カテゴリー別アーカイブ: 経営

ボランティアのモチベーション

 先週のメールマガジンに引き続き動機付け(モチベーション)の話だ。
先週土曜日に東莞泗安村に有るハンセン氏病患者快復村を訪問して来た。ハンセン氏病が不治の伝染病と信じられていた頃、世界各国で隔離政策が執られた。中国でも同様に、ハンセン氏病患者は強制的に家族から引き離され、辺鄙な場所に隔離された。家族からも見放され、後遺症により手足を失う失明するなど、隔離された人々の絶望を想像すると胸が痛む。

泗安村は東莞の西端、河の中の中州に有る。今でこそ橋が架かり、往来が可能になったが、外界から隔離された場所にあった。

元患者達を支援するボランティア団体『家(JIA)』を運営しているのが、原田燎太郎さんだ。原田燎太郎さんの活動は以前のメルマガでもご紹介した。

「世界を変える」

中国人ボランティアの活動源泉となるモチベーションはどこから来るのか、それを現場で実際に確認したくて、「家」の1日スタディツアーに参加した。

案内してくれた若者は、二人とも大学生の時に「家」の活動に参加している。卒業後、公益団体の様な所に就職し、泗安の快復村に住み込んで働いている。大学を卒業すれば、もっと華やかな職場で、もっと給料の良い仕事に就けたと思えるが、彼らはこの仕事が使命だと思っているのだろう。とても輝いて見えた。

男性の方は、流暢な日本語を話す。名古屋から来るボランティアの中に美人の女子大生がいるから一生懸命日本語を勉強したのだと、原田さんが耳打ちしてくれた(笑)
もう一人は、終始笑顔の女性だ。私も広東語を勉強しようと思った(笑)
彼女は、元患者の生活を記録する為に、聞き取り調査をしたり、全国の快復村を訪問する調査もしている様だ。

更に2人、海南島でボランティア活動をしている女子大生2人が影の様に我々の体験ツアーをサポートしてくれた。

学生ボランティアが、「家」のワークキャンプに参加してどうに変わるのか、その原動力な何かを知りたくて参加した。しかし私の心をとらえたのは、89歳の黄少寛ばあちゃんだ。黄ばあちゃんは子供の頃日本人に親を殺されたという。その後極貧の中でハンセン氏病を発症し、隔離村に連れて来られた。両足は義足で車椅子で生活をしている。両手には指がない。そんな過酷な人生を送って来たのに、見知らぬ日本人の訪問者に笑顔で話をしてくれた。

そんな彼女の話を、写真と文章で綴った『美女婆婆在泗安』と言う書籍が出版されている。書籍の売り上げは、他の隔離村の元患者に洗濯機などを贈るために使うと言う。壁には、洗濯機を筆頭に10個の目標を書いた紙が貼ってあった。決して裕福とは言えない生活をしているのに、他の元患者を支援する。

ボランティアの若者だけではなく、支援を受けている元患者もボランティア精神を発揮し始める。

私が、四川大地震の時に気が付いた「人は同じ目的・目標に共感した時に高い貢献意欲を発揮する」と言う仮説の証左がまた一つ得られた。これは支援する側だけではなく、支援されている人にもモチベーションを与えるようだ。

企業経営者にとって大きなヒントだと思う。


このコラムは、2015年8月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第435号に掲載した記事に加筆しました。

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モチベーションの源泉

 最近「嫌われる勇気」と言う本を読んだ。ベストセラーだから読んだ訳ではないが、人のモチベーションに関係ありそうな本だったので読んでみた。
哲学者と悩める若者の対話、と言う物語形式で「アドラー心理学」の入門書となっている。馴染みのあるフロイト流の心理学とは、違う視点で人のココロに付いて書いた本だ。

今までアドラー心理学を知らなかった事を悔いた(笑)

「人は感謝された時に、他者に貢献出来たと感じる。そして自分が価値ある存在だと思えた時にだけ勇気を持てる。」
と言う文章を読んで、勇気を持てる状態と言うのが、モチベーションが高い状態だと理解した。だから部下のモチベーションを上げたければ、褒めるより感謝する方が効果が高いはずだ。

