ボランティアのモチベーション


 先週のメールマガジンに引き続き動機付け(モチベーション)の話だ。
先週土曜日に東莞泗安村に有るハンセン氏病患者快復村を訪問して来た。ハンセン氏病が不治の伝染病と信じられていた頃、世界各国で隔離政策が執られた。中国でも同様に、ハンセン氏病患者は強制的に家族から引き離され、辺鄙な場所に隔離された。家族からも見放され、後遺症により手足を失う失明するなど、隔離された人々の絶望を想像すると胸が痛む。

泗安村は東莞の西端、河の中の中州に有る。今でこそ橋が架かり、往来が可能になったが、外界から隔離された場所にあった。

元患者達を支援するボランティア団体『家(JIA)』を運営しているのが、原田燎太郎さんだ。原田燎太郎さんの活動は以前のメルマガでもご紹介した。

「世界を変える」

中国人ボランティアの活動源泉となるモチベーションはどこから来るのか、それを現場で実際に確認したくて、「家」の1日スタディツアーに参加した。

案内してくれた若者は、二人とも大学生の時に「家」の活動に参加している。卒業後、公益団体の様な所に就職し、泗安の快復村に住み込んで働いている。大学を卒業すれば、もっと華やかな職場で、もっと給料の良い仕事に就けたと思えるが、彼らはこの仕事が使命だと思っているのだろう。とても輝いて見えた。

男性の方は、流暢な日本語を話す。名古屋から来るボランティアの中に美人の女子大生がいるから一生懸命日本語を勉強したのだと、原田さんが耳打ちしてくれた(笑)
もう一人は、終始笑顔の女性だ。私も広東語を勉強しようと思った(笑)
彼女は、元患者の生活を記録する為に、聞き取り調査をしたり、全国の快復村を訪問する調査もしている様だ。

更に2人、海南島でボランティア活動をしている女子大生2人が影の様に我々の体験ツアーをサポートしてくれた。

学生ボランティアが、「家」のワークキャンプに参加してどうに変わるのか、その原動力な何かを知りたくて参加した。しかし私の心をとらえたのは、89歳の黄少寛ばあちゃんだ。黄ばあちゃんは子供の頃日本人に親を殺されたという。その後極貧の中でハンセン氏病を発症し、隔離村に連れて来られた。両足は義足で車椅子で生活をしている。両手には指がない。そんな過酷な人生を送って来たのに、見知らぬ日本人の訪問者に笑顔で話をしてくれた。

そんな彼女の話を、写真と文章で綴った『美女婆婆在泗安』と言う書籍が出版されている。書籍の売り上げは、他の隔離村の元患者に洗濯機などを贈るために使うと言う。壁には、洗濯機を筆頭に10個の目標を書いた紙が貼ってあった。決して裕福とは言えない生活をしているのに、他の元患者を支援する。

ボランティアの若者だけではなく、支援を受けている元患者もボランティア精神を発揮し始める。

私が、四川大地震の時に気が付いた「人は同じ目的・目標に共感した時に高い貢献意欲を発揮する」と言う仮説の証左がまた一つ得られた。これは支援する側だけではなく、支援されている人にもモチベーションを与えるようだ。

企業経営者にとって大きなヒントだと思う。


このコラムは、2015年8月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第435号に掲載した記事に加筆しました。

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