品質保証」カテゴリーアーカイブ

QCC活動

 私は幾分ヘソが曲がっている様で(大いにヘソが曲がっていると言う知人は多いが)大学院を卒業後、従業員30人程度の会社に就職した。コンサル会社ではない。製造業だ。開発型のファブレス企業でもない。製造部門の作業員も入れて30人の立派な零細企業だ(笑)

そこから突然1部上場企業に転職した。最初に配属された製品開発部署の課員が30人以上いた。

零細企業では、今日の飯の種を設計する(設計期間1週間なんて当たり前)。しかし転職先では1年後、2年後に商品化する製品の設計をしている。大いに規模の格差を実感した。更にカルチャーショックを受けたのは「QCC活動」だ。実際の開発業務とは別のテーマをサークルごとに自由に取り組むことが出来るのに大いに感激した。長期にわたる開発プロジェクトの合間に、短期間で完結出来るテーマに取り組むことが、気分転換にもなっていた。

自分自身の意志とは逆に、社内のQCC活動が徐々に形骸化して行った。
そんな折に、品質部門を担当することになり、活動する側から指導する側に立場が変わり、どうすれば再び活発になるかを考えた。そのお陰で、事業部の代表サークルが社内の成果発表会で好成績を取れる様になった。

独立後、中国工場の指導でも顧客の現場リーダ、管理者でチームを作りQCC的に改善をするスタイルでやっている。

QCCスタイルで活動することにより、自主性や協調性を養う、改善手法や取り組み方を実体験を通して教えることができる。この方法により、契約期間が終了した後も、顧客社内で改善が継続する様になる。

日本のQCC活動と少し違っているのは、テーマを経営幹部とサークルメンバーが一緒に選定するところだ。ボトムアップでも、トップダウンでもなく、トップ・ボトム協調型と言えば良いだろうか。活動テーマ選定に関しては、サークルの自主性を損なわない様にトップが関与するスタイルだ。その後の活動はメンバーの自主活動となる。

これにより、経営層が狙いたい成果と、メンバーの自主性、改善能力向上を目指すことができる。


このコラムは、2015年6月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第430号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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人手不足で品質低下?

 日本経済新聞の電子版に「反日だけでない中国リスク 人手不足で品質低下が顕著」と言う解説記事がでていた。
有料会員限定の記事だが、登録をすると無料で読める(一ヶ月20本まで)。
電子製品の組み立てをしておられる方には、この記事が参考になると思う。

記事の解説を要約すると、
「反日」という政治リスクによる、日本製品の買い控えが日本メーカに脅威をもたらしているが、もう一方で、生産委託先の中国工場の品質低下が深刻な影響を与えている。その主要因は、人手不足による熟練工の不足だ。

確かに、機械加工など技能工による作業が中心の生産は、作業員の熟練度が、直接製品品質を左右することがある。

しかし記事の事例として上がっていた電子製品の組み立ては、比較的単純作業が多く、かつ製品検査を機械化出来る割合が多いので、それほど作業員の熟練で出荷品質が左右されることはない。

  • 半田手直し作業による、回路ショート・オープン、疑似半田、半田ボール。
  • 半田手直し作業による、プリント基板の破損。
  • プリント基板割り代の取り忘れ。
  • 組み立て干渉による筐体の嵌合不良。
  • プラスチック成型部品の成型不良。
  • 解説記事には、上記の事例が紹介されていた。はっきり言えば、熟練以前の問題だ。

確かに、電子製品の高機能・小型化に伴い、プリント基板の実装密度向上、微細化が半田付け作業を難しくしている。しかし半田付け作業は、正しい方法で訓練すれば、2、3日で作業が出来る様になる。

更に、工程内不良が後工程に流出してしまうのも問題だ。
例えば、半田手直し作業が完了した製品を、工程の何処に復帰させるか、をきちっと検討するだけで、流出が防げる。
プリント基板の割り代取り忘れなどは、簡単な治具を用意するだけで、次工程流出を防止出来る。