以前メルマガで紹介した、障がい者雇用で有名な日本理化学工業のエピソードを思い出した。

日本理化学工業に勤務する知的障がい者のA君は、しばしば無断欠勤をする。
彼はチョークの生産ラインの最後で、ベルトコンベアーに乗って運ばれて来るチョークを梱包する係だ。A君が休むと、監督職がピンチヒッターとして、ラインに入る。そして監督職としての仕事ができなくなる。
困った監督職者は、A君をラインの外に連れ出して、自分がいないラインを見せた。ベルトコンベアーに乗ったチョークは、次々と床の上に落ちてしまう。
A君は、自分が休むと皆に迷惑がかかる事、普段自分が人の役に立っている事を理解出来た。その結果A君は、熱があっても出社してしまう様になる。

健常者も知的障がい者も、モチベーションのあり方は同じだろう。
人から頼りにされている、役に立っていると、実感出来た時にモチベーションは上がる。だから「褒める」より「感謝する」方が効果が高いのだ。

友人の若手経営者は、しょっちゅう従業員に「ありがとう」と言っている。きっと彼も、感謝の力を知っているのだろう。私も小林正観先生の教えに従い「ありがとう」と言っている。相手がいない場合は独り言で「ありがとう」と言っている(笑)

アマゾンの読者書評が、アドラー心理学を上手くまとめていた。以下に紹介しておこう。

「私は、過去にまったくの畑違いの職場に異動となり、これまで築いたキャリアもご破産、周囲の目も厳しく、応援も得られず孤立したので、やがて心身ともに悲鳴を上げ、2回の休職を繰り返してしまいました。それは辛い日々でした。」

そんな私に、これは衝撃の一冊となりました。
さっきの「 」の文章は、本書を読めば、このように書き直さなくてはなりません。

「私は、新しい職場で『役立たず』と人から評価され傷つくことを過度に恐れ、それを回避するため休みました。心身ともに悲鳴を上げたのは、それにより休むことができるからです。辛いですが、休めば傷つかなくて済みます。そして、休むという目的のため、『畑違いの職場への異動』『キャリアがご破産』『周囲の目が厳しい』『応援も得られず孤立』という一連の理由を、後から後から探しました。」

これは衝撃ですよ。衝撃と言わずして何という。(以下略)


このコラムは、2015年2月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第411号に掲載した記事に加筆しました。

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中国人のモチベーション

 読者様からこんなご意見をいただいた.

最近は中国の若者(30代前半から下)と話す機会はありますが、逆に日本の若者と話す機会が少ないです。

中国のホワイトカラーの若者は、収入と同様に自分のスキルアップを考えている人が大半かと思います。会社は給料得る場と同時にスキルを身に付ける場と考えています。
ですから新しい仕事にも貪欲なほど真剣に取り組んでくれますね。
むしろ日本の若者の方が、目先の給与や仕事のラクさで、仕事を選り好みしているように感じます。

私が今駐在している会社の中国人若者には、
「この会社にいる日本人(私以外に3人いるが、その方は皆団塊の世代の方)は、みんな日本の製造業が安かろう悪かろうを売り物にした時代が終焉を迎え、人件費上昇や幾多の不況を技術革新で乗り越え時代を引っ張った人たちです。
その方たちから直接指導を受けられることを幸運だと思って欲しい。
あと10年もしたらこんな機会はカネをだしてもない。もちろん私も幸運に思って指導を受けている。」
と話しています。

私もまったく同感だ.
この読者様が中国人リーダたちにすばらしい指導をされているのが良く分かる.

中国で工場を経営されている方の中には,
「中国人に教育をしてもすぐに辞めてゆく.教育にかける時間もコストももったいない」
「中国人にノウハウを教えてしまうと,自分たちの競争優位点が失われる」
とお考えの方がまだまだいらっしゃる.

しかし逆に中国人幹部の教育に熱心に取り組んでおられる会社ほど幹部の離職率が低い.
中には二番手三番手のリーダに成長の機会を与えるために,ナンバーワン幹部が辞めてゆく仕組みを真剣に考えておられる方もある.

また教えてしまって簡単に真似の出来るノウハウはノウハウとは呼ばない.日本のモノ造りの本当の強みは,毎日改善を続ける「改善体質」にあると考えている.これは簡単には真似が出来ない.

中国人リーダ達の「成長意欲」をモチベーションの源泉とし,成長のための「場」と「機会」を与え続けるのが,経営者や経営幹部の仕事だと思っている.


