タグ別アーカイブ: 原因調査

原因調査・再発防止

 11月8日に群馬県でヘリコプター墜落事故が発生した。
乗務員4名全員が亡くなっている。
目撃者は、機体後部から部品が落下した、と証言している。機体に何らかの異変が発生し、機体の制御が出来なくなり墜落した様だ。

航空機事故が発生すると、運輸安全委員会が調査に入り原因の分析および再発防止対策の実施をしている。運輸安全委員会とは、国土交通省管轄の組織であり以下のミッションを持っている。

  • 航空、鉄道及び船舶の事故・重大インシデントが発生した原因や、事故による被害の原因を究明。
  • 事故等の調査の結果をもとに、事故・インシデントの再発防止や事故による被害の軽減のための施策・措置を勧告。
  • 事故等の調査、再発防止、被害軽減といった運輸安全委員会の施策推進に必要な調査・研究

運輸安全委員会のホームページ

今回のヘリコプター墜落事故に関する調査は始まったばかりであり、報告書はまだ出ていないが、過去の事故・重大インシデントの報告書は公開されている。調査報告書が公開されるまで2年程の期間を要している様だ。

例えば以前このメールマガジン(2015年6月8日配信・第427号)で取り上げた、那覇空港での航空自衛隊のヘリコプターと民間機2機が絡んだ離着陸トラブルの事故報告書は公開されている。

那覇空港での航空重大インシデント調査報告書

メルマガ過去記事「空自の復唱「気づかず」 重複の可能性も 那覇管制官」

60ページ以上の運輸安全委員会報告書の書き出しはこうなっている。
“本報告書の調査は、本件航空重大インシデントに関し、運輸安全委員会設置法及び国際民間航空条約第13附属書に従い、運輸安全委員会により、航空事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。”

私たち製造業においても、不良原因調査、安全事故調査を行う機会はしばしば有る。これらの調査の目的は、不良・事故の再発防止であり、問題発生の責任追求ではない。責任追及とすれば、責任逃れ、問題の隠蔽が発生し本来の目的で有る「再発防止」は達成出来ない。

社内や顧客に提出する報告書は、運輸安全委員会の報告書の様な「大作」で有る必要はないし、2年もかけて報告書を作成したのでは改善のチャンスを失する事になる。
(運輸安全委員会の名誉のために申し添えると、対策そのものは既に実施済みで有り、原因・対策とそれに至った調査記録をまとめた報告書となっている)

私たちも運輸安全委員会の基本ポリシーに従って不良・事故調査に当たるべきだ。そして不良・事故発生の再発防止・損失軽減に対する調査・研究を推進しなければならない。

再発防止・損失軽減に対する調査・研究とは

  • 設計基準、製造方法、作業要領などを改善改訂する。
  • それらが遵守される事を確かにする。
  • これら調査・研究対象を広く社外にも求める。

と言う事になるだろう。


このコラムは、2017年11月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第589号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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続・四川航空機事故

 先週のメルマガで四川航空機の緊急着陸事故をお知らせした。概要は以下のとおり。

中国・重慶からチベット自治区ラサに向かっていた四川航空エアバスA319型機(乗客・乗員計128人)が、高度約10,000m上空を飛行中に操縦室の窓が突然、破損して脱落。副操縦士が外に吸い出されそうになり、成都・双流国際空港に緊急着陸。副操縦士と女性乗務員が軽い怪我、乗客に負傷者なし。

まだ事故原因となった窓ガラス脱落の原因は発表になっていない。先週私はメンテナンス時の問題を推定した。その後のニュースによると、事故機体は11年に同航空が導入。飛行時間はのべ1万9912時間で、落下した窓ガラス周辺を含め、最近15日間に修理した記録はなかったという。それでもメンテナンス時の作業ミスの可能性は残っているだろう。

今回再び取り上げたのは、以下のような記事を見かけたからだ。
米華字メディア『多維新聞』は以下のように指摘している。

“ネット上ではこの出来事を「中国版ハドソン川の奇跡」と称し、乗客乗員の命を守った機長に対する絶賛の嵐が吹き荒れていると紹介。そのうえで「よくよく考えると、恐ろしい。最近の飛行機は手動操縦の機会が少なくなっているからだ。もし機長に空軍での操縦経験がなかったら、大惨事になっていたかもしれない。事故の原因を究明し、四川航空の責任を追及せよとの冷静な声は、ネットユーザーの大絶賛の前に隠れてしまっている」と指摘している。”

『多維新聞』は反政府系のメディアなのだろうか(笑)
ネットでの大絶賛が、真の原因追求を阻害している。そしてそれを演出しているのが政府筋だとすると、私が期待する原因調査の公開はないのかも知れない。