通常は、プリント基板アッセイ単体状態でICT(インサーキットテスタ)検査を実施する。上記の半田付け手直し作業による不良のほとんどは、ICTで見つかるはずだ。ICTで検出不可能な不良モードを見つけたら、検査方法を改善する。
ICTの変更では検出不可能と分かれば、代替え検査を検討する。この様な努力を継続しなくてはならない。(本来こういう作業は、量産開始前にFMEAを実施し、先に潜在する問題をつぶしておく)

2000年当初、中国の生産委託先工場(台湾系企業)に生産委託をした電源製品(部品点数200点弱の小型アダプター電源)は、生産開始翌月から工程内不良が100ppmを切った。検査がうまく出来ていなくて工程内不良率が低かった訳ではない。この製品は顧客、市場からの不良返却は数ppmだった。

この製品は自社工場で先に生産を立ち上げており、3ヶ月の初期流動期間に発生した工程内不良を、即フィードバックし設計変更、工程変更を繰り返した。その結果、生産委託先に移管した当月から工程内不良率が100ppm台、翌月から100ppm未満となった。

若年労働者の製造業離れ、仕事に対する忍耐力不足などにより、作業員が定着しないことが主要原因の様に捉えられているが、本当にそうだろうか?

2000年前後にも、作業員の流動性は高かった。
確かに当時の作業員の「忍耐力」は抜群に高かった。それは彼女たちに「家族の生活を支える」という大きな使命を持っていたからだろう。当時は工場経営者は特に彼女たちの労働意欲を高める努力をしなくても、労働者が自ら労働意欲を高めた。その結果、少しでも賃金の良い工場にすぐに転職して行った。しかし募集をすれば、すぐに出稼ぎ労働者を集めることができた。

非常に楽に労務管理が出来た訳だが、これが続くはずはない。
努力すべきことは努力する。工夫すべきことは工夫する。
これが本来の経営だろう。


このコラムは、2012年12月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】288号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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不良を作らない決意・その後

 昨年181号のメールマガジンで、不良を作らない決意をした経営者をご紹介した。

「不良を作らない決意」

工程内で発生した不良の修理を止める。そしてその不良は見せしめのために作業現場の一等地に置く。当然修理をすれば歩留まりは上がる。中国では人件費が毎年上昇しているが、それでもまだ日本と比較すれば安い。経営者としては、材料費をムダにしたくないという思いがあるだろう。それでも修理を止め、歩留まりが悪くなっても直行率を上げることを選択された。

当時その決断を賞賛する記事を書いた。
そして先週その工場を再訪する機会があった。

工場を一見して、生産物量が上がっているのが分かる。
しかし例の不良品展示エリアが見当たらない。経営者に聞くと、工程内不良は激減し1/10以下になったそうだ。従って不良品を置いておく場所は不要になったわけだ。当然不良修理に必要な時間も、人員も不要となった。生産効率も上がっている。

当時の思い切った決断がほんの8ヶ月足らずで、これだけの成果になっている。

もちろん修理を止めるだけではこうはならない。
工程の品質改善、不良を作らないポカ除けなど色々な手を打たねばならない。

まずは溜まった不良品を3tトラックに載せ廃棄するのを、全従業員で見送った。従業員の中には、涙を流す者さえいたそうだ。

その後、内緒で作業場にボール盤を持ち込み打ち損なったりベットを外そうとする班長を叱り、修理をしない意味をとくとくと説得するなど、苦労を重ねた結果だ。

全ては人の心から始まる。
不良品を廃棄する痛みを理解した作業員は、不良を次工程に回さないよう努力する。
修理を前提とすると、ちょっとした汚れ(外観不良)は検査の時に拭き取れば良いと考え、そのまま次工程に流してしまう。

経営者の「不良は修理しない」という決断は、当初大きな材料損失を生んだだろう。
しかしその決断が、工程内不良1/10という革新を生み、生産効率も改善した。


このコラムは、2011年8月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第218号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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不良を作らない決意