このコラムは、2008年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第44号に掲載した記事に加筆しました。

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四次元ポケット

 土曜日の昼下がりYoutubeでBGMを聞きながら仕事をしていたら、スポットCMで「四次元ポケット」というプロジェクトを知った。

日本の中堅・中小企業の力を組み合わせ、世の中をあっと言わせる物を開発しようと言うコンセプトだ。富士ゼロックスがサポートしている。
富士ゼロックスのホームページから引用すると、

「四次元ポケットPROJECT」コンセプト
これからの日本を支える大きな原動力。それが中堅・中小企業のチカラです。
いま、その得意分野を組み合わせることができれば、世の中があっと驚くようなモノをどんどん実現していくことでしょう。
わたしたち富士ゼロックスは、ITソリューションによるさまざまな支援を通して、中堅・中小企業のビジネスを加速させていきます。

「四次元ポケットPROJECT」概要
国民的人気を誇るまんが「ドラえもん」。
22世紀からきたドラえもんは、四次元ポケットから次々に「ひみつ道具」をとり出し、のび太くんのピンチを助け、夢を叶えてくれます。
こんな「ひみつ道具」がいま実在したとしたら、どんなに楽しいのだろうかと私たちは考えました。そして、複数の企業の技術を駆使して実際に「ひみつ道具」作りに挑戦するという夢のプロジェクトを立ち上げました。
それが「四次元ポケットPROJECT」。
実在する企業の技術やノウハウをそれぞれ連携することで、1社では不可能だった新たな価値を生み出すことができる。
富士ゼロックスはこのプロジェクトに参加する企業の連携をITソリューションで支援します。第二弾は「望遠メガフォン」。

望遠メガフォンとは、ドラえもんのポケットから出て来る秘密の道具で、遠方にいる人にピンポイントで音声を届ける拡声機だ。
望遠メガフォンを造ったプロジェクトメンバーは、ユカイ工学、GOCCO、クロスエフェクト、スイッチサイエンス、海内工業、三和メッキ工業の精鋭達だ。

設計の中心となったユカイ工学は、ロボットベンチャーだ。ロボットと言っても彼らの造るロボットは、産業用のロボットではない。脳波を検出し、感情の変化を耳の動きで表現する「ネコ耳」など、今何の役に立つのか良く分からないが(笑)将来とんでもないアプリケーションに化けそうなモノを造っている。

それを筐体設計、回路基板、板金、メッキの技術を持つ会社が一緒になって、望遠メガフォンのプロジェクトに取り組んだ。ドラえもんの玩具と笑ってはいけない。

超高指向性のスピーカ、肉厚さが違う支柱をプレス技術で造る、距離測定用のレーザ測長機、紙製プリント基板、3Dプリンターを駆使した筐体作成、など各社の技術を持ち寄って完成させた。

それぞれは小さな会社でも、それぞれの技術を持ち寄れば、面白い物が造れる。
それを広告宣伝の形で、大企業がスポンサーする。
こういう動きがもっと盛んになれば、新しい産業が出来るだろう。

先週のコラムにも書いたが、19世紀の産業革命以来、20世紀の軍需産業、21世紀のロボット産業と進化して来た産業に、「おもしろい」を核としたネットワーク型の全く新しい産業が生まれる予感がする。

中小企業連合が活躍した、まいど一号(宇宙衛星)、江戸っ子一号(深海探査機)は、中小企業でも高度な製品を開発製造する事を証明した。
四次元ポケットプロジェクトは、実用よりは将来の夢を造るプロジェクトといっても良かろう。

我々も中国モノ造り企業の力を集め「ニイハオ一号」プロジェクトをやってみたいモノだ。何を造れば良いかはまだ分からないが、残りの人生をかけて見たいと思っている。


このコラムは、2014年9月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第377号に掲載した記事に加筆しました。

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もう一つのブラジルW杯 ロボカップ、日本勢の優勝も

 サッカーの聖地ブラジルで7月下旬、もうひとつのW杯が開かれた。東部の町ジョアン・ペソアで開催された「ロボカップ」はロボットのサッカー世界大会だ。目標は「2050年、人間の世界王者に勝つ」こと。欧米のほか日本や中国など世界約40カ国・地域の研究機関が技術を競った。玩具の域を大きく逸脱したロボの一挙手一投足に企業も熱い視線を注ぐ。

