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ダメな理由・良い理由

 イギリスの高等教育専門誌による2020年の「THE世界大学ランキング」によるとトップ10の大学は
1位:オックスフォード大学(英)
2位:カリフォルニア工科大学(米)
3位:ケンブリッジ大学(英)
4位:スタンフォード大学(米)
5位:マサチューセッツ大学(米)
6位:プリンストン大学(米)
7位:ハーバード大学(米)
8位:イェール大学(米)
9位:シカゴ大学(米)
10位:インペリアル・カレッジ・ロンドン(英)

トップテンは米・英の大学で占められている。

トップ200は東京大学:36位、京都大学:65位の2校のみ。
中国(7校)、韓国(6校)、香港(5校)にも差をつけられている。

日本の大学は少子化で経営が苦しいだろう。海外から留学生を呼ぼうにもこのランキングでは、優秀な学生は日本を目指さない。

なぜ日本の大学は世界的に評価が低いのか?
これがわかれば、日本の大学教育のレベルを上げることができるだろう。
では「なぜ日本の大学は世界的に評価が低いのか?」という命題に答えを見いだせるか?
「英語で授業が行われない」という理由がトップに来そうだが、これを改善するだけで解決するとも思えない。

「なぜ日本の大学は世界的に評価が低いのか?」という命題が間違っていると思える。評価が低い大学を幾つ調べてもダメな理由はわかっても何をすれば良いかわからない。

「なぜ米・英の大学の評価が高いのか?」という問いならば、参考にできる改善点が見つかるだろう。上位10校を調べるだけで参考になる点を何点も洗い出せるはずだ。

工場の生産性改善や品質改善も同様だ。
ダメな作業を観察して改善できるようになるには、相当経験が必要だ。
しかしうまくいっている作業を観察し、ダメな作業を比較すれば比較的簡単に改善できる。


このコラムは、2020年8月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1022号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

防錆塗装不良

 本日の失敗事例は「失敗百選」から選んだ。

「失敗百選」中尾政之著

ショックアブソーバに使うコイルスブリングの防錆塗装の前洗浄工程にて排水ポンプが故障。そのため新しい洗浄水が供給されず、コイルスプリングから脱落した不純物が洗浄槽に堆積。コイルスプリングに不純物が付着したまま防錆塗装。不純物付着箇所より錆が発生。腐食箇所が破断。約1000台をリコール。という事例だ。

防錆塗装完了後の目視検査を行なっていたが、コイルスプリングの上部しか検査しておらず発見できなかった。洗浄水に浮いている異物であれば、洗浄槽から引き上げるときに異物が付着するはずだ。その様な想定で上部のみ検査をしていたのだろう。しかし付着異物はコイルスプリング成型時に発生する金属粉であり、洗浄層に沈殿しておりコイルスプリングの下部に付着したようだ。

この事例から学ぶべきことを考えてみよう。

排水ポンプの故障に2ヶ月間気がつかなかったそうだ。設備点検の方法に問題があったと思われる。

外観検査基準は適切だったとは思えない。洗浄層に溜まるのはその前工程で発生する物と容易に推定できる。加工時に発生する金属粉は底に沈むはずだ。多分洗浄・乾燥後ワークをハンガーから取り外す作業と同時に目視検査をしたのだろう。ワークを置く方向を変えれば、簡単に上部と下部の検査ができる。

この2ヶ月間に不良の増加など全くなかったのだろうか?
外観検査不良は簡単に処理されてしまう傾向があるように思える。例えば簡単に手直しできる不良は、検査員が手直しをして合格品として扱う事もありうる。