 東莞のある工場を訪問した。この工場の若手経営者とは知り合って4年ほどになる。時々お目にかかる機会はあったが、工場を訪問するのは初めてだ。

見せていただいた生産現場の中に、不良品が置いてある。
通常不良品は、目立たない場所に一時置き場を作り、修理工程に投入される。しかしこの工場では、生産現場の一等地にドンと不良品の置き場を作っている。

経営者に理由を聞くと、「見せしめ」なのだという。
不良品を修理しない。不良品は廃棄するという決意をした。修理をすれば良いや、という甘えを排除するためだ。そして廃棄しなければならない不良品を、皆が見えるところに置いている訳だ。

人件費が高騰しているとはいえ、中国でのモノ造りコストは、まだ材料費が占める割合が高い。それでも不良は修理しないという決断を下した。つまり歩留まり率は考えない。直行率で勝負をしようというわけだ。

トヨタ方式生産方式の元祖・大野耐一氏が、不良の修理工場を廃止しようと取り組んだのと、同じ発想だ。トヨタでは不良をラインアウトして修理工場へ送ることをやめ、ラインを止めて修復することにした。現場はラインが止まらないように、改善を繰り返す。そのような改善の積み上げで、トヨタ式生産方式は生まれたのだ。

先週訪問した工場では、不良として集められていたのは完成品がほとんどであった。完成品になる前に、不良を除去する。その不良が発生しないように改善する。これを繰り返してゆけば、不良を作らない生産工程になってゆくだろう。

不良を修理しない決意は、不良を作らない決意だ。


このコラムは、2010年11月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第181号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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グッド・イナフ

 グッド・イナフとは“Good enough”のことだ。英和辞書で直訳すれば“十分良い”となるが、“まぁまぁ良いか”“こんなもんか”と言うニュアンスが有る。つまり改善した方が良いが、まぁまぁ許容できるレベル、と言う訳だ。

工場や会社の中に、グッド・イナフがいくつかあるのではないだろうか?
電子部品業界では、出荷不良が20ppm未満ならばグッド・イナフと評価してもらえる。しかしグッド・イナフだからそのまま放置をしておけば、出荷不良ゼロが常識の自動車業界には参入できない。

工程内で発生する偶発的不良をグッド・イナフと考えて放置すれば、いつまでたってもモグラ叩きの様に類似不良が顔を出すことになる。

顧客アンケート結果がグッド・イナフであっても、それを放置しておけば、顧客要求レベルが上がっていることに気がつかず、同業者に顧客を奪われる事になる。

このようなグッド・イナフ問題が蔓延するのは、OR理論の間違った適用が原因だと考えている。
たとえば、検査コストをたくさんかければ、出荷不良は少なくなる。コストと不良の関係をグラフに描き、二つの曲線が交差する点(サドル点)がベストなとなる。こういう理論がグッド・イナフ問題を解決できない原因だと思う。

検査以外にも不良を減らすことは出来る。
自分勝手に限界を作ることが、グッド・イナフ問題を根絶できない原因だろう。


このコラムは、2016年2月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第464号に掲載した記事に加筆したものです。

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不良原因分析

 顧客クレームや工程内不良に対する原因分析、再発防止対策検討は日常的に行われていると思う。顧客クレームは無い方が良いが、工程内不良が無いと改善のチャンスが無くなる。工程内不良の処置(修復、やり直し、在庫の全数再検査)に追いまくられ、改善のチャンスを逃してしまってはもったいない。
本当の原因を特定する事により、有効な再発防止が可能になる。原因分析で手を抜くと、有効な再発防止が出来ずに「慢性不具合」となる。

原因分析のコツについて書いてみたい。

我々の様な凡人が天才と同水準の仕事をするためには、一人ではなく複数で智慧を出し合う。そのための手法がQC手法に代表される管理技術だ。
魚骨図が原因分析手法としてよく活用される。
しかし魚骨図は、原因分析手法というより原因となりうる要因を沢山列挙する手法と言った方が良い。何も無い所から要因を列挙するより、中骨として、例えば人、物、設備、方法の4Mで分類すると、要因を発想しやすくなる。
他人の発想を図にまとめて可視化する事により、更に新しい発想が出る。
このようにして列挙した要因が、真の原因かどうか検証する。それが原因分析のプロセスだ。