全文

(日本経済新聞電子版より)

 個人的な希望では、この様な大会は日本勢が優勝を総なめにする位の勢いを持ちたい。

20世紀の産業発展は、軍需によるモノが大きかったと思う。第二次世界大戦後の冷戦時代はミサイルの開発競争が、宇宙航空産業を育てた。敗戦国の日本は、戦闘機零戦を造る力を解体され、宇宙航空産業の下請け企業の地位に甘んじて来た。

21世紀はこの記事に有る様な「平和な競争」が産業を牽引する時代であって欲しいと願っている。

私が注目している産業分野は、航空産業とロボット産業だ。
航空産業は、自動車産業以上に沢山の協力企業を必要とする。つまり航空産業1社で多くの雇用を生む訳だ。

ロボット産業は、日本の労働人口減少に唯一の光明を与えてくれていると思う。
政府が考えている様な、外国人の移民では、日本と言う国のアイデンティティが失われてしまうのではないかと危惧している。

工場の中には、人に混じって色々な形態のロボットが働いている。
街の牛丼屋に行けば、とびきり美人のヒューマノイドが、ユーモアたっぷりに接客している。そんなヒュ-マノイドに恋をしてしまう宅男まで現れる。
そして人間は、より付加価値の高い仕事だけをする。

こうなれば日本人の労働生産性は、飛躍的に上がる。

そしてロボットの量産能力を持つと言う事が意味する所は大きい。
ロボットを兵士とすれば、倒れても倒れても、後から後から兵が現れることになる。これは日本侵略を企てる外国に対して抑止力になるだろう。鉄の意志を持った忠実な兵士が、日産10,000台生産可能、となれば誰も日本と戦争したいとは思わなくなるだろう。


このコラムは、2014年8月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第376号に掲載した記事に加筆しました。

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ローソン、隠れた技術発掘 食品70社から情報

 ローソンは食品メーカーが活用し切れていない技術を生かして独自商品を開発する。製法や素材など約70社から聞き取った情報を蓄積。自社がもつ売れ筋データと照らし合わせて、複数のメーカーの技術も組み合わせながら2014年度に独自商品を最大100品を発売する。製造過程から深く関与するSPA(製造小売り)を目指す戦略の一環で、消費者にとって選択肢は広がりそうだ。

記事全文

(日経新聞電子版より)

 マーケットを知っている人が、技術を持っている人達を結びつけて、商品を開発しようと言う考え方だ。固有技術があっても商品が開発出来る訳ではない。試作品は作れたとしても、売れなければ商品とは言えまい。

発明王・エジソンの最大の発明は、発明のプラットフォームだそうだ。
高い技術力と豊かな発想があっても、一人では偉大な発明は出来ない。技術が分かる人とマーケットが分かる人、そしてプロデュースする人が、発明には必要だそうだ。この3者のコラボレーションを発明のプラットホームにしたのがエジソンだそうだ。

エジソンが電球を発明した頃は、こういう考えは必要なかったかも知れない。「明かり」に対する市場の要求は明確であり、実現しさえすれば売れる事は確実だ。技術者とマーケッターの調整をするプロデューサーも必要ではないだろう。技術者が諦めなければ、それで十分だ。

しかし、世の中に便利な物が溢れている時代には、「商品を実現する技術」より「商品の市場ニーズ」の方が重要だったりする。

ローソンの取り組みは、市場ニーズを持っている自分たちが、プロデューサーとなり、技術を持った複数の仕入先を組み合わせて、新商品を開発するという考え方だ。

小売り流通業の仕事は、あるモノを仕入れ消費者に届ける、という所から出発している。近年はプライベートブランド商品の様に、独自企画商品をメーカにOEM生産させて販売する、と言う新しい方向性が出て来た。更に複数メーカの得意技術を組み合わせることにより、独自性を高める動きになっていると考えたら良かろう。

大手の製造業で言えば、昔は製造部門が力を持っていたのが、技術部門に移り、最近ではマーケット部門が社内でのプレゼンスが高くなって来ている。産業全体で見ても、ローソンばかりでなく、小売り流通業主動で商品開発が行われる事例が増えている様に思う。

