コラム」カテゴリーアーカイブ

コミュニケーション

 毎月セミナーを開催しているホテルから電話があった。
今月の予約は10日になっているがそれで大丈夫か、という確認の電話だ。
何らかの予定変更がないか確認を入れてきたのだと思ったが様子が違う。
会場の机の並べ方は?何時に会場に来る?挙句の果てに今日予約金を持って来いという。

先月も同じ事をやっているのにどうもおかしい。確認をすると案の定前の担当者が退職してどうして良いのか分からないというのだ。引継ぎがきちんとできていない。

前の担当者はもっと良い仕事を見つけて辞職した。だから「没方法」だという。

中国ではこういう事がしょっちゅうある。
従業員側の理由もあるが、経営者側が従業員の能力に不満で解雇してしまう場合もある。

私の場合など、ホテルまで呼びつけられて新担当者への引継ぎを顧客である私が行うことになった。

彼らにとって従業員の退職は日常茶飯事のはずだ。したがって管理職は、こういう場合でも業務に差しさわりが発生しないようにコミュニケーションが日常的に行われる仕組みを作っておかねばならない。

私の場合は毎月定例でセミナーを開催しているわけだから顧客ファイルを作って、どのような準備をしたか、料金はいくらだったか、クレームはあったかを毎月一枚のシートに記録しておくだけで十分であろう。

また非定期で来る顧客に対してもこのような顧客ファイルがあれば、「前回はこういう準備をしましたが、今回も同じで良いですか?」と一言いうだけで顧客が受ける印象は格段に良くなる。

残念ながらこのホテルでは、私の名刺と日本人であるということだけが引き継がれたようである。

コミュニケーションがうまく行かないと嘆くだけではなく、このような記録による非口頭コミュニケーション、蓄積型のコミュニケーションを工夫するべきだと考えている。


このコラムは、2008年9月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第51号に掲載した記事です。

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現場コミュニケーション

 先週は従業員の突然の退職にもきちんと対応できるようにコミュニケーションが普段から行われるような仕組みを構築しましょう、というテーマで「コミュニケーション」というタイトルの記事を書かせていただいた。

コミュニケーションと言うのは会話だけで成り立っているわけではない。
表情・身振り・手振りなどノンバーバル言語、メモ・レポートなどのテキストもコュニケーションの一部である。

以前勤めていた会社では、連絡メモ・レポートは「AOC」と呼ばれていた。
「Avoid Oral Communication」の略である。口頭連絡を避けてきちんとメモによる連絡を徹底しようと言う意思が明確に現れている。

 今週は「現場コミュニケーション」というテーマで記事を書かせていただく。
経営者・管理職の心構えとしてご理解いただけるとありがたい。
今回のテーマは二つの側面がある。
・現場でコミュニケーション
・現場とコミュニケーション
の二つをあわせて現場コミュニケーションと言うタイトルとした。

まず第一に「現場でコミュニケーション」
 経営者・管理職の皆さんは忙しくて執務室に座りっぱなしなんてことは無いだろうか?
コミュニケーションの基本は相互理解である。まず己を知り、相手を知る。
現場に出てゆかなくては相手の本当の顔は見えてこない。
現場に出てゆくことにより現場の声にならない声を聞く。報告されない問題点を見つける。
色々な効果があるはずだが、現場の作業員・リーダとの仕事を通したコミュニケーションは経営理念や経営目標の理解を側面的に助けるはずだ。

一日最低一度は現場を回る。
そのための時間は、自分の生産性改善をして捻出すべきである。
生産性改善は生産現場だけの話ではない、オフィスワークにも生産性改善は必要である。
ご自分でコピーをとったりしていないだろうか?中国人スタッフの目には経営者がコピーを取っていると言うのはものすごく奇異に写っているはずである。何故給与の高い幹部が秘書の仕事をするのかと考えるわけだ。

次に「現場とコミュニケーション」
 現場リーダや職員の話をそのまま100%信じて痛い思いをされたことは無いだろうか?私は何度かある。もちろん部下の指導育成が足りてないと言うこちら側の責任であるが……

誰もが自分の理解(または思い込み)で現実を見ている。
したがって報告される事実は彼の眼鏡を通した現実である。
オフィス職員の中には現場を見ずに班長の報告を只そのまま上司に転送する者がいる。班長の職責で理解できる現実とオフィス職員の職責で理解できる現実は別ものだ。

