シャープ再生


 先週のキャッシュフローに引き続き、経営の失敗事例だ。鴻海からの融資金額が1000億円減額されても、日本からの融資を選ばず鴻海の買収を受け入れた。

日経新聞などは、郭台銘氏の人柄を好意的に描いたりして、日本人の反感を和らげようとしている様に感じる。確かに郭氏は、創業当時子供に飲ませるミルクを買う金もなく、奥さんは米の炊き汁を子供に飲ませて育てた。という苦労人だ。しかし基本的に彼の経営は、「騙し騙され」の謀略経営だと理解している。以前このメルマガで、知人の台湾人経営者と富士康(フォックスコン)の、騙し合いの顛末をご紹介した。郭台銘はそう言う世界で生きている人だ。

ラオックスが中国家電量販店蘇寧電器に買収されると言う衝撃から、ほどなく三洋、シャープ、東芝と日本の家電メーカが中国企業に買収されてしまった。

この失敗の原因はどこに有ったのか?その教訓をどう生かすか?と言うことが家電業界のみならず、製造業に携わっている者が考えなければならないことだと思う。いや製造業だけでなく全ての企業に言えることかも知れない。円安基調がいったん反転しそうな気配を見せている今が、日本企業が狙われる時なのかも知れない。

私には経営の失敗を分析する情報も知見もないが、自分の考えた仮説を述べてみたい。読者の皆さんも是非ご自分で考えてみていただきたい。今の世の中は報道を鵜呑みにせず、自分で考えなければ生き残れない時代だと感じている。

  • 高級指向の商品戦略
    日本国内では家電製品は飽和状態に有り、寿命買い替え需要を各社が奪い合うと言う状況だと理解している。その市場でシェアを伸ばすためには、高級指向、痒い所に手が届く便利指向に向かうことになる。万人に受けるものではなく、市場を細分化しその中で顧客の強い支持を得る。この商品戦略は正しいと思う。
  • 企業体質
    しかしニッチ戦略は、弱者の戦略であり大きな構えを持った企業は小さな市場だけでは生きて行けない。つまり鰹ならば十分生きて行ける小魚の群れでは、クジラは満腹にはならないと言うことだ。日本国内の成熟市場だけで,生き残ろうとするならば,固定費を削ぎ落とし身軽な経営体質にならなければ無理だろう。

今のマス市場は発展途上国であり、彼らの炊飯器に対する要求は、「極上の味わい」ではなく、「安くて長持ち」なのだ。この市場に対応する構えを残したまま、ニッチ戦略をするのは不可能だ。つまりマス市場は,同一規格大量生産の市場であり、固定費をかけて生産量を上げなければならない。一方のニッチ戦略は多品種少量生産の市場だ。こちらは大量生産の設備を抱えたままでは、利益が出せない。


このコラムは、2016年4月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第470号に掲載した記事です。

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