カテゴリー別アーカイブ: 経営

夢・存在意義

こんな新聞記事を読んだ。
「いすゞ自動車とユーグレナ、ミドリムシ由来の次世代ディーゼル燃料を共同開発へ」

いすゞ自動車とユーグレナ、ミドリムシ由来の次世代ディーゼル燃料を共同開発へ

 いすゞ自動車と東京大学発のバイオベンチャーであるユーグレナ(本社東京)は2014年6月25日、微細藻類であるユーグレナ(以下、和名であるミドリムシとする)由来の次世代バイオディーゼル燃料の実用化に向けて共同研究を開始すると発表した。
既にユーグレナが開発している従来のミドリムシ由来のバイオディーゼル燃料では、他のバイオディーゼル燃料と同じように、軽油に全体の5%を混ぜて使用する。しかし、両社が共同で研究を始める次世代バイオディーゼル燃料で、「分子構造が軽油と同じであるため技術的には100%での使用が可能になる」(ユーグレナ代表取締役社長の出雲充氏)という。2018年までに開発にメドを付ける。

(以下略)全文はこちら

(日経テクノロジー・オンラインより)

 日本は資源の無い国だから、外国から資源を輸入し、それを加工して海外に販売して利益を得る。と私たちは子供の頃から教わって来た。
しかし最近ちょっと違うのではなかろうかと考え始めている。

国内に油田はなくとも、ジェット燃料やディーゼル燃料が作れる。燃料は採掘するのではなく、工場で生産する。
「都市鉱山」とか「都市鉱脈」と言う言葉を聞かれた方も多いだろう。都市生活の廃棄品から貴金属を回収する。

国内に資源が無いと思われていたが、ミドリムシの培養技術や、廃棄品の再生技術により、国内には資源が溢れていることになった。

ユーグレナの出雲社長は、学生時代にバングラデシュを旅行した際に、現地で栄養失調の子供達を目の当たりにする。そこで彼らを救う事は出来ないかと、農学部に転籍し、研究を始めた。ミドリムシが最も有望だと気が付く。しかし、当時ミドリムシを培養する事は不可能だとされていた。

出雲氏は、使命感と強い執念で、ユーグレナと言う会社を立ち上げ、沖縄にミドリムシ培養工場を造った。培養されたミドリムシは、太陽光さえ有れば、栄養素を作り続ける。ミドリムシを使ったサプリや食品が、市場に出回っている。ミドリムシを原料とする燃料でジェット機やバスが運行される日も近いだろう。

確かに、日本には地下資源は少ない。しかし日本には高い技術を開発し、運用する「人財」と言う資源が豊富に有る。
大昔から営々と育て続けて来た「日本人」と言う人財は、他の国には無い資源と言ってよいだろう。

敗戦国日本が、経済成長し一流の工業国となった。
仕事を自らの生きがいと考える、名も無い職業人達の努力の結果だ。

出雲氏の職業観とか、組織観には新しいモノを感じる。
彼自身も語っていたが、ユーグレナ社は「麦わら海賊団」なのだ。「麦わら海賊団」と言うのは、尾田栄一郎原作のコミック「ワンピース」の主人公・モンキーDルフィーが率いる海賊団の事だ。

「ワンピース」

海賊団船長・ルフィーは大海賊ゴールド・ロジャーが残したとされる財宝・ワンピースを見つけ出し、海賊王となる事を夢に見て海に乗り出す。
その夢を実現するために、共感出来る仲間を集めて冒険を続けている。

出雲社長も、「ミドリムシで世界を救う」と言う夢を掲げ、ミドリムシの培養に情熱を持つ技術者や学者を仲間とし、数々の困難を乗り切って来た。
会社を上場する際には、証券会社を退職して出雲船長のユーグレナ海賊団に参画した男が活躍した。
出雲社長の夢を実現したいと考える仲間は、個人にはとどまらない。いすゞも組織として、ユーグレナの夢実現の仲間となった。

生活のため職業に就こうと考えている人間と、夢を実現するために職業に就こうと考えている人間のパフォーマンスは明らかに違うはずだ。

あなたの会社には、会社の存在意義や夢が有るだろうか?