現場のことは「者に聞くな。物に聞け」
現場に行き現場で確認を徹底したい。


このコラムは、2008年9月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第52号に掲載した記事に一部加筆修正しました。

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4M+1M変動管理

4M変動管理というのは皆さんご存知だと思う。
4Mというのは人(Man)モノ(Material)設備(Machine)方法(Method)のことである。この4Mの変動を管理しようという考え方である。

人、モノ、設備、方法の変動が品質や生産性に大きく影響を与える。
変動には予期しない変動(ばらつき)と計画的な変動(改善、新製品立ち上げなど)がある。これをきちんと管理しておこうという考え方である。

例えば

  • 初物チェック:
    毎日初めて作る製品をチェックして予期しない変動がないことを確かめる。
  • 初品チェック:
    新製品や新規工程の立ち上げ時に最初の製品をチェックして変動が予定通り行われたことを確かめる。

というのも4M変動管理の一つである。

ところでもうひとつのM(+1M)というのは何だかお分かりになるだろうか。
計測(Measurement)のMである。
計測がきちんとできていなければ、変動が許容範囲内にあるのか、目標に到達しているのか判断する事ができない。

品質管理というのは維持+改善をすることである。
維持は管理幅の中にあることを確かにすること。
改善は目標を達成していることを確かにすることである。
そのためには計測がきちんとできなければならない。

計測は品質管理だけではなくあらゆることに応用可能である。

例えばこの本↓の著者は計測と記録だけでダイエットしてしまったそうだ。
「いつまでもデブと思うなよ」岡田 斗司夫、新潮社


このコラムは、2008年6月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第36号に掲載した記事に一部加筆修正しました。

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レーザープリンタに発火の恐れで無償部品交換を実施

NEC、レーザープリンタ「MultiWriter2800/2800N」に発火の恐れで無償部品交換を実施

NEC は、2008年6月19日、ビジネス向けモノクロレーザープリンタ「MultiWriter2800/2800N」において、発火の恐れがある不具合が判明し、無償にて部品交換を行う、と発表した。

これら製品において、製造元である富士ゼロックスが2007年12月までに回収した使用済定着器(トナーを紙に定着させる部品)のうち3件にベアリングの破損を確認。

富士ゼロックスがさらに調査を進めたところ、ベアリング破損に起因し、まれにランプが連続通電状態となり発火に至る可能性があることが判明した。

(japan.internet.comより)

 この記事からでは故障のメカニズムが分からないが、例えばベアリングが破損し紙送りがうまく行かなくなった状態で、定着ランプが点灯しっぱなしになると、印刷中の紙が加熱して発火の可能性があるのかもしれない。

市場から戻ってきた使用済み交換部品をきちんと解体調査をしている。そこで見つかった不良から、市場不良発生の可能性を察知。躊躇せず無償の部品交換を告知。

大変すばらしい対応だと思う。
無償交換の対応に躊躇して、万が一市場で発火事故でも発生してしまえば、もっと莫大な費用が発生したはずだ。「安全」に影響のある故障については、第一優先で対応しないといけない。万が一の場合、一発で市場から退場宣言を受けるくらいのダメージがある。

以前にも書いたが、市場サービス部門を持っている会社は自社製品の市場での稼動状態を比較的正確に把握する事が出来る。

「金属疲労と溶接不足が原因 名古屋・エスカレーター事故」

今回のように使用済み交換部品をただ捨てる(または再生する)だけではなく、きちんと解体検査をすることにより、市場不良を事前に察知する、設計寿命の検証など多くの情報が得られるものだ。


このコラムは、2008年6月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第39号に掲載した記事です。

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現場力

 読者様から「現場力」に関する記事を紹介していただいた。

 問題を解析し、知恵やアイデアを出し、粘り強く改善するのは、あくまで人間である。この現場力こそが、日本の競争力の源泉である。
日本企業の競争力は、現場をたんなる「コスト」として見てこなかったことから生まれている。

困れば知恵が出る。そして、それが現場力強化につながる。その際に、現場だけを困らせるのではなく、経営トップも一緒になって困ることが肝心だと大野(耐一)氏は指摘する。

