視聴率。先週のニュース番組の視聴率は20.2%だった、と言う会話がよく出て来る。ほとんどの人は、自分がどの番組を見ていたかを報告した記憶は無いはずだ。放送局の方も、今何人の人が番組を見ているかを知る方法はない。視聴率は、無作為に選ばれた家庭をサンプルとして、全体(日本の視聴者)を統計的に計算し推定している。本来視聴率は幅を持っている。

こういう統計的思考法は、品質管理に大いに役に立つ。
例えば、工場で生産した製品は全て全く同じに出来ている訳ではない。バラツキがある。生産したモノを全て計測出来れば、そのバラツキの範囲を知ることができ、製品規格の範囲に入っているかどうか検証出来る。しかし、計測にコストがかかる。または計測をすると出荷出来なくなる場合もあり得る。製品強度とか、アンプルに入った薬液の量などは、計測が破壊試験となるため、全数検査は出来ない。サンプルの計測により、全体を推定する統計手法が必要になる。

製品のバラツキを減らす工程改善をした。改善の前後のデータから、改善の効果があるのかないのか、こういう判断をするのを「検定」と言っている。

実は統計的思考は、ギャンブルにも応用可能だ。
長・半ばくちをする場合、10回やれば5回は偶数が出る、こう考えるのは平均値だけを考えているのと同じだ。統計的思考を使えば、10回の内8回長の目が出るのは、偶然のバラツキなのか、イカサマなのか判断出来る。

外貨投資に出て来るボリンジャーバンドは、過去の値動きのバラツキを示している。例えば2σのボリンジャーバンドを越えるのは、過去のバラツキから判断すると、2.3%となる。

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竹槍の戦い


このコラムは、2012年12月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第287号に掲載した記事です。

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統計データ

 3月12日付けの朝日新聞に原真人論説委員が、有効求人倍率の上昇に対して「生産年齢人口が480万人減少しているのだから有効求人倍率が上昇しているのであり、アベノミクス効果ではない」という記事を書いていた。

たとえば有効求人倍率が代表的である。倍率がバブル期超えの高さとなったことを、首相は「アベノミクスの成果」と誇ってきた。それが何度も繰り返されるうちに、国民の意識に「アベノミクスは成功」とすり込まれていく。

首相の説明には直近6年間で生産年齢人口(15~64歳)が480万人減ったという事実は、いっさい出てこない。それこそ雇用統計が好転している主因なのに、でる。
全文

朝日新聞「波聞風問」より

有効求人倍率の上昇が景気回復の効果であるという政府見解に対して、統計データを元に反論を展開した記事だ。分母になる生産年齢人口が減っているのだから、分子の求人数が変わらなくとも、その答えは上昇するというわけだ。多くの人がもっともな意見だと感じたのではなかろうか?

世論と違った視点を提供するのは、ジャーナリストの姿勢として間違ったものではないだろう。しかし正しく統計データを見なければ、間違った答えを導くことになる。

有効求人倍率の分母は生産年齢人口ではなく、有効求職者数だ。
したがって有効求人倍率は(有効求人数)÷(有効求職者数)であり、有効求人数が増加すれば求人倍率は大きくなる。当然有効求職者数が減少しても求人倍率は大きくなる。景気が悪く諦めてしまった人たちが求職活動を止めてしまったのなら別だが、働き口が見つかって求職活動をする人が減っていると解釈する方が正しそうだ。

恣意的に統計データを使えば、世論を間違った方向に導くことになる。
経済記者である原真人論説委員が有効求人倍率の定義を知らなかったとは思えないのだが。

世の中にはこの手の「ウソ」が結構見られる。
相関関係があるだけなのに、それをあたかも因果関係のように見せかける。
例えばバスケット選手は背が高い、というのは相関関係があるだけで、因果関係があるわけではない。このウソは簡単にみやぶれる。
「背が高い人がバスケットをやる」
「バスケットをやると背が高くなる」
文章をひっくり返すとすぐにわかる。


このコラムは、2019年4月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第804号に掲載した記事に加筆しました。