このコラムは、2014年6月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第368号に掲載した記事を改題しました。

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続・単機能人材

 先週の「単機能人材」の記事に対して読者様からこんなメッセージをいただいた.

☆I様のメッセージ

お久しぶりですね。今日の“雑感”は中国人の「職場環境」を知る上で非常に重要な話でした。

 ホテルのお客様は、レストランで起きた問題を退室時に会計担当に話す。
日本なら、お客様の話を聞き、レストランへ連絡するのが常識。
しかし、中国ではお客様に、私はレストラン担当ではありません!と言う輩までいる。彼らには、所属部署の意識はあっても、○○ホテルに所属するという「帰属意識」が非常に薄い。

この感覚は、中国のサービス業の質が何年たっても上がらない原因の一つですね。マルチな人材というのはなかなか育たないでしょうね。

中国のホテルで仕事をされていた経験からのコメントをいただいた.

私も中国従業員の会社に対する帰属意識は希薄だと感じている.
彼らの帰属意識の対象は,「会社」ではなく「職業」だと考えている.最近の日本の若者も同様に,会社に対する帰属意識は希薄になり自分の職業に対する忠誠心が強くなって来ているのではないだろうか.

会社に対する忠誠心で求心力を作るのではなく,職業に対する忠誠心を求心力とする.すなわち仕事を通して成長する機会を会社が与え,従業員は自己成長を通して会社に貢献する.

このような会社と個人の共存関係が,求心力を作り出す.

成長の機会があれば,優秀な人材ほど簡単には会社を辞めて行かない.マルチタレントな人材が求められている事が明確になっており,それが報酬につながることを理解できれば彼らはマルチタレント人材になることを目指すだろう,というのが私の仮説だ.

もうひとつメッセージをいただいている.

☆N様のメッセージ
>「雇用の確保」というのは自社で雇用し続けることではなく,他の会社でも
>高給で雇ってもらえる能力を付けてやることだと考えるがいかがだろうか.

本当にその通りだと思います。
弊社でも、スタッフには
「営業:仕事を取ってくる能力」
「管理:スタッフの能力を100%引き出す能力」
「財務:お金を集める能力、儲かってるか判断する能力」
最低この3つは身につけてもらいたくて

○「自己責任」
○「未来予測」
○「共栄」
のモットーを掲げて経営しています。

営業,管理,財務の能力があれば会社を経営することも可能になるだろう.
経営能力がある従業員がいれば,社長の仕事は楽になるはずだ.楽になった分経営戦略を考える時間が確保できる.これが本当の社長の仕事のはずだ.

このように成長した従業員をもっと成長機会がありそうな会社に出してやる,または独立させる.

このような成長過程をきちんと「計画的」にやる.
つまりより大きな会社に転職した優秀な従業員との関係は,そのままその会社との良好な関係になるはずだ.
また自分の会社の一部の工程を持たせ独立させれば,自社経営リソースのバッファを外に持つ事が可能になる.つまり受注の増加に対して固定経費の増加なしに対応可能になる.


このコラムは、2009年8月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第111号に掲載した記事です。

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単機能人材

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 中国の工場で中国人職員を見ていると,自分の仕事のエリアを限定しその内側で仕事をする傾向があるように見える.私はこれを彼らが効率よく自分のキャリアを上げるための手段だと思っていた.

しかしちょっと考え直さなければならないと感じている.

 いつも通っているジムで,サウナの主電源を入れてくれるように受付の女性に頼んだ.なかなかスイッチを入れに行かないので催促をすると,配電盤のあるほうに出かけた.しかしいつまで待っても電源が入らない.
痺れを切らせてもう一度頼みに行くと「スイッチを入れるように頼みました」と答える.

