スマイルカーブ・再び


 しばしば引き合いに出されるスマイルカーブは、我々製造業に携わる者には笑っていられない話だ。
スマイルカーブとは、笑っている口を模したカーブだ。真ん中が一番低くなり、左右に行くほど上に上昇するカーブとなる。数式で書けば、y=ax^2(a>0)と説明すればお分かりいただけるだろうか。

このカーブの縦の軸(y軸)は、付加価値を表し、上に行けば付加価値が高く下に行けば付加価値が低い。カーブの一番低いところ(x=0)が製造業、左右のカーブが上がっているところ(付加価値が高いところ)は、開発とかサービスだという訳だ。

実に失礼な理論である(笑)
しかし製造業が下請け的な位置にいる限り、当たらずと言えど遠からずだろう。

大手企業ならいざ知らず、中小・零細企業に開発なんて無理だ。
製造業で頑張っているのに、サービスなんてどうすりゃ良いの?
という声が聞こえて来る。

ちょっと考えていただきたい。

私たちが生産したモノをお客様に買っていただくと考えれば、サービスという発想は出ない。しかしお客様に部品を供給することにより、お客様の生産をサポートするのが自分たちの仕事だ、と定義してみたらどうだろう。
お客様の工程で自分たちの製品がどのように使われるのかを調べて、梱包形態や出荷形態をそれに合わせる。これは立派なサービスと言えるだろう。

部品製造業でも研究開発は出来る。
造り方の工夫によりコストを1/10に出来るのは製造業だけだ。流通、サービス、飲食などの業界でコストを1/10にしたら製品やサービス自体が成り立たない。
お客様からいただいた図面でそのままで生産していては、いつまで経っても下請けだ。そこに自社のノウハウを入れて、提案が出来る様にする。
こういう事が、部品製造業の研究開発だと考えている。

プレス加工で注射針を造ってしまう、などというすごいことができなくても、自分たちが持っている技術を応用したらどんなことができるのか検討する。こういう事に時間を使えば、新しいモノが出来るだろう。
ほとんどの人が最初の一歩も踏み出さずに、諦めている。これでは失敗をする心配はないが、何も得られるモノはない。

まずはやると決める事だ。
売り上げの5%は、研究開発に使うと決める。5%がムリなら1%でも良い。
そんな金額で何が出来るか、と嘆く事はない。同じ様な志を持つ異業種の仲間と交流するだけでも良いだろう。同業者には常識でも、異業種にとってみれば新鮮な発想となる事はいくらでもある。そういう仲間と、夢を語り合うことで何かの化学反応が発生するだろう。こういう交流に使う予算ならば、10万円も有れば十分だ(笑)いずれにせよ、異なる者同士の交わりから何かのチャンスが生まれる可能性は十分にある。

大手一流企業がやる研究開発は、自前垂直統合型だが、中小・零細企業が取り組む研究開発は、水平分業型で進めるのが良かろう。

東大阪の人工衛星プロジェクトの様な、ワクワクする仕事が出来らた最高だ。
参加している人たちの口元が皆スマイルカーブになるだろう。

以前も「スマイルカーブ」と言うタイトルでコラムを書いた。
こちらもご参照いただきたい。


このコラムは、2013年1月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第293号に掲載した記事を加筆修正したものです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】