「変動費化」という甘い言葉が、現場の品質を毀損させているという現実を、経営者は直視しなければならない。経営の目的は、変動比率を高めることではなく、現場の競争力を高め、そこから生み出される付加価値を高めることなのである。

○○と他のスーパーの最大の違いは、仕入れにある。大手スーパーが集中購買を指向する中で、○○は鮮魚、精肉、青果といった生鮮食品の仕入れ担当者は、各店舗に配備されている。

「競争戦略」と「オペレーション」の両輪が揃ってはじめて卓越した競争力は生み出される。

競争戦略が合理的であることの最も重要な要素のひとつは、自社の「身の丈」に合っているかどうかである。ビジネスとしての可能性があるからといって、あれもこれも漫然と手を出していたのでは、資源配分が分散してしまい、優位性構築に結びつかない。

人づくりのための投資とは、お金をかけることではなく、経営幹部がどれだけ自らの時間をかけたかである。

ボトムアップという現場力のエネルギーは、じつはトップダウンからしか生まれない。

企業活動における「よい行動」とは、「しつけ」と「くせ」の2つで成り立っている。

「見える化――伝わる化――つなぐ化――粘る化」

サービス業や流通業においては、過度な分業・分散化は、顧客満足の低下をもたらす。

いま、後輩たちに遺さなければならないのは、たんなる機械の使い方や作業手順ではない。「なぜこの機械が生まれたのか」「なぜこの作業手順が必要だったのか」そんな根源的な経験則こそが、継承されなければならない。それこそが「スピリット」である。

90年代、バブル崩壊で日本的経営に自信をなくした経営者達が、こぞって米国流経営手法を真似をした。

株主重視主義により短期経営数字を追いかけ現場を変動経費化した。このため現場の力が代々伝承していく仕組みが失われた。
成果主義に偏りすぎたため従業員にOUTPUTばかりを求め、人財育成が不十分となった。

このような問題を抱えた組織が、バブル崩壊以降未だにテイクオフできていないのではなかろうか。

ところで90年代に力を取り戻していた米国は、実は70年代から日本に追い上げられジリ貧状態であった。80年代になり更にそれが顕著になり、日本式経営の強さの秘密が研究された。

そこで注目を浴びたのがデミング博士である。
デミング博士が戦後の日本に品質管理を教え、そこからモノ造りの日本が急成長したのを突き止めたのだ。デミング博士は全米で再評価され多くの経営者がデミング経営哲学を取り入れた。フォードもGMもデミング博士の直接指導を受けて当時復活している。

バブル崩壊時に日本式経営を真似をした米国の強い企業は実はこうして蘇ったのである。
シックスシグマ、TQM、マルコムボルドリッジ品質賞など日本式経営を研究した結果米国に取り入れられたものである。

現場の力を大切にしてきた日本式経営をもう一度取り戻す必要がある。


このコラムは、2009年2月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第84号に掲載した記事に一部加筆修正しました。

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良い工場は退屈である

 先週開催した今年最後の東莞和僑会定例会で、東莞にある日系工場・経理から、どのように組織文化を作ってきたか講演をしていただいた。

今年はコロナ禍のため東莞和僑会の活動は全てZOOM開催となった。例年ならば、工場を訪問し工場を見学して講演を聞く。何度も訪問しているが、その度に新たな気づきが得られ、素晴らしい工場に退屈することがない。

今週のタイトル「良い工場は退屈である」はドラッカーの言葉だ。
良い工場は退屈である言うドラッカーの主張は間違っているわけではい。
良い工場を訪問した者は退屈しない。しかし良い工場に勤務している者は退屈であると言う意味だ。

並の工場は適度に問題が発生し、その対応が必要であり退屈ではない。しかし並以下の工場は問題が発生し、その対応のために退屈などしている暇はない。
さらにレベルの低い工場は問題が頻発し、毎日のように問題対処が発生し激務となる。

では退屈な工場(良い工場)とはどう言う工場か、あらかじめ問題を予測して、対策がしてある。したがって問題は発生しない。まれに未知の問題が発生しても、それに対する対応がルーチン化されている。粛々と新たな対策が実施される。