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刑罰中らざれば、則ち民手足を措く所無し

yuē:“wèijūn(1)dàiérwéizhèngjiāng(2)xiān?”

yuē:“zhèngmíng(3) 。” yuē:“yǒushìzāizhī(4)zhèng。”

yuē:“zāiyóujūnsuǒzhīgàiquē(5)míngzhèngyánshùnyánshùnshìchéngshìchéngyuèxīngyuèxīngxíngzhòng(6)xíngzhòngmínsuǒcuòshǒujūnmíngzhīyányánzhīxíngjūnyánsuǒgǒu(7)ér。”

《论语》子路第十三-3

(1)卫君:衛の32代君主。衛霊公の孫
(2)奚:什么。何を
(3)正名:身分、地位を正す
(4)迂:まわり遠いこと
(5)阙:疑わしい
(6)中:適切な
(7)苟:马马虎虎。いい加減な

素読文:

子路しろいわく、衛君えいくんちてまつりごとさば、まさなにをかさきにせんとする。

いわく、かならずやたださんか。
子路しろいわく、これるかな、なるや。なんたださん。

いわく、なるかなゆうや。くんらざるところいて、けだ闕如けつじょたり。ただしからざれば、すなわげんしたがわず。げんしたがわざれば、ことらず。ことらざれば、すなわ礼楽れいがくおこらず。礼楽れいがくおこらざれば、すなわ刑罰けいばつあたらず。刑罰けいばつあたらざれば、すなわたみ手足しゅそくところし。ゆえくんこれづくれば、かならうべきなり。これえばかならおこなうべきなり。くんげんいて、いやしくもするところきのみ。

解釈:
子路曰く「もし衛君が師を迎え政治を委ねられることになったら、師はまず何をなさいますか」

子曰く「先ず名分を正そう」
子路曰く「そうされますか。それでは回りくどくなないでしょうか。名分など正すことに意味があるでしょうか」

子曰く「由(子路のこと)よ、お前は乱暴だな。君子は自分の知らないことについては、謙虚であるものだ。そもそも名分が正しくないと論理がずれる。論理がずれると事は成し遂げられない。事が成し遂げられなければ礼楽が興らない。礼楽が興らないと刑罰が適正とならない。刑罰が適正でないと人民はどうしたら良いか迷うようになる。だから君子は必ずまず名分を正す必要がある。君子は、名分の立たないことを口にすべきでなく、口にしたことは必ずそれを実行にうつさなければならない。いい加減な口をきくような人は、断じて君子とはいえないのだ」

孔子は「刑罰中らざれば、則ち民手足を措く所無し」と言っています。「煽り運転」に対して法改正が行われ厳罰化されましたが、相変わらずニュースでは煽り運転のニュースを目にします。現代の日本人には2500年前の孔子の言葉が届いていないようです。

竹槍の戦い

 顧客企業の技術部門を指導している。技術的な解決課題を挙げてもらった。
10項目の課題が上がった。そのほとんどは彼らの固有技術で解決可能な課題だ。
それぞれの課題は製造部門の努力でなんとかしのいでいる状態であった。そのため生産効率が上がらないでいる。

一般的に言って、私自身がそうであった様に(笑)設計者という人種は新しいモノ好きで、過去に設計した製品のメンテナンス(設計改善)を嫌がる傾向がある。そこをなだめて、今製造が困っている課題を設計の力で解決するというテーマに取り組んで貰っている。(彼らを納得して動かすコツがある・笑)

ほとんどの課題は1ヶ月以内にほぼ解決しており、改善の効果確認待ち状態となった。これで製造部門は相当生産性が上がるはずだ。設計者が見積もった改善効果は、かなり過小評価してあった。意外にも、彼らは遠慮がちだ(笑)

しかし1点だけ、プレス部品の不良が解決の見込みが立っていない。
このプレス部品は、深絞り加工で加工時に亀裂が入ってしまう。不良が大量にあり溶接で亀裂をつなぎ研磨をしてなんとか形状を出している状態だ。強度が必要な部分ではない。外観意匠を保つために後の工程でも追加工が必要になっている。この加工は彼らにも技術はなく、ベンダーに加工してもらっている。しかもベンダーにも技術がなく、亀裂が入っており明らかに不良でも納入して来る。