ここで初めて気がついた.この女性はサウナの主電源の入れ方を知らないのだ.このジムで働き始めて1年近く経っているのに知らない.
この女性の仕事は受付にニコニコして座っていることであり,その他のことは教わっていないし,自分から知ろうともしない.
経営者もこの女性に受付以外の仕事をさせようとは思っていないようだ.

台湾資本の工場を指導していた時に,社内の部署をまたがってプロジェクトを統轄する職位が必要だと台湾人経営者に進言した事がある.
経営者は,ではそういう職員を雇おうという.私は内部登用を考えていたが,彼は新しい職種だから新しい人を雇うという.

職員を仕事を通して育成しようという考えが感じられない.
それに呼応して職員も言われた仕事以外には手を出さなくなるのだろう.

従って自分のキャリアアップを考えている優秀な層は,次々と会社を変わってゆくことになる.

日本語人材の採用面接でどんな仕事をしていたか尋ねても,会議の通訳,レポートの翻訳としか答えられない人が大多数だ.その会議やレポートはどんな内容なのかという本質部分を理解しているようには見えない.

日本語が出来るだけでは社長にはなれない.
一つの部門を任せることもできない.日本語+アルファのアルファの業務能力がすぐれてなければ部門のトップにはなれないだろう.

これからは中国でもマルチタレントの時代になるはずだ.製造現場では多能工でなければ生き残れないだろう.
間接職員はなおさら単機能人材では生き残れない.

これからは通訳という職種を廃止して,日本語が出来る○○職という人材を育てなければならないと感じている.そういう人材が他の会社でも通用する優秀な人財となる.

「雇用の確保」というのは自社で雇用し続けることではなく,他の会社でも高給で雇ってもらえる能力を付けてやることだと考えるがいかがだろうか.


このコラムは、2009年8月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第109号に掲載した記事です。

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善きことはカタツムリの速さで進む

 「善きことはカタツムリの速さで進む」ガンジーの言葉だそうだ。

非暴力、非服従で大英帝国から独立を勝ち取ったインド独立の父・ガンジーらしい言葉だ。何度投獄されても,非暴力を貫いた。暴力を持って戦うより,非暴力で戦う方が何倍も勇気がいる。

この言葉を鬼丸昌也氏から学んだ。

「僕が学んだゼロから始める世界の変え方」鬼丸昌也著


鬼丸氏は、学生時代にNPO法人テラ・ルネサンスを立ち上げ,カンボジアの地雷撤去活動,ウガンダで少年兵士の社会復帰支援活動などをして来られた。
彼は「全ての人に未来を造り出す能力が有る」ことを信念としている。
人は微力だが,無力ではない。と言うことだ。

まだ35歳と言う若さだが,素晴らしい考え方と行動力を持った人だ。

原因さえ変えれば,どんなに時間がかかろうとも,必ず結果が変わる。もしも自分自身の中に全ての問題の原因が有ると考えることができれば,自分自身を変える事で、世の中を変えることができる。自分が変革の主体となる事が出来るのだ。世の中を変えるための第一歩は,問題を認識する事だろう。

先日工場の経営者と話をしていて,現場のリーダに当事者意識が薄くて困る,と言う話題になった。
品質保証部は,検査をする事が仕事ではない。お客様に品質を保証するために仕事の一部として検査をしている。品質保証の重要な仕事に,品質改善も有る。
製造部のリーダは,作業員に計画通り生産をさせる事が仕事ではない。作業員が仕事をし易い様に改善することで,品質や生産量を上げる事が仕事だ。

全ての問題の原因は,自分の中に有り,その問題を解決する主体は自分自身だ、と言う事実に気が付けば,毎日の仕事は楽しくなるはずだ。

ただし、善きことはカタツムリの速さでしか進まない,変化の速度が遅いと成果が見えずに心が折れる。自分自身の成長を俯瞰視出来る様な工夫をする。上司は,部下が自己成長に気が付き,より成長を加速する様に手助けをする。