ユニクロが実現した製造小売りの構図が、食品、日用品にも拡大している。
製造小売りと言っても、小売業が製造部門を持つ訳ではなく、垂直分業の形だ。つまり三角形の頂点に小売り流通業が居て、底辺に製造業がぶら下がっている形となっている。

このスタイルでは、中堅・中小の製造業にとっては、依然として下請け仕事の域を脱出することができない。
勿論、他社が真似出来ない突き抜けた技術を持っていれば、下請け仕事と言え、お客様が頭を下げて仕事を持って来てくれる。従って独自技術を磨き続ける事は重要だ。

設計・サービスの付加価値が高く、モノ造りの付加価値が低いとするスマイルカーブ理論が言う様に、設計・サービス機能を持たない製造業は常に下請け仕事に甘んじていなければならないのか?
このメルマガで何度かお伝えして来たが、私はそんな事はないと考えている。

中堅・中小の製造業には設計・マーケティング機能はないかも知れない。しかしそれらのリソースを持っている人達と協業する事は可能だ。それらをまとめるプロデューサー機能が有れば出来るはずだ。
そういう考えで立ち上げたのが、「ソーシャルモノ造り」だ。

色々な技術を持っているメーカが集まって、自分たちの独自ブランドの商品を開発する。足りないリソースは互いに持ち寄る。製造小売業態が三角形の垂直分業ならば、こちらは横並びの水平分業だ。

各メーカは、自分たちの技術を持ち寄りる。「商品データベース」ではなく「テクノ・データベース」だ。
例えば、中島製作所の商品は船舶のプロペラだ。商品だけを考えると、船舶業界しか考えられない。プロペラと言う切り口で考えれば、航空機や扇風機も考えつくだろう。しかし人工関節を思いつきナカジマメディカルと言う新会社設立には至らないだろう。
新会社設立に至った発想は、商品ではなく加工技術に着目したからだ。
プロペラ生産に必要な鏡面研磨技術があったから、人工関節と言うオリジナルブランド商品を持つことができた。

こういう発想を持つことにより、下請けから脱出しオリジナル商品を持つ会社にする事が出来るはずだ。
ぜひあなた会社の独自技術を棚卸ししてみていただきたい。


このコラムは、2014年3月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第355号に掲載した記事に加筆しました。

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サムスン

 先週のメルマガにも書いたが、最近サムスンがリチウム電池、スマホの爆発問題、韓国大統領に絡んだ収賄容疑などで、注目を集めている。

そんな折りにサムスンに関する書籍を読んだ。

「サムスンの決定はなぜ世界一速いのか」吉川良三著

サムスンと言うと、日本メーカに勤める現役の半導体、液晶エンジニアを週末に韓国に招き日本の技術を盗み取ったという印象があり、個人的には好きになれない。この書籍を読むときも、どちらかと言うと著者の李健煕(イゴンヒ)会長(今収賄容疑で話題となっている李在鎔(イジェヨン)の父親)礼賛が鼻に付き気持ちよく読めなかった(笑)

確かに韓国企業にしろ中国企業にしろ、成長著しい企業の意思決定速度は速い。それらの経営トップは即座に意思決定し、事業の舵を切る。一方日本企業は、稟議書を何度も書き直し、結局何も決定せず、行動を起こさない。そんな印象がある。

サムスンは大企業とはいえ、オーナー経営者の企業だ。比較される日本企業はサラリーマン経営者の企業だ。意思決定の速度の違いはある程度やむを得ない、と考えながら読み進めていた。

しかしサムスンを内部から観察した著者の指摘には納得出来る部分が多くある。

「品質は顧客が決める」李健煕会長の言葉だ。
日本品質を誇りに感じるが、それが売れなければ意味はない。開発途上の市場には、その市場にあった品質、価格がある。ここで言う品質とは、工程内品質の事ではない。顧客要求品質の事だ。
工程内品質は、高ければ高い程コストは安くなるはずだ。しかし顧客要求品質を高めれば、コストが上がり販売価格も上げざるを得ない。顧客が要求する品質に対しては、コストをかけるべきだが、顧客が要求していない品質にコストをかけても意味はない。

世帯収入が月額1万円程の家庭で子供に100円のボールペンは買わないだろう。
書き味や最後まで使える様な品質を実現しようとすれば、ペン先端の鋼球の加工精度や、インクのグレードを上げなければならないだろう。それらを犠牲にしても1本10円で買えるボールペンを作らねば市場は取れない。
マーケットイン、ニーズオリエントという言葉はさんざん聞くが、我々は日本品質という呪縛から逃れられないのではなかろうか?