今回の事例を汎用化すると

  • 設備故障を確実に捕捉できる点検方法になっているか。
  • 製品検査はその工程で発生しうる不良を全て捕捉できるか。

またリコールによって得た該当品の異物付着率や、腐食具合などをきちっとデータ化しておけば得がたいノウハウとなるはずだ。

見せかけの改善

 改善活動・QCC活動などを指導していると「見せかけの改善」を見かける事がある。見せかけの改善とは、確かに改善にはなっているが利益には貢献しない改善をいう。

例えば、作業改善や不良改善を実施し年間〇〇万元の効果が出たと試算しても、生産が打ち切りになってしまった。

この様な「見せかけの改善」が発生するのは、改善計画に問題があるからだ。
経営に貢献しない改善活動は「お遊び」だ。改善活動のテーマを選択する時に経営に貢献するかどうかをきちんと見極めなければならない。

利益貢献は無くとも、その他で経営に貢献するのであれば意義はある。
例えば、活動を通して現場メンバーの改善能力向上を狙っているのであれば「お遊び」とは言い過ぎだろう。

生産能力以上に受注があり、会社の収益にも貢献する製品の生産性改善は至急取り組むべき改善活動になる。
しかしこの様な改善活動であっても、ボトルネック工程以外の生産性改善は「見せかけの改善」だ。ボトルネック工程以外の生産性を改善しても、製品の生産性は変わらない。むしろ中間在庫が増えて悪影響を及ぼす。

こちらの「見せかけの改善」は改善すべき製品の選択は間違っていないが、改善すべき工程が間違っている。改善活動を開始する時に、正しく工程分析をしなければならない。


このコラムは、2019年4月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第806号に掲載した記事です。

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KI法

 どこで見かけたのか記憶にないが「KI法」という言葉を知った。
「KJ法」ならば、新QC七つ道具・親和図法として親しまれている川喜田二郎博士が開発された手法だが「KI法」は浅学・短才にして初めて聞く言葉だった。

幸いにしてコロナ禍のため日本で、隠棲生活中である。有り余る時間があり早速Google先生に質問して見た。磯部邦夫氏が開発した問題解決手法であり、考案者の姓名から「KI法」と命名されていると判明した。著書を検索すると「問題解決・自己啓発の手引き」(日本規格協会)が地元の図書館にあることが判明。2日間で読了した。

以下の点が参考になった。

  • 工程(時間・場所)を遡って問題が発生した場所を特定しデータを調べる。
  • 現象・データから問題の要因を見つける。

経験や知識に頼るのではなく、現場のデータ・事象から学ぶということだ。

問題解決には知識や経験が必要であるが、それが思い込みとなれば、真因は見つからない。問題の答えは、問題が発生している現場にある。現場から離れた机上の議論では問題を解決できない。

大切なことを思い出させてくれた書籍だ。事例も豊富に紹介されている。
しかし残念ながら、事例の説明がよく理解できず解決方法に納得がいかず消化不良だった。


このコラムは、2020年8月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1021号に掲載した記事です。

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亢竜の悔い

 「亢竜(こうりょう)の悔い」とは、天に昇りつめた竜は後は下がるだけなので悔いを感じる、という意味だ。栄える者は必ず衰える、盛者必衰の理だ。

では悔いを持たぬ様に天に昇りつめる努力を放棄すれば良いのだろうか?
あるがままの今を受け入れる。そんな禅的な世界観を持てば悔いはないだろう。
しかし現代の企業経営とは相容れないモノがある。年度目標を毎年達成し続ける。毎年増収・増益を継続する。変化する経営環境の中で、達成し続けるのは困難だ。達成出来る目標にすり替えれば、悔いの代わりに後ろめたさを感じるだろう。

目標だけを追求する限りこのようなジレンマを感じるだろう。
目標の手前にあるべき目的を明確にすることが解決策だと思っている。目的とは何か。自社の存在意義と言い換えると分かりやすいかも知れない。

例えば企業経営の目的が「従業員の物心両面の幸せを追求する」であるとする。
この場合「給与」「福利厚生」「労働時間」などに具体的な目標が発生するかも知れない。しかしこの目標を達成しても、「従業員の物心両面の幸せを追求する」という目的は存在可能だ。こう考えれば、亢竜の悔いはない。