「忍耐」に期待するよりは、この様な工夫や努力が効果を高める。


このコラムは、2014年7月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第369号に掲載した記事です。

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仕事の意義

 サイモン・シネックという人のTEDトークを聞いた。
“How great leaders inspire action”で検索すると見つかると思う。

我々が製品やサービスを購入する動機は、そのモノ(製品、サービスを総称して「モノ」と記すことにする)自体(What)を欲しいと思う気持ちばかりではない。そのモノがどのような過程で出来上がったのか(How)、そのモノを作る目的(Why)は何だったのか、ということが購入動機になる。

例えば製品の広告を考えてみたい。

  • 製品の機能・性能・デザインそのものが優れていることを訴求する(What)
  • 製品の優れた機能・性能・デザインを作り込んだ苦労・努力を訴求(How)
  • その製品を販売する目的を訴求(Why)

Whatを強調するよりHowを語った方がより顧客の購買意欲は高まり、更にWhyに共感すれば顧客は友人にも勧めてくれるだろう。

サイモン・シネックは、黒人人権運動の指導者キング牧師を例に、優秀な指導者と並の指導者をこう比較している。
優秀な指導者:I have a Dream.
普通の指導者:I have a Plan.

企業や組織の指導者も同様だ。
計画(What+How)を示さねば組織は動かない。
その計画を達成することの意義・実現したい夢(Why)を共有すれば、メンバーのコミットメントは高まるはずだ。

目標管理がWhatとHowならば、方針管理がWhyだ。
方針と目標はともにあるべきだ。


このコラムは、2017年11月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第584号に掲載した記事です。

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サイモン・シネック

先週のメールマガジン「仕事の意義」でサイモン・シネックのTEDトークをご紹介した。
このコラムにお二人からメッセージをいただいた。

※S様のメッセージ
早速TED動画を見ました。
Why(夢)を語れないばかりに、当社も大きな試練にさらされております。
米国市場に於ける主力製品はアジアOEMメーカーの影響が増々大きくなり、参入障壁も低いことからまさに戦国時代。大手販売店のPBだったブランドにシェアを奪われている状況です。

品質、性能では負けていない自負はあるものの、顧客にそっぽを向かれることはサイモン・シネック氏の言うように、Why(夢)が伝わっていないことがよく分かりました。
販売・宣伝部門にこれをどう伝えるか、考えたいと思います。
意義深く、貴重な情報を提供いただき、ありがとうございました。

※T様のメッセージ
 It was just inspired for me
 on how to proceed with the business performance, thanking
 for your opinion.

お二人のメッセージを読んで大変嬉しく思っている。毎週頭を絞ってコラムを書いている意義を感じることができた(笑)

「Why」を共有した顧客は信者になる。顧客が信者になれば企業は必ず儲かる。
「儲」という字をよく観察していただきたい。分解すると「信者」となる。

与太話はおいて、サイモン・シネック語録をご紹介しておく。

  • TEDで語ったAppleとその他のコンピュータメーカの違い。
    「我々のコンピュータは素晴らしいです。簡単に操作できてデザインも美しいです。」たいていの企業はこう言って売ります。
    でもアップルのような傑出した企業は違います。
    「我々は世界を変えるためにこのコンピュータを作りました。その価値がこのコンピュータにはあると私たちは信じています」
    どうです?興味を惹かれませんでしたか?人々は「何を」売っているかではなく「なぜ」売っているかに興味を持つのです。
  • アメリカの海兵隊では下位の者から食事が配られ上官は最後に配膳されます。
    部下全員に食事が行き渡ってからでなければリーダーは自分の食事をとってはいけないのです。
    最初に自分の食事(利益)をとってしまうリーダーに部下はついていきません。
  • 私利私欲を捨てたリーダーだけが一体感のある強いチームを作ることができるのです。
  • あなたが何をしているかは大した問題ではない。
    なぜあなたがそれをしているかが大事なのだ。
    人々がファンになるのは理由に共感したときだ。
  • キング牧師のほかにも運動家はたくさんいました。
    しかしキング牧師だけが圧倒的な支持をあつめました。具体的にどうすればいいのかなにをすればいいのか、彼は有効なアイディアを出していません。
    ただこう言ったのです。「私には夢があるこんな世界を夢見ている」と。
    「そうしなければならない」では人は動きません。
    「そうしたい」と思ったから動くのです。
    命令されたから従ったわけではありません。
    「信念」を語るリーダーにはみな自分の意思でついていくのです。
  • 傑出した企業に共通しているのは、なぜその事業を行っているかを明確にしている。

