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鴻海、シャープ7000人削減示唆

 シャープを買収する予定の台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が22日、国内外で7千人規模の人員削減や海外拠点の整理をする可能性を認めた。郭台銘会長やシャープの次期社長の戴正呉・副総裁が、鴻海の株主総会やその後の会見で示唆した。シャープは雇用の維持などを条件に鴻海の傘下入りを決めていたが、その前提が崩れた。

 鴻海は同日、台湾・新北市の本社で株主総会を開いた。戴副総裁は総会後に「全世界で7千人の人員削減の可能性はあるのか」と記者団から問われ、「可能性はある」と述べた。

 7千人は、国内外で約4万4千人いるシャープの全従業員の約16%にあたる。削減の中身は公表していないが、国内では約2千人、海外では5千人前後になりそうだ。

(以下略)

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(朝日新聞電子版より)

 23日にシャープの株主総会が開催され、鴻海精密の傘下に入る事が決定している。

雇用を守ると約束したではないか、と憤慨される向きもあるだろう。しかし企業買収とはこういうものだろう。企業の価値を高めて売り払う。利益向上が唯一無二の経営目的。この様な考えに基づく企業経営が世界標準となっている。
海外企業の買収を受け入れると言う事は、この世界標準を受け入れると言う事だ。

資産がいくら有っても、受注がいくら有ってもキャッシュがなければ企業は倒産する。
特に中小・零細製造業の場合、黒字経営が出来ていても多額の受注を得ると倒産してしまう事があり得る。先に部材を購入する必要があり、製品代金の回収は後になる。資金が回せなければ借り入れをする。その行き着く先がシャープの様な事になる。技術も従業員も守れない。

もっとえげつない事をする投資会社もあるだろう。
狙い目の企業を見つける。狙い目の企業とは、部材在庫や完成品在庫を沢山抱えており、キャッシュフローが回らなくなっている会社だ。

投資をしておいて、どんどん注文を取らせる。生産のために更に資金が必要になる。ここで追加投資の約束をしておいてずるずると送らせれば、支払い資金が足りなくなり倒産する。そこで残りの株を二束三文で買いたたき経営権を奪う。既存顧客、生産設備、技術、従業員が丸ごと手に入る。

鴻海精密が同様な事を考えているとは思わないが、金の運用でもうける事しか考えていない投資会社ならば、こういう筋書きを考えるかも知れない。


このコラムは、2016年6月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第482号に掲載したコラムです。

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シャープ再生

 先週のキャッシュフローに引き続き、経営の失敗事例だ。鴻海からの融資金額が1000億円減額されても、日本からの融資を選ばず鴻海の買収を受け入れた。

日経新聞などは、郭台銘氏の人柄を好意的に描いたりして、日本人の反感を和らげようとしている様に感じる。確かに郭氏は、創業当時子供に飲ませるミルクを買う金もなく、奥さんは米の炊き汁を子供に飲ませて育てた。という苦労人だ。しかし基本的に彼の経営は、「騙し騙され」の謀略経営だと理解している。以前このメルマガで、知人の台湾人経営者と富士康(フォックスコン)の、騙し合いの顛末をご紹介した。郭台銘はそう言う世界で生きている人だ。

ラオックスが中国家電量販店蘇寧電器に買収されると言う衝撃から、ほどなく三洋、シャープ、東芝と日本の家電メーカが中国企業に買収されてしまった。

この失敗の原因はどこに有ったのか?その教訓をどう生かすか?と言うことが家電業界のみならず、製造業に携わっている者が考えなければならないことだと思う。いや製造業だけでなく全ての企業に言えることかも知れない。円安基調がいったん反転しそうな気配を見せている今が、日本企業が狙われる時なのかも知れない。

私には経営の失敗を分析する情報も知見もないが、自分の考えた仮説を述べてみたい。読者の皆さんも是非ご自分で考えてみていただきたい。今の世の中は報道を鵜呑みにせず、自分で考えなければ生き残れない時代だと感じている。