違う例を考えよう。
改善活動は不具合が存在する事により成り立つ、というパラドックスを内在している。つまり改善活動を継続すれば亢竜の悔いが発生することになる。不具合がないのだから、皆で楽しく暮らせば良いではないか、このような考えが、盛者必衰の理を招く(笑)

QCC活動でも、あらかた問題点を解決してしまうと、亢竜の悔いが発生する。
それでも活動を継続しようとすると、どんどんつまらないテーマを考え、活動が形骸化する。QCC推進事務局から年間活動件数のノルマなどが課せられると、この傾向は加速する。

QCC活動の本来の目的「メンバーの成長を通して業績に貢献する」にフォーカスすれば、問題点の解決だけでは無くなる。新しい業務への挑戦、飛躍的な品質レベルの達成など、ありたい姿の実現がテーマになりうる。企業が成長する限りテーマは無くならない。従来の問題解決型の活動とは違い、ありたい姿を実現すると言う課題達成型の
活動となる。

また市場や顧客の要求が変化すれば、製品・サービスも変化せねばならない。
何を、どのように変化するかが活動のテーマとなる。

改善活動には「亢竜の悔い」はない。


このコラムは、2017年3月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第519号に掲載した記事です。

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トラブルは繰り返す

 潜在不適合のキーワードをリストアップしようと思い、過去の不具合事例を調べてみた。こういう調査には、製品評価技術基盤機構の事故情報のデータ
ベースが役に立つ。

独立行政法人・製品評価技術基盤機構:ホームページ

昨年の第四四半期の事故情報レポートには233件の事故情報が報告されている。
このうち難燃材料・赤リンによる事故が41件ある。電気製品の事故件数は119件なので、電気製品の事故の40%は難燃材料・赤リンによる事故だ。

プラスチックに添加した難燃剤・赤リンによる金属マイグレーションで電極間短絡が発生し、発煙事故に至っている。

実は赤リンによる発煙事故は、随分前から断続的に発生していた。
TV受像機、コンピュータのCRTディスプレイモニターには2万ボルト前後の電圧を使っている。高電圧の発生にはフライバックトランスという昇圧トランスを使用する。フライバックトランスは絶縁のためにエポキシ樹脂を充填する。エポキシ樹脂の難燃性を上げるために、赤リンを使用していた。

赤リンが吸湿すると、巻線の絶縁を劣化させ高電圧がショートする。
通常フライバックトランスがショートすれば、保護回路が働き火災などの事故には至らないが、TV受像機内に堆積した埃などに類焼し火災になることもある。火災にならなくとも発煙などがあり、大問題となる。

1980年代にはこの問題を解決するために、各メーカは難燃剤を赤リンから臭素に変更した。しかしその後、環境規制(RoHS規制)により臭素が使えなくなり、赤リンが復活する。さすがに昔と同じように赤リンを使ったわけではない。赤リンをアルミ化合物でコーティングし、吸湿を防いでいる。

絶縁特性を要求しない用途には、このような処置は不要であり、従来通りの赤リン難燃剤もまだ生産している。従来通りの赤リン難燃剤を誤用した最初の大トラブルは、富士通製HDDの事故だろう。HDDに内蔵した制御用のLSIの封止材料に通常の赤リン難燃剤を使用し、回収事故を起こしている。2002年の事だ。

10年スパンで、同じ問題を起こしているような気がする。
「ほとんどの問題は再発問題だ」と言った人がいたが、なかなか失敗から学ぶことができないようだ。


このコラムは、2017年6月26日配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第534号に掲載した記事です。

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頭の体操

 中国に帰還後、現在広州のホテルで2週間+1日のコロナ隔離生活中である。三食打包弁当が配給される。ありがたいことだ(チャント料金は取られているが・笑)打包弁当には、箸のセットがついてくる。割り箸、小さなプラスチックレンゲ、爪楊枝、紙ナプキンが入っている。