私の友人は、中国で工場を立ち上げ毎年業績を上げていた。日本本社からの評価も高い。しかし仕事がむなしく感じたという。彼は仕事の「Why」が明確になっていないからだと気がつき、自分自身の仕事の目的「Why」を明確にすることで、より業績を伸ばした。彼の「Why」は従業員の育成。自分自身の役割を「校長先生」と定義していた。

経営とは、従業員を成長させること。業績はその結果だ。


このコラムは、2017年11月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第587号に掲載した記事です。

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相違点より共通点に着目

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 中国で企業経営をされているほとんどの方は,中国人の考え方がわからないなどの悩みを持たれていると思う.オペレーションを中国人にまかせて,仕事をする訳だから,種々の困難があるだろう.
そのため世の中には,「日中の文化の違い」「中国人の考え方」「中国人管理法」などの書籍が溢れている.

これらの書籍は,中国文化や中国民族性と日本の違いを例を挙げ説明し,どう中国人を管理したら良いかを説いている.
曰く,中国の若者は「反日教育」の影響で,皆反日感情を持っている.
一人っ子政策のため,大事に育てられ,忍耐力や協調性が弱い.
公より私を重視するため,会社より個人を優先する.その結果条件が良ければすぐに転職する.
利己主義が強く,回りに迷惑をかけても気にしない.
などなど上げたらきりがない.

もちろん,中国文化や生活環境を理解することは重要だろう.特に日本の「特殊性」を理解し自覚することが重要だ.

しかし日中の相違点にばかり注目しても,有効な答えは見つからないだろう.
相違点を理解して,「だから駄目なのだ」と分かったとしても,どうすれば良いかと言う答えは見つからない.

反日教育を変えることは我々には不可能だ.
「私より公を重要視する」「忍耐力」「協調性」「利他主義」などは,日本人が持っている「特殊性」だと思っている.それは日本と言う国が「均一性」を前提として成り立っているからだ.
実はこれらの特性は,日本の中でも我々ロートルの常識であり,若い人たちにとっては非常識なのかもしれない.

相違点を探し,違いに着目するよりは,共通点を見つけ,それをマネジメントした方が,ずっと楽で効率的なはずだ.
つまり中国人と日本人の違いに着目するのではなく,人間としての共通点に着目すると言うことだ.

日本でも,中国でも「幸せになりたい」と言う願望は同じだろうし,そのため「自己成長」を目指すことになる.
この共通点をマネジメントすれば,「自己成長」を求心力として.従業員のモチベーションを高めることができるはずだ.

公より私を重視する人たちに,「愛社精神」を説いても,心には響かない.「愛社精神」は古き良き時代の日本的特殊性だ.それよりは「自己成長」と言う共通性でマネジメントをした方が,より効果的だと考えている.