問題の要因を発生原因と流出原因に分けて、再発防止対策を考えるとよい。
発生原因が根本的な原因であり、流出原因は根本問題を見逃してしまう原因だ。

例えば、製品内に金属異物があり絶縁不良発生、という問題を考えてみよう。
金属異物が発生する、というのが根本問題だ。絶縁検査で不良を発見しているので流出問題は無い、と考えてはいけない。
発生した金属異物を自工程で発見出来ない、除去出来ない、というのが流出だ。

根本原因、流出原因に対してそれぞれ再発防止対策を考える。
この時に重要な事は、根本原因を根絶させる事が出来れば、流出対策は不要だという事だ。流出対策に重きを置いている再発防止対策をしばしば見かける。

流出防止対策は製品に付加価値を与えない。前出の例で言えば、加工時に発生した金属異物を除去するという作業や、耐圧検査は付加価値を生んでいない。品質を保証するための付帯作業だ。可能であれば削除、出来る限り短縮したい作業だ。しかし全数検査を2度やる等という対策をしばしば見る。
根本原因対策に重きを置けば、従来行っていた付加価値を生まない検査作業を削減出来る事すらある。


このコラムは、2016年12月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第507号に掲載した記事に加筆したものです。

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問題解決の第一歩

 問題解決の手法は沢山ある。
問題解決の一番重要なステップは、まず始めに課題を正しく定義する事だ。

例えば、
「受注が多くて出荷が間に合わない」というのは課題ではなく、現象だ。
正しい課題は「生産能力がなりない」ということだ。

同様な例を挙げると、
「製品倉庫が狭い」というのは課題ではなく「出荷より沢山生産してしまう」
ことが課題だ。

出荷不良を「検査をしているのに不良が顧客に流出する」と課題定義してしまうと「検査を強化する」という不毛な解決案が出て来る。
正しい課題は「工程内で不良が発生する」という事であり、これに対策をすれば「工程内不良をなくす」という本質解決を目指すことになる。
もちろん一足飛びに、工程内不良をなくす事はなかなか難しい。暫定的に検査強化をする事もあるだろう。しかしあくまでも「暫定対策」であることを明確にしておかなければならない。

問題の表層を見入るのではなく、本質を見て課題を定義しなければならない。

もう一つ重要なのは、課題を「自責」で定義する事だ。

上述の「出荷が間に合わない」を、顧客の注文が多い(他責)とすれば自分たちでは解決が出来ない。生産能力不足(自責)と課題を定義するから改善が出来る。

極端な例を挙げたが、意外とこの落とし穴にはまっている例を良く見る。

従業員の能力が足りないから、単純作業だけさせる。というのは、課題を従業員の問題(他責)として定義しているから、効果的な問題解決が出来ない。
従業員の育成が不足している(自責)と課題を定義すれば、いくつも解決案が出て来るはずだ。

「他責」は愚痴やあきらめしか生まない。
「自責」が工夫と改善を生む。


このコラムは、2012年8月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第269号に掲載した記事に加筆したものです。

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ミスをなくす作業方法

 人為ミスが発生すると、ミスの原因を十分に調べないで「作業者に再教育」「作業者に注意するよう指導」などという再発防止対策を、報告書に書いていないだろうか?
もちろん教育・訓練や指導は重要であるが、これでは効果を期待できない。

人為ミスが発生した原因を、行動まで分解して、どこに問題が有るのか突き止めれば、有効な再発防止をすることができるはずだ。

日本にはすばらしい工場がある。「日本で一番大切にしたい会社」で紹介されている日本理化学工業だ。

この工場は、知的障害者を積極的に雇用している。全従業員の70%は知的障害者だ。

知的障害を持った作業員たちが、工場で製品を作っているのだ。
当然ミスは頻発する。それをミスが起きないようにどんどん作業方法を改善してきたのだ。

例えば原材料の投入は、正確に材料配分を計量しなければならない。
量り間違えれば、全部不良だ。こういう工程も、障害者が担当している。

材料ごとに、材料の棚、コンテナ、投入用のバケツが同じ色にしてある。
そして計量用の分銅も同じ色だ。
このような作業方法の工夫によって、ミスが起きないようにしている。