マーケットインとは、市場に合わせた製品を生産する事だ。そのためには多品種少量生産をする事になる。サムスンが生産する携帯電話モデルは数万品種あるらしい。多品種少量生産は本来日本的モノ造りの得意技だったはずだ。

マーケットインが可能になるのは、市場の要求を理解する事がスタートだ。サムスンはターゲットの国々に社員を深く潜入させる。中国に赴任している韓国人の多くは家族帯同で地域に根ざして生活をしている。サムソン電子に電源を納入している企業の指導をしていた事があるので、何人もサムスン電子の社員を知っている。殆どの人は韓国語以外に複数の外国語を話す。(水原のサムスンを訪問したときは韓国語しか話せない人もいたが・笑)

中国は既にローコスト生産国ではない。市場として捕え、マーケットインの製品を生産しなければならない。そのためにサムスンのスタイルを研究する価値はありそうだ。

人材と組織力

 先日中国ローカル企業の経営者と話をする機会があった.1時間余り話をした.彼は日本の技術に興味があり,いろいろなことを質問された.

彼は,
台湾企業が日本的経営をよく理解しており,中国企業の先を進んでいる.
中国人,台湾人,日本人の違いは何か.
と言うことに興味があるようだった.

残念ながら,私は台湾人経営者で日本的経営を本当に理解している人にはお目にかかったことが無い.
私が知っている台湾人経営者達は,必要な能力・人材は外から調達すれば良いと思っているフシがある.確かにその方が即効性があり,企業の力を増すことが出来るかもしれない.

しかし本当にこのやり方で組織の力を高めることが出来るであろうか?

営業力,技術力,管理力を買われて外から「金の力」で招聘された人材は,確かに高い能力を持っているだろう.しかしその能力は個人のものであり,その人材を雇っても組織力の向上にはならない.

なぜなら,その人材が持っている能力は彼の労働市場価値を差別化し,高給を得るための源泉だ.彼にとっての「金のなる木」を簡単に別の人間に与えることは無い.

例えば,営業能力を高めるためにどこかのトップセールスマンを引き抜いたとしよう.彼は自分が持っていた人脈を活用し,短期的に営業成績を上げることができるだろう.しかしその人脈は組織の力にはならない.新たに職を得た会社で更に彼の「個人人脈」を拡大し,また別の会社に出てゆく.

つまり「金の力」で得た人材は「金の力」で他に買われてゆくのだ.

台湾人経営者は,優秀な人材を雇用している間に得た売り上げ利益と,彼に支払った報酬の差額がプラスであれば良いと諦観しているように見える.しかし彼が退職する時には元からあった顧客ごと,出てゆく可能性もある.

この様なことを繰り返していても,組織の力は一向に強くならない.
即戦力を期待して雇った人材は,戦力は発揮するが組織力は高められない.

経営理念をしっかり定め,人材を育成することにより組織力を高める経営を目指さなくては,いつまで経っても優秀な人材を探すことしか出来ないだろう.


このコラムは、2010年5月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第154号に掲載した記事に加筆しました。

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組織風土の改革

 部下の仕事ぶりにこんな不満を持っておられる方はいらっしゃるだろうか?

  • 指示したことしかできない.
  • もう少し気を回して欲しい.
  • 指示待ちではなく,自発的に仕事をして欲しい.

こういう不満は,中国だからとか,従業員の年代とかに関わらず,普遍的な不満だ.

一方部下の方もこんな風に考えているのではないだろうか?

  • 上司の指示が曖昧で何をすればよいか良く分からない.
  • 毎日毎日同じような仕事でつまらない.
  • もっとやりがいのある仕事があればすぐ転職したい.

上司と部下がこの様な関係では,仕事で成果を出すのは困難だ.

上司は部下を「管理」しようとし,組織にはいつも緊張感が高まっている.
部下は「管理」される息苦しさを感じ,職場は閉塞感が漂っている.
こんな残念な結果になっていないだろうか?