今の隔離ホテルに移動してからわずか3日間9回の給食で2度箸セットの不良を発見した。
1回目:すでに割れた割り箸(片側だけ)が入っていた。
2回目:爪楊枝の一部が箸セットの袋の封止部分に入っていた。

作業現場を見ていないが、相当改善のやりがいがある現場のようだ。
退屈しのぎに、どんな事故が起きてどう改善すべきか頭の体操をしてみた。現場も見ずに何を考えても無駄かもしれないが原因探求、対策検討の道筋の参考になればと思う。

1回目の不良品:
片側だけの割り箸の元々つながっている部分の破断面を観察すると、引きちぎられた痕跡がある。ということは、割り箸の加工時に発生した問題ではなく、何らかの問題により割ってしまった箸が袋詰め工程に混入した。と考えるのが妥当だろう。
自然に割れるものではない。故意に割ったと推測した。割り箸の受入検査(自社加工ならば初物検査)で割れる事を確認した箸が最終工程に回ってしまった、と推測した。
流出原因は、袋詰め作業員、最終検査員が気が付かなかった。または気が付いたが、もう一本割れた箸の片われがあるかもしれない、という想像力が足りなかったのかもしれない。
この推理に従うと、工程内で行う破壊試験サンプルの扱い(確実な廃棄と確認)のルールを明確にし、徹底するべきだ。

2回目の不良品:
現物を見ると、爪楊枝(透明袋入り)の一部が箸セットの封止部分に融着されており、先端部分のみが袋に残っている。観察により推測される原因は、融着作業が水平の場合、爪楊枝が袋下部まで落ちていない状態で融着してしまった。
融着作業が垂直の場合、爪楊枝は下まで落ちるかもしれないが、袋(爪楊枝と外装袋)が帯電していれば袋の途中で静電気吸着するかもしれない。
融着作業者の自主検査で気がついて欲しいが、原因除去の対策を打つべきと思う。
対策は、融着作業を垂直にしアイオナイザーで除電する。さらに確実にするため、袋詰め手順を決める。爪楊枝を先に入れ紙ナプキン、割り箸、レンゲで爪楊枝を下に押しやるように挿入すれば良さそうだ。

このコラムはあくまで頭の体操です。本来の原因追求、対策立案は5ゲン主義でやるべきです。


このコラムは、2021年1月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1087号に掲載した記事です。

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経営戦略

 日本のモノ造り産業について考えてみた。
敗戦後壊滅的なダメージを得た日本のモノ造り産業が急速に発展した要因は優秀な人財が生産現場で必死に働いたからだと思う。何もかもを失った国民は、「豊かな生活を手に入れる」と言う渇望に突き動かされ、「会社人間」となり昼を夜に次いで働いた。

明治維新後「欧米列強に追いつけ追い越せ」と言う命題が国民を動かした様に戦後も「復興」と言う命題を国民が共有していた。当時は既に「手本」があり、それを真似すれば良かった。需要が供給を上回り、作れば売れる状態だった。

「安かろう悪かろう」と先進国から蔑まれた品質も、デミング博士の指導で飛躍的に改善。モノ造り日本、品質の日本と言う称号を得るまでになった。
米国から「不当競争」とされ、不公正な関税をかけられる。世界中から日本人は働き過ぎだと非難され、国は祭日をむやみに増やした。豊かになった国民は「ゆとり」に向かう事で、「渇望」は消滅。日本の復興を支えた「企業戦士」達は若者世代から「社畜」と蔑まれ、政府は労働時間の短縮に加速をかけている。

「追いつけ追い越せ」と一生懸命働いていたが、いつの間にか先頭を走っており、真似をする手本が無くなっていた。独自のモノを開発する気運が高まる。そしてPCに代表される同一規格大量生産品では台湾、中国に負ける。
独自の価値を提供するAppleに代表される企業には全くかなわない。日本の独自規格製品群はいつの間にか「パラカゴス製品」となる。