そのような状態なので、ベンダーとともに改善をしようにも手探り状態だ。
手当り次第に良いと思われる方法を試して一喜一憂している。いきなり金型を修正してみて、不良が半分になってたと報告して来た。半分になったと言っても、サンプルが少ないので有意差は認められない。
まさに「竹槍の戦い」状態だ。

統計的に評価をするアプローチを教え、不良が発生する要因を全て挙げる様に宿題を出して今回の指導を終えた。プレス加工に関しては私も素人同然だ。しかし問題解決のための管理技術は分かる。次回は彼らの検討をどう確かめ、不良を減らすかというステップに入る。相当困難が予測される。万が一好ましい効果が上がらなくても、この経験はきっと彼らの成長につながるはずだ。竹槍だけではなく、管理技術という新しい武器を実装する事が出来る。

久しぶりに骨のある課題と取り組んでいる。


このコラムは、2016年9月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第493号に掲載した記事です。

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統計思考力

 以前「統計学が最強の学問である」という本を空港の書店で発見し、一気に読んだ。

「統計学が最強の学問である」西内 啓著

先週末は「統計思考力」という本をBOOK OFFで見つけ即買いした(笑)

不透明な時代を見抜く「統計思考力」神永 正博著

どちらも数式を使わずに、統計学の意味を伝えようという趣旨で書かれている。

私は製造現場で統計学を応用できる様に指導をしている。
統計学の意味を理解するだけではなく、実際に活用しなければならない。
しかし私も、極力数式を使わない様にしている。
数式はExcelが勝手に計算してくれるので、その意味を理解してもらう様にしている。数式で説明してしまった方が簡単だが、その数式を見て理解するにはある程度の素養が必要となる。

そんな訳で、この二人の著者の努力には大いに共感できる。

私の場合は現場で応用するという必然性がある人に教えているので、彼らより楽だろうと思う。統計理論や確立理論となじみのない人に対して、統計学に興味を持ってもらう様に書かねばならない。このつかみがなければ、本は手にとられない。

神永氏は「ゆとり世代は学力が低い」は本当か?という問いでつかみに成功している様に思う。少なくとも「統計力」などというマニアックな分野で出版し、文庫化を果たし
ている。多分多くの人がこの本を手にしたのだろう。

じっくりこの本を分析し、どうしたら数学に興味がない人をこちらの世界に引き込めるか研究したい(笑)


このコラムは、2015年10月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第445号に掲載した記事です。

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「うそには3種類。うそ、大うそ、そして統計」中国の信頼性に疑問

 経済規模で世界一に上り詰める勢いの中国。だが、同国の経済関連統計の信頼性には相変わらず疑問が付きまとう。

 事前予想と大きくかけ離れた中国の月次貿易統計に今年、エコノミストらが異議を唱えた。3週間ほど前には、景気の先行きを示す指標のひとつ、製造業購買担当者景気指数(PMI)で、中国国家統計局と金融機関の数字が正反対の内容を示した。さらに、インフレ率の計算方法についても疑問が投げ掛けられている。

 中国の統計の信頼性については、ほかならぬ李克強首相がかつて疑問を呈したことがある。内部告発サイト「ウィキリークス」が10年に公開した米外交公電によると、今年3月に首相に就任した李氏は、遼寧省で党委書記を務めていた07年、当時の駐中米国大使に、中国の一部の統計は「人為的なもの」で信頼できないと話した。

 米外交公電によれば、李氏は遼寧省の経済動向を判断する際に注目するのは電力消費、鉄道貨物取扱量、銀行融資の3つだけで、「他の統計、特に国内総生産(GDP)は参考にする程度だ」と笑いながら話したという。

■データ粉飾の強い動機

 統計上では中国の経済規模は10年に日本を抜いて世界2位となった。アナリストらは、米国が100年以上守ってきた世界首位の座を中国に奪われるのも時間の問題だとみている。