退屈しない工場は、毎回問題の尻拭いでお祭り騒ぎとなる。
退屈しない工場と退屈な工場の違いは「尻拭い」と「未然防止」の違いだ。


このコラムは、2020年12月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1076号に掲載した記事です。

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営業力

 営業力というと営業部門の力と考えがちだが、全ての部門で営業力、営業センスが必要だと考えている。

営業力を「物を売る力」と単純化し、更にこの「物を売る力」を要素分解してゆくと、PR力、顧客とのコミュニケーション力など基本要素に分解できるだろう。

こう考えると会社の中のどの部門も営業力が必要だといえないだろうか。例えば各部門の長は自部門の仕事を簡単にPRできるだろうか?
もちろんこのPRは他部門に対しても必要であろうが、自部門のメンバーに対して正しくPRできるということが、メンバーの結束力を高める基本となるだろう。

私は以前お付き合いのあったS社のプロキュアメント品質保証部の統括課長Tさんから「営業力」を教わった。昔S社向けの製品で一台だけ不良が見つかった。台湾で生産している部品の不良であった。即台湾の生産工場に飛び、原因究明と対策をして報告にうかがった。

Tさんからはまだ詰めが甘いとお叱りを受け、Tさんと一緒に再度台湾に出張することとなった。3日間朝から晩までご一緒し、仕事のことから趣味、家族のことまで色々語り合った。

Tさんの自部署の運営はこんな感じである。
自部署のパートさんにPC教育をして「商品価値」をあげる。
よその事業部へ出かけて行き新製品の立ち上げのため部材ベンダーの指導をする。この時の予算はきちんと当該事業部にお支払いいただく。

Tさんの自部門運営が営業センスがあると大変感心した。
それ以来私なりに自部門の運営に営業センスを入れてきたつもりだ。例えば品質目標として損失コスト(直接・間接を含め)を売り上げの0.2%以下とした。
協力工場、部材ベンダーに品質指導に行くときは「お金を払ってでもまた指導に来てほしい」といわれるレベルになるよう部下の育成努力をした。

品質保証部だけではなく全ての部署でも同様に、営業力を磨く必要があると考えている。特に間接部門は目標設定に営業センスが有るか無いかで、営業力が見えてくる。


このコラムは、2008年5月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第32号に掲載した記事です。

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治にありて乱を忘れず

 先日ある経営者とお話をしていた時に「利益が出ている時の方が心配だ」とおっしゃった。

利益が出ていないときは、必死に受注の拡大をする、収益体制の改善をする、そんな時は心配などしている暇はない。しかしひとたび利益が出だすと、その利益の源泉がなくなってしまったらどうしよう、と不安になるというわけだ。

まさに「治にありて乱を忘れず」だ。

利益が出ているときに次の収益の柱を次々と考え、それを大きくしていく。利益が出ていれば投資も出来る。乱を忘れずに人や設備に投資をしておけば、ひとたび乱に入っても動揺しなくて済む。

為替の変動についても手を打っておく。
その会社は日本円で取引をしているので、円が強くなれば香港ドルに変えれば為替差益が出る。反対に振れても良い様にちゃんと先に手を打っておく。為替の変動などはこちらでコントロールすることは出来ないので、あらかじめヘッジをしておく。

経営を外部環境要因のせいにしない、全てを自責と捉えあらかじめ手を打っておく。そんな経営理念がにじみ出ているコトバだ。

99%安全でも1%を心配する。
1%でも可能性があれば果敢に挑戦する。

あたかも相反する行動原理のように見えるが、この相反する行動がバランスよく取れる事が重要だ。


このコラムは、2008年11月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第63号に掲載した記事です。

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努力とは

 「努力」と言う言葉について考えた事はおありだろうか?
「努力します!」と決意を表明したり、「努力しています」と現状報告を受けたり、したりすることがあると思う。この時の努力ってなんだろうと考えた。
言葉を曖昧なまま使っていると、部下にもっと努力をする様に要求しても、期待通りの行動をひき出せない事が有る。「努力」と言う言葉の重さや深さをきちんと認識し、共有する事が必要だろう。

木下晴弘さんは「涙の数だけ大きくなれる」の中でこう言っている。
“努力とは、当たり前の事を、当たり前とは思えない情熱を傾けて行う事。”