こういうのがホンキの再発防止対策だ。
人為ミスが発生したときに、安易に「作業員の再教育」と言ってしまうのが、恥ずかしくさえ思える。


このコラムは、2011年10月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第228号に掲載した記事です。

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続・百聞は一見に如かず

 先週のコラムで、他社の現場を見る事ことにより、5S活動のモチベーションが上がった事例をご紹介した。
今週は別の企業の事例をご紹介したい。

5S交流会で中国人幹部に火がつき、自主的に5S活動を始めた日系刺繍工場だ。
日本本社社長が、出張で来るたびに現場がキレイになっているとおっしゃっている。

5Sがうまくいっている企業とそうでもない企業の違いを考えてみた。
5Sがうまくいっている企業は、以下の3点に特徴が有りそうだ。
・トップが率先して取り組んでいる。
・全従業員が参加している。
・楽しくやっている。

上述の刺繍工場では、日本人総経理が率先して5Sに取り組んだ訳ではない。
日本人総経理は「みんなに任せてあります」とおっしゃっている。
今までの経験では、こういう工場は5Sは盛り上がらない。
しかし経営者の指示ではなく、自主的に活動を始めて既に3ヶ月。大変興味が有り、先日工場を訪問して来た。経営者や幹部の話を聞いて理由が分かった。
中国人副総経理が本気で取り組んでいる。彼曰く「5Sが上手く行かなかったら、責任を取って会社を辞める覚悟です」。日本人総経理も日本本社社長も彼を全面的に支援している。

5Sが上手く行く理由「トップが率先して取り組んでいる。」は「経営幹部が率先して取り組んでおり、トップが全面的に支援している。」に変更する必要があるかもしれない(笑)

もう一つ5Sが上手く行く理由を挙げるとすると、活動の中心となるメンバーが、5Sがうまくいっている状態をイメージ出来ている、を追加すべきだろう。
他社との交流会により、5Sが素晴らしい職場を具体的にイメージ出来る事が大きいと考えている。


このコラムは、2015年8月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第437号に掲載した記事に加筆したものです。

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続・内部監査

 先週のメールマガジンで、ISO9001の認証維持のために内部監査を「お義理」でやらずに、有効利用してはどうかと提案した。
その方法の一つとして部門間で相互監査をすると、部門間でベンチマーキング・ベストプラクティスを促進する事が出来ると書いた。

このコラムに対して、読者様からベンチマーキング・ベストプラクティスの例を教えて欲しいと言う要望をいただいたので、先週の続編としてお答えしたい。

相互監査をしたら良いと思い付いたのは、品証部門長として各部門の内部監査を実施していた時だ。

営業部門の内部監査を実施した時に、年度品質目標の説明を受けた。
その営業部門は、売り上げ目標などの業務目標も品質目標の中に入れていた。品質目標の中に売り上げ目標が入っているのに違和感を感じ、営業部長になぜ売り上げ目標を品質目標の中に入れたのか尋ねた。
彼の答えは、
「部内の月例会議で業務目標の管理をしている。品質目標の中に売り上げ目標や利益目標を入れておけば、その他の品質目標も自動的に月例会議で進捗を管理出来る」
と言う事だった。

つまり、品質目標の管理がお座なりになりがちなので、自部門の業務目標も品質目標の中に入れてしまった訳だ。
このアイディアにいたく感銘し(笑)他の営業部門にも、○○部長は業務目標をISOの品質目標に入れている、と教えこのやり方を推奨した。
その発展で、相互に監査し合えば、もっと気付きがあるだろうと考えて、部門間の相互内部監査をする様になった。

各部の部門長が内部監査員の資格を持っていれば良いが、そうでない場合は、有資格者が監査員となり、部門長はオブザーバとして参加していただく方式で運用した。


このコラムは、2014年3月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第351号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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