こういう状況を経営戦略の「失敗」と定義するのは行き過ぎかもしれない。
しかし我々の働き方を改革しなければ、このままではじり貧になるのは見えている。「働き方改革」は労働時間の短縮ではない。新たな創造するために働き方を改革すする、と言う事だと考えている。

命令服従型の組織で忍耐力を持って働く時代ではない。
説得納得型の組織で問題解決能力を発揮して来た時代もそろそろ終わりだろう。
新たな価値を創造する課題発見能力を磨く時代だと思っている。
横並び主義の日本の社会では、他人と違う考えを持っている人財をつぶす傾向がある。我々「昭和世代」が頼りなげに感じている「ゆとり世代」の多様な考えを活かす、そんな組織を作らねばならないだろう。

エイベックスが考える“ポジティブ”な働き方改革–未来を語る人事制度」と言う記事を読んでそんな事を考えた。


このコラムは、2017年12月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第604号に掲載した記事です。

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現場見物

 三現主義は問題解決の基本だ。現場で現物を観察し現実を確認することで問題解決をする、この三つの「現」、現場・現物・現実を三現主義という。

会議室に篭って議論しても問題は解決しない。問題は現場で発生している。
現場で現物を観察するのが鉄則だ。しかしこの「現場現物」が「現場見学」になっている事例をしばしば見る。現場で現物をぼんやり「見物」しても現実は確認できない。

ただ現場に行くだけでは「見物」になる。現場・現物で現実を確認するには、仮説を持つ必要がある。仮説を立証するために現場で現物を観察する。

但し仮説はフレキシブルでなければならない。仮説を信じ込んで現場・現物を観察すればバイアスがかかり正しく現実を確認できなくなる。

以前指導した工場では、ベルトコンベアを使った流れ作業をしていた。特定の作業工程がボトルネックとなっており、生産目標が達成できない。現場の班長はボトルネック工程を2人作業として改善しようとした。定石の対策に見えるが、現場見物による安直な解決策にしかなっていない。なぜその作業がボトルネックになっているか現場現物で観察し仮説を立て、現実を確認しなければ有効な対策にはならない。


このコラムは、2020年8月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1020号に掲載した記事です。

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目標は宣言しない

 以前メールマガジンのコラム「リーダーシップの形」でデレク・シヴァーズをご紹介した。

「リーダーシップの形」

本日のタイトルは、デレク・シヴァーズのTEDスピーチ「Keep your goals to yourself」からきている。

Keep your goals to yourself

夢を実現したければ、夢を公言すると実現する可能性が高まる、というのが世の成功哲学と思っていたが、シヴァーズ氏によると逆だそうだ。

目標を人に宣言することで、「代償行為」が発生しすでに夢が実現したと錯覚してしまうそうだ。そのため夢実現のための努力に対するモチベーションが上がらず、結局夢の実現から遠ざかる、ということだ。

社会心理学者はこれを実験で確かめている。
163人の被験者に、個人目標を紙に書いてもらう。被験者を2グループに分け第一グループは、自分の目標を皆に宣言する。第二グループは目標を誰にもいわない。その後目標実現のために45分間作業をしてもらった。
第一グループは平均33分で作業をやめてしまった。
第二グループは全員45分間作業をした。

それぞれに目標達成の手応えを尋ねると、
第一グループはゴールにずいぶん近づいたという。
第二グループは目標の実現はまだ遠いという。

ここまでの実験で、どちらが目標に近づいているのかは明らかだと思う。

日本には昔「不言実行」という言葉があった。しかし最近では「有言実行」という新造語の方が幅を利かせているようだ。

あなたがどちらの考えに付くかは、ご自由だと思う。
最後に論語の一節をご紹介する。

「子曰く:君子言に訥(とつ)にして、行に敏(びん)ならんと欲す」

参照:「言に訥、行に敏


このコラムは、2018年9月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第716号に掲載した記事です。

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