  • 高級指向の商品戦略
    日本国内では家電製品は飽和状態に有り、寿命買い替え需要を各社が奪い合うと言う状況だと理解している。その市場でシェアを伸ばすためには、高級指向、痒い所に手が届く便利指向に向かうことになる。万人に受けるものではなく、市場を細分化しその中で顧客の強い支持を得る。この商品戦略は正しいと思う。
  • 企業体質
    しかしニッチ戦略は、弱者の戦略であり大きな構えを持った企業は小さな市場だけでは生きて行けない。つまり鰹ならば十分生きて行ける小魚の群れでは、クジラは満腹にはならないと言うことだ。日本国内の成熟市場だけで,生き残ろうとするならば,固定費を削ぎ落とし身軽な経営体質にならなければ無理だろう。

今のマス市場は発展途上国であり、彼らの炊飯器に対する要求は、「極上の味わい」ではなく、「安くて長持ち」なのだ。この市場に対応する構えを残したまま、ニッチ戦略をするのは不可能だ。つまりマス市場は,同一規格大量生産の市場であり、固定費をかけて生産量を上げなければならない。一方のニッチ戦略は多品種少量生産の市場だ。こちらは大量生産の設備を抱えたままでは、利益が出せない。


このコラムは、2016年4月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第470号に掲載した記事です。

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シャープ、鴻海頼み誤算 再建、サムスンに活路

シャープ、鴻海頼み誤算 再建、サムスンに活路

 シャープは6日、韓国サムスン電子と資本提携すると正式発表した。
サムスンの日本法人を引受先とする第三者割当増資を実施し、発行済み株式の3.04%に当たる103億円の出資を受ける。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との協業で危機を脱するシナリオに狂いが生じ、財務改善と業績回復の両方につながるサムスンとの提携に活路を見いだそうとしている。

全文

(日経電子版より)

 シャープと鴻海の資本提携の合意から,既に1年経とうとしている.
670億円の資金調達で,シャープは復活のストーリィを描いただろう.しかし資本提携の発表後も株価の下落が続いた.ここで鴻海がゴネ始める(笑)

株価が下がったのだから,出資総額も下げると言う論理だ.非常に論理的・合理的な交渉だが,シャープがこの条件をのまなかった.シャープは,喉から手が出るほど資金が欲しいのが見え見えなのに,強気な交渉に見えた.逆に,出資総額が減らされては焼け石に水と言う崖っぷちなのかもしれない.そういう意味では,サムソンとの資本提携もそれほど財務改善には貢献しないのかもしれない.

台湾企業を見ていると,あの手この手の交渉術を繰り出して来る.当事者は胃の痛む思いをされているだろうが,外野から見ていると「よくもまぁ」と感心する事もしばしばだ.

以前指導していた台湾企業に対し,鴻海から資本提携の申し出があった.
その台湾企業は、鴻海傘下のEMS企業・フォックスコンに製品を供給していた.そのため鴻海は経営権を支配したかったのだろう.資本の51%に当たる金額をオファーして来た.
オーナー経営者は,その提案に合意したのだが,調印の直前に自分が経営する別の会社から資金を移動して,鴻海の出資比率が50%未満になる様にしたのだ.結局この企みが鴻海にばれて,出資の話はご破算となった.

笑話の様だが本当の話だ.

彼はビジネスはゲームだと思っているようで,何事も相手との「勝ち負け」で判断しているフシがある.以前部品納入業者に,支払いを止めたことがある.そんな事はするなと叱ったが,納入業者とのパワーバランスを考慮し,値引き交渉のために支払いを止めており「ゲームなんだから大丈夫だ」と取り合わなかった.

こういう経営では,この企業は今より大きくなる事はないだろう.多分彼一代で終わりだ.


このコラムは、2013年3月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第300号に掲載した記事に加筆しました。

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