全日空便、パネル2度脱落 成田発着の同じ旅客機


7日から8日にかけ、成田空港を発着した全日空便の同じ旅客機から、脱出用シューターを収納する強化プラスチック製のパネル(縦60センチ、横135センチ、重さ約3キロ)が2度脱落していたことが9日、全日空への取材で分かった。

いずれも飛行中に落ちたとみられるが、見つかっていない。飛行に問題はなかった。全日空は同機を整備点検し、原因を調べている。

同社によると、脱落があった機体はボーイング767で、パネルは左主翼の付け根付近に取り付けてあった。7日夜、中国・アモイから到着後になくなっていることが判明。同じ大きさの新しいパネルを取り付けて運航したが、8日夕に中国・大連から戻った際にもなくなっていた。

アモイや大連の出発時にはパネルは脱落していなかったという。〔共同〕

日本経済新聞より

 最近旅客機による重大インシデントが続いている。ANA機のパネル落下事故を整理すると、以下の様になる。

7日、アモイ→成田便がパネル落下。
8日、大連→成田便の同機が再びパネルを落下。

パネルは強化プラスチック(FRP)製。左の主翼の付け根にある緊急脱出用スライドを収納するパネル。緊急脱出時に、高圧窒素を使ってパネルを開き格納された脱出シュータを出す様になっている。

旅客機に乗ると、離陸時に「扉をオートマティックモートにし、相互確認を行ってください」と言う乗務員向けの機内放送が毎回ある。駐機時には扉はマニュアルモードとなっており、扉を開けても脱出シュータは出ない様になっている。飛行中は、オートモードにし異常時に扉を開ければ、脱出シュータが出る様にしておく。今回の落下パネルは主翼後方のシュータ用なので、主翼上の非常口が開くとパネルを吹き飛ばす様になっているのだろう。

全日空は「非常時にパネルを外すための高圧窒素ボトルからわずかな窒素が漏れ、パネルのロックが外れた」と原因を説明している。

原因分析が正しければ、成田の整備工場での修理時に「わずかな窒素漏れ」は修理されているはずだ。翌日同じ事故が再発している。従って以下の問題があったと推測される。

  • 原因推定(又は漏れている場所の特定)が間違っていた。
  • 原因推定はあっていたが、修理が正しく出来なかった。
  • 修理後の点検も正しく行われなかった。

ところで脱出シュータの日常点検整備、修理後の点検はどう行われるのだろう。実際に脱出シュータを出す検査は「破壊検査」になるので出来ない。擬似的に検査をする事になるだろう。

航空機のメカニズムはよくわからないので、エレベータの事例で考えてみよう。
以前近隣のホテルでエレベータが最上階から地下2階まで落下し、乗客が怪我をする事故があった。新聞報道によると、21人!もエレベータに乗っており、緊急時ブレーキが機能しなかった様だ。エレベータは最大13人、1000kgの積載能力しかなく、オーバーすればブザーが鳴り扉が閉まらないはずだ。
従ってこの事故は、エレベータの牽引ワイヤの破断と積載オーバーの検出機能不全の二つが重なった事になる。
緊急ブレーキも機能しなかったが、こちらは設計仕様(定員13人、1000kg)をオーバーしており、緊急ブレーキが正常であっても事故は防げなかっただろう。

日常点検で牽引ワイヤの劣化は発見出来るはずだ。(中国における点検整備は壊れたら修理と解釈されている様だ・苦笑)
しかし積載オーバの検出機能はどの様に検査されているのだろうか?
しばしばエレベータの点検整備の現場を目撃するが、1000kgの錘りも、13人の点検作業員も見た事はない。重量センサーの出力端を操作し擬似的に検査しているのだろう。この場合重量センサーに故障があれば検出出来ない。

今回の全日空機事故も本質原因の他に、正しく検査が行われない流出原因がありそうだ。
あなたの工場で行われている設備点検に「落とし穴」がないか一度点検をしてはいかがだろう。


このコラムは、2017年10月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第571号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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