しかし上記の記事には承服しかねる。
「事故の原因を究明し、四川航空の責任を追及せよ」というのが冷静な声だとしているが、事故原因がまだ判明していないのに「四川航空の責任を追及」という言葉が出てくるのが奇異だ。こういう声が冷静だとは思えない。事故原因の究明は、事故原因の責任主体を明らかにすることも含まれる。その責任主体をあらかじめ明示して事故原因究明を行う、という点に全く承服できない。

大げさに言えば「魔女狩り」だ。あいつは魔女だ、と決めて証拠を集める。
こういう手法では、有効な再発防止を考えることは不可能だ。

同様に「事故機は天津の工場で組み立てられた」という意見(真実かどうか判定できないので「意見」と表記する)も、原因分析にバイアスをかける作用を持つ。

原因分析に対して、なんら仮説を持たずに立ち向かうことはなかろう。しかしその仮説が「漏れなくダブりなく」で列挙されており、事実に基づいて採否を判断しなければならない。

私たちの製造現場で起きている問題の原因分析や、改善活動の現状把握も同様だ。予断を持って事に当たれば正しい判断や分析はできない。


このコラムは、2018年5月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第673号に掲載した記事に加筆しました。

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空自の復唱「気づかず」 重複の可能性も 那覇管制官

 沖縄県の那覇空港で航空自衛隊のヘリコプターと民間機2機が絡んだ離着陸トラブルで、離陸許可が指示されたと誤認したヘリが指示を復唱したが、管制官が「気づかなかった」と話していることが分かった。直後にヘリは離陸して民間機の離陸を妨げており、国の運輸安全委員会は交信状況を調べる。

 国土交通省によると、トラブルは3日午後1時23分ごろ、滑走路脇にいた航空自衛隊那覇基地のCH47が管制官の許可なく離陸し、滑走路上空を横切ったため、離陸滑走中だった全日空機が急ブレーキをかけて離陸を中止。さらに着陸態勢に入っていた日本トランスオーシャン航空(JTA)機に管制官が着陸やり直しを指示したが、全日空機の後方に着陸した。

 管制官は全日空機を指名して離陸許可を出し、ヘリにはその直前に待機指示を出していたが、ヘリは「全日空機に出された離陸許可を自分に出されたものだと思った」と説明していた。

 国交省関係者によると、管制塔には9人の管制官がおり、3機との交信は同じ1人が担当。管制官は、全日空機への離陸許可に対する同機からの復唱は確認したが、ヘリからの復唱は「確認していない」と説明している。一方、防衛省関係者によると、ヘリの操縦士は自機の識別番号とともに「了解。すぐに離陸する」と英語で返答。管制官から訂正を求める返答はなかったため離陸したという。

 離着陸する航空機は同じ周波数の無線で管制官と交信している。安全委は、全日空機の復唱とヘリからの復唱が重なった可能性や、全日空機との交信に集中してヘリの復唱を確認できなかった可能性などがあるとみて、交信記録を調べる。交信記録を聞いた関係者は「復唱が重なったようにも聞こえる」という。

 また、JTA機に対して管制官が着陸やり直しを指示したとき、同機はすでに滑走路の進入端から内側に入っていた可能性があることが分かった。管制官は全日空機から離陸中断の連絡を受け、直ちにJTA機に指示を出したという。JTA機のパイロットは「管制官から着陸やり直しの指示があったのは滑走路に接地した後だった」と説明している。

(朝日新聞電子版より)

 重大事故に直結する「ヒヤリハット」だ。
人為ミスによる事故と考えていたが、記事を読むと構造的な問題が有りそうな気がする。

無線通信によるコミュニケーションは、復唱が必須だが、複数の通話が同じ周波数チャネルで使用していれば、指示や復唱が干渉して伝わらない事が有る、と言うのは前提条件として考えなければならないだろう。
例えば管制官からの指示に対し、機長からの復唱と管制官からの指示取り消しが同時になると、双方の通話は聞こえない。
復唱に対し管制側からの応答が有って初めて指示が有効になる様なプロトコルが必要なのではないだろうか。

時系列を考えてみると、ANA機が離陸したのを確認する前にJTA機に着陸許可が出ている様に見える。離陸機の助走時間、着陸機の下降時間を節約せねばならない程離着陸頻度が高いのかも知れないが、安全に優先すべき効率は無い。

離着陸機の数だけを考えれば、香港空港の方が遥かに多いだろう。しかし沖縄空港は、国防の要的位置にある。自衛隊機と民間機が共用する空港であれば、有事のイレギュラーなオペレーションも有るはずだ。今回のヒヤリハットを十分に検証し、潜在要因を洗い出しておかねばならないだろう。


このコラムは、2015年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第427号に掲載した記事です。

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