このコラムは、2012年11月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第284号に掲載した記事に加筆したものです。

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TED Talks

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 TEDと言う言葉をお聞きになったことがあるだろうか?
広める価値のあるアイディアを、T(テクノロジー)E(エンターテイメント)D(デザイン)の分野で、世界中の人々がプレゼンテーションをする、という趣旨で活動している人達だ。
年に一度TEDカンファレンスを開催している。
その広める価値のあるアイディアのプレゼンテーションをインターネット上で拡散しているのがTED Talksだ。

先週たまたまPodcastの番組を探していたら、TED Talksの日本語字幕付きの動画を見つけた。その中でアレックス・ラスキーと言う人が「行動科学で電気代が安くなる」と言うテーマで講演している動画を見つけた。彼は米国で、節電を促進する啓蒙活動をしている様だ。

講演の中で面白い事例があったので、皆さんにご紹介したい。

カリフォルニア州サンマルコで行動科学の実験が行われた。
調査を行った大学院生達は、近所の家庭を回り、エアコンを止めて扇風機を使って節電する様に訴えるチラシを配布した。そのチラシは以下の4種類あり、それぞれ同数ずつ配布した。

  1. エアコンを止めて扇風機にすれば1ヶ月で54ドル節約出来る
  2. 環境保護に関するメッセージ
  3. 節電をして善良な市民になろう

1.のチラシは具体的な節約金額も入っており、効果がありそうに思える。
しかしこれら3つのチラシはどれも、全く効果がなかった。

効果があったのは4番目のチラシだけだった。
4番目のチラシにはこう書かれていた。
「調査の結果、ご近所の家庭の77%がエアコンを切って扇風機を回しています」

日本人は個より全体を重視する傾向にある。従ってご近所が皆節電していると分かると、自分もやろうとする。こういう心理や行動は理解出来る。しかし日本人よりはずっと個を大切にする米国人にも、効果があると言うのは意外だった。

余談だが、最近米国の中国駐在大使が辞任して本国に帰国したそうだ。
理由は「家族のため」と公表している。しかし本心は「PM2.5がひどくてもうヤダ」と言う事の様だ(笑)日本人のメンタリティとは随分違っている。

そういう米国人でも「ご近所が……」と言うと行動を起こす、これは驚きだ。
そして、中国人にも、こういうアプローチが有効かもしれないと気が付いた。

好ましい行動を促進するために「周りの人は皆そうしているよ」と動機付けをする。中国人の部下をお持ちの方は、ぜひお試しいただきたい。
バレバレな「皆そうしてる」は逆効果かもしれないが(笑)
ぜひ試してみた結果をお知らせいただきたい。

「皆そうしてる」は、行動心理学では社会的証明と言われており、成果が期待できそうだ、ということを一言付け加えさせて頂く。


このコラムは、2013年11月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第337号に掲載した記事に加筆したものです。

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跨部門活動

 『跨部門活動』と言うのは部門を跨がった活動と言う意味の中国語だ。

現在中国企業を指導している。先月訪問時に製造工程が大混乱していた。原因を聞くと、材料の納入が間に合わなかったため、材料待ちで大幅に工程遅れが発生した、と言う事だった。その結果、遅れを取り戻そうと無理な進め方をし、工程の混乱を招いている。

これは実践指導の良いチャンスと思い、『跨部門活動』で問題解決をする事にした。
技術、品証、購買、製造の関係者を集め、趣旨を説明し『跨部門』で原因分析、対策検討をする様に、宿題を出した。

今月再訪問時に宿題の結果を見せてもらった。
一枚の報告書にまとめてあったが、残念ながら意味のある対策とは言えない。私の所見では、この報告書は一人で書き上げた様に思えた。とりまとめ担当に聞いた所、各部門の代表者は、これは購買の問題だから購買部門で報告書を書くのが妥当だと、一人に押し付けた様だ。

私の趣旨説明は完全に無視された(苦笑)
せっかくのチャンスをムダにはしたくないので、再びメンバーを集めた。
報告書の経緯説明に、顧客の特注仕様の部材調達に時間がかかり、部材の調達が遅れた、と書いてある。今回は前回のメンバーに、販社を追加した。直感的に、受注審査に問題が有ると感じたからだ。