「涙の数だけ大きくなれる」木下晴弘著

つまりちょっと残業したくらいでは「努力」とは認められない。
狂気を感じる程の情熱が伴わなければ駄目だ。
「寝食を忘れて」とか「時間を忘れる」と言う境地に到達するのが努力だ。

しかし「成果主義」は成果に着目するあまり、「努力」と言うプロセスを軽視しがちだ。努力が必ず成果につながれば良いが、往々にして「努力と成果には時差が有る」by野崎美夫

励ま詩」野崎美夫著

部下の「努力」に対するモチベーションを上げてやらなければならない。
成果によりモチベーションを上げるのは簡単だ。しかし「成果」は必ずしも本人がコントロール出来ない。まだ成果が出ていなくても「成長」をキーワードとし成長に承認を与える。成長の先には成果が有るはずだ。「成果」一辺倒のマネジメントよりは容易に部下のモチベーションをマネジメント出来る。

しかし、仕事の中には成長とは無関係でも努力してもらわなければならない事もある。「その仕事僕のキャリアパスの中でどういう位置付けになりますか?」などと言う質問にいちいち答えなければならなくなる(笑)

ベストな方法は、本人が「努力を楽しむ」様に仕向ける事だ。
フロー理論実践指導者・辻秀一先生は「一生懸命を楽しむ」と言っておられる。

「禅脳思考」辻秀一著

スポーツ選手がストイックに練習に取り組み努力をするのは、その先にある結果に対する期待が有るからだろう。しかし、結果などそう簡単には手に入らない。結果が出せる様な選手は、努力そのものを楽しむことができるのだ。

子供だった頃、近所の空き地でただひたすら走る事が楽しかった。
学生だった頃、同級生や先輩と議論する事がただ楽しかった。
古女房が恋人だった頃、ただ一緒にいるだけで楽しかった。
そんな「一生懸命」は誰にでも経験が有るだろう。

「努力を楽しむ」はハードルが高くても「一生懸命を楽しむ」事は可能だろう。


このコラムは、2015年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第423号に掲載した記事です。

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免震装置不正 徹底的な解明を急げ

 安全を守るための装置の品質に、長年にわたる不正があった。衝撃は大きい。

 油圧機器大手のKYBが免震・制振装置の検査データを改ざんしていたと公表した。免震装置では大臣認定の基準を満たさない製品が499本、顧客に約束した基準を外れたものが1914本、調査中のものが5137本あり、合わせれば出荷総数の7割を超えるという。

 不正もしくは疑いのある製品を使っている建物は1千カ所近い。病院、役所、大規模な商業施設など、不特定多数の人が日頃出入りする建物も多い。なかには「地域の減災・防災機能の拠点」とされる施設もある。

 会社の説明によれば、記録に残っているもので2003年から不正があり、少なくとも8人の検査員が口頭で引き継いできたという。本来は、基準から外れた製品は分解・調整し、再度検査するのが適正な対応だが、それには約5時間かかるため、検査データを書き換えていたとされる。

(以下略)全文

(朝日新聞社説より)

以前メールマガジンで東洋ゴムの免震データ改竄問題を取り上げた。
免震データ改ざん問題↓

免震データ改ざん問題

担当者は製造部からの納期の催促にプレッシャーを感じて改ざんに関わってしまったと言っている。

KYBの事例も同様に、生産を優先させるため検査データを書き換えた。

今回の事例を考えると、製造部門や検査部門の責任ではない様な気がする。
新聞記事によると、出荷総数の70%以上が検査不適合だ。製品設計、工程設計が未完成のまま生産を続けていた、と考えるのが妥当だ。

量産に移行すべきではない製品を販売開始してしまったKYBの品質保証システムに問題がある。そして現場の状況(直行率30%未満という驚くべき状況)を放置したまま、生産を継続させた経営判断に問題がある。

最近色々な業種で同様な不正が噴出している。
中には測定方法に問題がある、基準が厳しすぎる、などの理由があるのかも知れないが、それならそれで正々堂々製品規格を変更すべきだろう。

朝日新聞の社説は、かつて日本の品質は「過剰品質」と言われていたが、実態は「架空品質」だったのではないかと結ばれている。この言葉は我々製造業にとって重い警句と受け取るべきだろう。


このコラムは、2016年5月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第475号に掲載した記事です。

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