5Sは経営決断


 5S活動は何のためにやっているのだろうか?
お客様の監査があるから?
日本本社の要求?
となりの工場もやっているから?

こういう動機で5Sに取り組んでいても、あまり効果はないだろう。
こういう工場の経営者は、常に「明日はお客様の工場監査があるから5Sをしっかりする様に」とか「ウチの従業員は整理整頓が出来ていない」と言っている。

整理整頓とは、必要なモノだけが現場にあり、いつでもすぐ手に取れる状態になっている事だ。こうなっていれば、生産性が上がらないわけがない。部材や工具を取りに行く、探す、と言う行為は生産活動に対して付加価値を与えていない。実はこういう付加価値のない作業(付帯作業)は想定以上に多い。整理整頓によりこういう時間を短縮するわけだから、必ず生産性は向上する。

しかし整理整頓は現場従業員の責任だろうか?
部材や工具を使いやすい場所に必要な数だけ準備する。これが整頓だ。これは現場従業員がやらねばならない。しかし整頓がきちんと出来ていない最大の要因は、不要なモノが沢山あるからだ。

調達コストを下げるために大量発注した部材、見込みで生産した中間在庫、出荷の当てがない完成品在庫、全く使われていない設備などが生産現場を圧迫している。整頓をするためには、モノをあちこちに移動すると言うムダな作業が必要になる。

これらの「使えないモノ」「使わないモノ」「今使わないモノ」を整理するのは現場従業員の仕事ではない。一般従業員がB/S上の資産を勝手に消却出来るとは思えない。
これは経営者の経営決断だ。受注量以上に部材購入する、生産をするのと同様に、経営判断した上で経営決断をしなければならない。

5Sとは、企業の業績を上げるために経営者が行う経営決断だと考えている。一般従業員の「草の根活動」ではない。全ての従業員が同じ方向を向いて生産活動するために「躾」をするのも経営者、経営幹部の責任であるはずだ。


このコラムは、2016年8月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第489号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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