この会社の製品(バス)は、既存の製品プラットフォームに顧客の要求により、外装デザイン、内装デザインなどをカスタマイズ設計して生産するタイプだ。
顧客要求確認→受注審査→納期・価格回答→正式受注のプロセスを経て、設計、調達、生産準備がスタートする。

実際の経緯を全員から聞き取り調査をした。正式受注までのプロセスは正しく行われた。
問題は購買部門のコミュニケーション不足、ベンダーの能力不足、購買担当者の責任感不足が原因であり、対策は担当者の再教育、認定ベンダーの審査強化、とお決まりの文句が彼らの対策書に並んでいる(苦笑)

受注審査の実施方法は、受注審査フォーマットを各部署持ち回りで確認サインする事になっている。いわゆる「ISOのアリバイ審査」だ(笑)

販社ものんきなもので、納期遅延はお客様にお願いすれば飲んでもらえるので問題ない、と言っている。地域での市場シェアが高く、慢心感がある様だ。
しかし納期遅延が慢性化すれば、既存顧客の信頼は徐々に低下する。新規顧客、市場シェアの低い地域への拡販は難しい。これを納得してもらい、受注審査のやり方を改善する事にした。

このような問題解決のアプローチは、購買部門単独では難しい。『跨部門』で問題の原因、対策検討をしなければならない。

実は同じ様な問題を、業種は違うが台湾企業の指導でも体験した事がある。この時は経営者が「プロジェクトマネージャ」を選任して、受注から生産,納入まで一人の人間が管理をする、と言う対策を考えた。私に言わせれば、屋上に屋を掛けるムダな管理であり、各部門の責任感は増加しない。
この時は「受注審査会議」を新設し、納期、コストを精査し、見積もり提出をする方式とした。

このような発想をすれば、責任部署の押し付け合いはないし、より効果的な運用が可能になるはずだ。販社にしても、無理な納期を設定し何度も顧客に謝りに行く必要は無くなる。初めに言っておけば「説明」だが、後から言えば「言い訳」となる。当然顧客の心証は悪くなる。上手く説明すれば、在庫の標準部材を使う事が出来、納期・コストともに特注部材を手配するより楽になるはずだ。


このコラムは、2016年6月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第481号に掲載した記事です。

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副総経理の役割

 
今年は中国企業の指導が増えている。中国企業の経営幹部に対して、豪華な応接セットのある執務室に一日座っていると言うイメージを持っていた。
しかし最近指導している中国企業の製造担当副総経理は、生産現場を歩いている事が多い。彼と話をしたいときは、オフィスを尋ねるより現場を探した方が早い(笑)

経営幹部となっても現場を重視し、現場で作業員に話しかけている。立派な経営幹部だと思っていた。しかし、彼は自分の仕事を間違えている様だ。5Sや品質意識の指導時には、製造部門が忙しい事を理由に製造部門の部課長を出席させない。

生産現場の5Sが乱れているからムダな作業ばかりしていて忙しい。品質問題が多発しているために、手戻り作業、修正作業が発生し、より忙しくなっている。こういう状況は、足しげく現場に出かけているので了解しているはずだ。

自分一人で現場を支えるのは無理な話だ。現場を支える部下を育成する。育成の度合いを確認し、不足点があれば再指導する。そのために現場の巡視をする。これが彼がやらねばならない仕事だ。現場で直接作業員を指導すれば、部下である部課長・監督職の仕事を奪うことになる。

本来副総経理の仕事は、現状を打破するために長期的な戦略を考える事だ。生産方式の革新、生産設備の導入など部課長ができない仕事に時間を使う。今日しなければならない仕事の比率はうんと低いはずだ。

改善実践研修に現場の部課長を参加させないと言われた時は、副総経理が現場改善の「癌」だと感じ、怒りすら覚えた。しかしよく考えると、彼が重要な事に気がつく様に指導する事が、私の仕事だ。
こう考えると「怒り」は自分の「出番」に変わる(笑)


このコラムは、2016年7月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第484号に掲載した記事です。

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