 北京大学の教授(財政学)で、米シンクタンク、カーネギー国際平和財団の上席研究員でもあるマイケル・ペティス氏は、中国が統計を集計するスピードについて、経済規模がはるかに小さいフランスよりもずっと速いと指摘。フランスの統計は中国の統計に比べて質がかなり高いとされている。

 中国についてのコンサルタント会社の代表で、在中国日本大使館経済部参事官を務めた経歴も持つ津上俊哉氏によると、中国の地方政府トップの評価は主に実績に基づいて行われる。地方の経済をどの程度、発展させたかという点が最も重視され、発展の度合いの指標とされるのがGDPだという。津上氏は「地方政府のトップは昇進のため、GDPを増加させようと過酷な競争を繰り広げている。彼らは統計も扱うため、データ粉飾の強い動機が生まれる」と説明した。

■公式GDPは実態より大きい?

 中国の地方政府が発表するGDPの合計が、国全体のGDPを大きく上回ることはよく知られている。

 中国のGDP成長率は公式統計で11年が9.3%、12年が7.8%とされているが、英銀スタンダード・チャータードのエコノミスト、スティーブン・グリーン氏は今年発表したレポートの中で、同じ年の中国のGDP成長率をそれぞれ公式統計を大きく下回る7.2%、5.5%と算出した。

 北京大学のHSBCビジネススクールで教えているクリストファー・ボールディング氏は今月発表した論文で、歪められた消費者物価指数(特に住宅関連)は、中国の経済規模を実態よりもかなり大きくみせていると論評した。

 英ロンドンのキャピタル・エコノミクスの中国エコノミスト、ワン・チンウェイ氏はAFPに、「データが信頼できるものでなければ、どんな政策や改革の意思決定も間違ったものになるだろう」と述べた。

(AFP BBNewsより)

 統計がウソであると言う論調には肯首し難いものがある。統計が不正確(もしくは恣意的に操作がある)、もしくは統計を使ってウソをつくと言うのはあり得るが、統計そのものがウソだと言う事はない。

中国の経済指標に対し、世界中のエコノミストから疑問符を投げかけられているのは、上記の統計データが不正確だ、と言う事だ。しかもその不正確さは恣意的なものがある、と言う疑惑をもたれている。(公開の秘密と言ってよいレベルだと思うが・笑)

中国の場合は、国家経営が事業部制の会社の様になっており、各省長は業績により評価され、中央からの考課・査定が決定する。
中国のソーシャル・クライマー(社会登山家?笑)たちは、人民の幸福よりは共産党内での自分の地位に関心がある。粉飾決算まがいの事が行われていても不思議ではなかろう。

日本でも少し大きな会社では、似た様な事が発生しているだろう。
もっとも本当にウソをついてしまえば、背任行為になるので、仕入れ先に支払い延期のお願いをしたりする。利益が出ている様に見えれば、来期の予算割当が増え、事業部の経営自由度が増える。こんな事情で、経営データが操作される。
その結果、期末を高収益で終わっても、期初の四半期は大赤字なんて事を繰り返すことになる。

李首相は、経営判断の指標として電力消費、鉄道貨物取扱量、銀行融資の3つを使っていたそうだ。最終的には、総収入から総支出を差し引いた利益で判断すれば良いのだが、たいていの場合タイムラグがあり、リアルタイムに判断する材料にするのは難しい。業績の「代用特性」として電力消費、鉄道貨物、銀行融資を使う、と言う事だ。

この代用特性が間違っていると、経営はあらぬ方向に行く。
例えば売上額を、業績の代用特性にすると、売り上げを確保するために値引きをする。売り易い商品を、原価率に関係なく拡販する。と言うことになる。

同様に、長期的指標、短期的指標の違いも重要だ。
短期売り上げを重視すれば、無理な販売をすることになり、顧客は疲弊する。そして、顧客の生涯売上額を減らすことになる。その結果,新規顧客開拓に多額の経費が必要となり、収益体質が悪くなる。