こういう残念な結果に陥っている組織は,圧倒的にコミュニケーションの量が不足している.
この状況を打開するためには「共通の言語」が必要だ.「言語」と言っても中国語とか日本語という意味ではない.

「共通の価値観」と言った方が分かり易いかもしれない.日々話す言葉の様に共通のモノが組織内に必要だ.

ここに来るのは「組織の目的」とか「経営理念」というモノではなく,もっとベーシックな組織風土のようなモノだと考えている.組織風土がまず強固に出来上がっていなければ,「経営理念」も砂上の楼閣となろう.

顔を合わせたら挨拶をする.仕事を始める前に職場を掃除する.
こうした皆が暗黙のうちにとる行動の元になっている価値観を「共通言語」と表現してみた.
神が人々に複数の言語を与えたため,バベルの塔が崩壊したという伝説は、共通言語欠落の象徴だろう。

そうした共通言語を持つ事が「躾」であり,共通言語の上に「ホウレンソウ」が芽生える.
ホウレンソウは勝手に生えて来る訳ではない.
ホウレンソウに適した土壌が必要であり,種を蒔かねば生えてこない.
そこに適切に水を与え,日光と肥料を与えなければならない.

これは経営者や経営幹部の仕事だ.
組織風土を改革出来るのは,経営者であり,それを支援するのが経営幹部だ.


このコラムは、2013年1月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第292号に掲載した記事に加筆しました。

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組織間の協力

 中国の工場を見ていると、日系、台湾系、大陸系問わず部門ごとに「蛸壺化」しており、部門間の協力・協調が見られないことが有る。

以前に指導した自動車部品工場は、前工程のプレス工程で加工した半完成品を後工程の転造加工工程で加工して製品を生産している。プレス工程の方が生産能力が高いため、転造加工工程の前には半完成品の中間在庫がたまる。
プレス工程は後工程の都合を考えず、自分の都合だけで全力で生産する。そのため、中間在庫がふくれあがり従業員食堂に半完成品を置く様になる。
その結果、従業員は食堂が使えなくなり、職場の加工機械の横で食事をする事になる。それでも相変わらず次工程の都合を考えずに生産を続け、経営者は外に倉庫を借りる事を考えはじめる。

購買部門は、受注に従いどんと発注をかける。一気に納入された材料は倉庫に格納される。生産計画部門は、注文書の納期に合わせ生産計画を立てる。その結果倉庫から生産計画に合わせ、材料が一度に出庫される。プレス工程はすぐに生産完了し、中間在庫に積み上げる。各職場が、自分の都合しか考えていない。

後引き生産にすれば、このような事は発生しない。
しかしロット単位でまとめづくりをしていると、後引き生産のメリットが中々理解出来ない。いきなり小ロットで平準化生産しようと、指導しても理解して貰えない。段取り替えがムダ、などなど100個もデメリットを並べ立てる(笑)

こういう時に、各部門の代表者に集まってもらって、各自の都合を話し合って貰う。これで上手く行くなら、とっくに問題は無くなっている!と言う声が聞こえてくる(笑)
続きが有る。

もちろん各自の都合を主張してもらっても,上手く行くはずはない。
各自の都合を話し合った後に、役割をチェンジしてもらい相手の立場で議論をしてもらう。
例えば、プレス工程、出庫係が立場を入れ替えて、議論する。
「一度に出庫すると、プレス工程現場に置ききれなくて困る」と出庫係が言う。
「そうは言っても、何度も出庫作業をすれば効率が悪くなる」とプレス工程が反論する。
こういう議論で、プレス工程の責任者が、自分たちで倉庫に取りにいくと言うアイディアを思いつけば、大成功だ。

いかがだろうか?
この方法は、工場経営の師匠・原田師が実施していたジョブローテーションから思いついた。原田師は管理職を定期的にジョブローテーションさせていた。製造部長が、購買部に異動になる。こういう事を頻繁にしていた。幹部は皆他の職場を経験しているので、相手の気持ちがわかっている。そのため部門間の対立は、簡単に調和出来る。
模擬ジョブローテーションとして,役割を変更してディベートをしてみたら上手く行くのではないかという発想だ。

まだこの方法を試した事はない。
もし試された方が有れば、是非ご一報いただきたい。


このコラムは、2016年3月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第469号に掲載した記事に加筆しました。

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