ところで、正しい統計データであっても、嘘をつく事は可能だ。
データのバラツキを無視してデータを恣意的に分析する、と言うのがよくある手口(笑)だ。

例えば、既に2,3年生産している製品でも工程内不良率は,生産のたびに変動する。特に問題が発生していなくても、毎回同じ工程内不良率と言う事はまれだ。平均工程内不良率が0.9%、今回生産の工程内不良率が0.8%だったとき、これがバラツキによるモノか、不良率が改善したのかは判断出来ない。統計的に検証する必要がある。
不良率の実力は0.9%ではなく、0.9%±○%と表現しなければならない。

テレビの視聴率も同様だ。
視聴率の算出は、全世帯で計測している訳ではない。モニターとなっている世帯に取り付けられた機械で計測する。いわゆるサンプリング調査だ。サンプル数は関東一円で300世帯だそうだ。従って発表される視聴率には大きな誤差が含まれることになる。
視聴率のコンマ何%の上下で一喜一憂する事は、意味がない。


このコラムは、2013年8月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第324号に掲載した記事です。

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統計手法

 先週は、ネジを作っている工場を訪問した。改善アドバイスをした後に、困っているコトありますか?と聞いてみたら意外な質問が来た。

ネジを生産している人たちは、生産を数量では管理していない。重量で管理している。一方顧客の方は、数量で発注をする。当然顧客側は、部品表に指定してあるとおりに、ベンダーに注文するわけだから、ネジを1kg発注することはない。1000本と発注する。

しかしネジの工場では、本数を数えていては、梱包作業に時間がかかりすぎる。したがって、重さで本数を管理している。つまり1本のネジの重さを量り、1000倍した重さで、1000本のネジを梱包する。

バネ、リベットなど小さな部品は、同様な管理をしている工場は多いだろう。

ところがこの方法で出荷すると、顧客から本数が足りないとクレームが来るそうだ。顧客がわざわざ受け入れ検査で、ネジの納入本数を検査しているとは考え辛いが、そのようなクレームがあるという。

やむを得ず、何個か追加して出荷しているが、小さなネジの場合なかなかクレームがなくならないそうだ。どうすれば良いかと聞かれた。

こういう時にこそ統計的なモノの考え方をすればよい。

通常出荷する時に、出荷ロットの山から、1本製品を取り電子秤に乗せる。重量を測定した後、出荷個数を入力すれば、一袋に詰めるべき重量が自動的に電子秤に表示される。その重さになるように、袋詰めする。
これが通常の作業方法だろう。

これを統計的に考えてみる。
ネジは皆同じ重さではない。ある範囲でばらついているはずだ。たまたま秤に乗せた1本が、そのバラツキの軽い方のネジだったら、出荷重量規格は小さめに設定されてしまう。ネジの重量バラツキが1本分の1/1000だとしても、梱包単位が1000本だとすれ
ば、その影響は無視できなくなってくる。

したがって、この問題を解決するには、統計的アプローチを取る必要がある。

生産ロットごとに、ネジ重量の平均値、ばらつきは変化するはずだから、生産ロットごとに、梱包の重量規格を変える必要がある。

生産ロットごとにサンプルを抜き取り、そのサンプルデータから平均値、標準偏差を計算する。この値をその生産ロット全体の、平均値、標準偏差の推定値とする。

検査規格を、(平均値+3×標準偏差)×梱包個数
とすれば、梱包個数未満の袋が発生する確率は、0.15%以下となる。
もしも0.15%もクレームが来ては困る、と言う方は、
検査規格を、(平均値+4×標準偏差)×梱包個数
としていただけば良い。これならば梱包個数未満の袋は30ppmしか発生しない。100万回梱包して30回だけだ。

納入本数が足りないと言うクレームに対し、むやみに余分に出荷する、または、自動機で個数をカウントする、という対策を取れば、コスト上昇を招き、利益は減る。

自動機で個数をカウントすれば、正確になるが、設備投資が必要になり、計数時間は秤を使う方式よりは、遅くなる。

統計的手法を使えば、梱包数量が少ない不良を、統計的に少なくすることになる。本来の梱包数量より若干余分に梱包する可能性があるが、全て作業員が数えたり、自動カウンタを導入するよりははるかに安いだろう。


このコラムは、2012年11月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第284号に掲載した記事です。

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